万葉集の歌碑めぐり

万葉歌碑をめぐり、歌の背景等を可能な限り時間的空間的に探索し、万葉集の万葉集たる所以に迫っていきたい!

2019-06-01から1ヶ月間の記事一覧

万葉歌碑を訪ねて―その124の2―山上憶良は、大宰府の地で上司である大伴旅人に、「天離(あまざか)る鄙(ひな)に五年(いつとせ)住まひつつみやこのてぶり忘らえにけり」(巻五 八八〇)ならびに「奈良の都に召上(めさ)げたまはね」(同八八二)と都に戻りたいと訴えたのは、現在のサラリーマン社会にも通じる心境である。(万葉歌碑を訪ねて―その124の2―)

「梅花宴」の歌を順次みていく。「八一五~八二〇歌」 ◆武都紀多知 波流能吉多良婆 可久斯許曽 烏梅乎乎岐都ゝ 多努之岐乎倍米 [大貮紀卿] ≪書き下し≫正月(むつき)立ち春の来(き)たらばかくしこそ梅を招きつつ楽(たの)しき終(を)へめ [大弐(だい…

万葉歌碑を訪ねて(その124の1改)―奈良県橿原市南浦町万葉の森(4)―万葉集 巻八 八二二

●大伴旅人の歌は、万葉集には、七〇首ほど収録されているが、そのほとんどは九州の大宰府で作られたものである。 大伴旅人が大宰師(だざいのそち)となって九州に赴任したほぼ同じころ、山上憶良も筑前国守となって九州に赴任。小野老(おののおゆ)や歌人…

万葉歌碑を訪ねて(その123改)―奈良県橿原市南浦町橿原万葉の森(3)―万葉集 巻十八 四一〇九

●歌は、「紅はうつろふものぞ橡のなれにし衣になほしかめやも」である。 奈良県橿原市南浦町万葉の森万葉歌碑(大伴家持) ●歌碑は、奈良県橿原市南浦町橿原万葉の森(3)にある。 ●歌をみていこう。 ◆久礼奈為波 宇都呂布母能曽 都流波美能 奈礼尓之伎奴尓…

万葉歌碑を訪ねて(その122改と番外編)―奈良県橿原市南浦町万葉の森(2)―万葉集 巻二 二三一

●歌碑めぐりの歌碑の紹介は、奈良県橿原市南浦町万葉の森万葉歌碑(笠金村)である。番外編として、平城宮跡東院庭園めぐりと長屋王邸跡説明板の撮影に1万歩超えの歴史ウォーキング。 ●歌は、「高円の野辺の秋萩いたづらに咲きか散るらむ見る人なしに」であ…

万葉歌碑を訪ねて(その121改)―奈良県橿原市南浦町の橿原万葉の森―万葉集 巻二 一八五

蘇我氏全盛時代を築いた蘇我馬子は、飛鳥川の傍らに居を構え、当時としては珍しい造園法を取り入れたのである。すなわち、庭の中に池を掘り、池の中に小島を築いたのである。それゆえ、当時の人々は、馬子のことを「島大臣(しまのおとど)」と呼んだのであ…

草壁

●蘇我氏全盛時代を築いた蘇我馬子は、飛鳥川の傍らに居を構え、当時としては珍しい造園法を取り入れたのである。すなわち、庭の中に池を掘り、池の中に小島を築いたのである。それゆえ、当時の人々は、馬子のことを「島大臣(しまのおとど)」と呼んだのであ…

万葉歌碑を訪ねて(その120改)―奈良県橿原市東竹田町の竹田神社―万葉集 巻四 七六〇

万葉歌碑を訪ねて―その120― ●歌は、「うち渡す竹田の原に鳴く鶴の間なく時なし我が恋ふらくは」である。 奈良県橿原市東竹田町竹田神社万葉歌碑(大伴坂上郎女) ●歌碑は、奈良県橿原市東竹田町の竹田神社にある。 ●歌をみてみよう。 ◆打渡 竹田之原尓 鳴…

万葉歌碑を訪ねて(その119)―奈良県橿原市常磐町 春日神社―万葉集巻八 一六一九

●歌は、「玉桙の道は遠けどはしきやし妹を相見に出でてぞ我来し」である。 奈良県橿原市常磐町春日神社万葉歌碑(大伴家持) ●歌碑は、奈良県橿原市常磐町の春日神社にある。 ●歌をみていこう。 ◆玉桙乃 道者雖遠 愛哉師 妹乎相見尓 出而曽吾来之 (大伴家持…

万葉歌碑を訪ねて(その118改)―奈良県橿原市東池尻町の妙法寺(御厨子観音)―万葉集 巻三 四一六

●歌は、「百伝ふ磐余の池に鳴く鴨を今日のみ見てや雲隠りなむ」である。 奈良県橿原市東池尻町妙法寺参道前万葉歌碑(大津皇子) ●歌碑は、奈良県橿原市東池尻町の妙法寺(御厨子観音)参道入り口近くにある。 ●歌をみていこう。 ◆百傳 磐余池尓 鳴鴨乎 今日…

万葉歌碑を訪ねて(その117改)―奈良県橿原市醍醐町の醍醐池東畔―万葉集 巻一 二八

●歌は、「春過ぎて夏来るらし白栲の衣干したり天の香具山」である。 奈良県橿原市醍醐池東畔万葉歌碑(持統天皇) ●歌碑は、奈良県橿原市醍醐町 醍醐池東畔にある。 ●歌をみていこう。 ◆春過而 夏来良之 白妙能 衣乾有 天之香来山 (持統天皇 巻一 二八) ≪…

万葉歌碑を訪ねて(その116改)―奈良県橿原市木原町 木原古池―万葉集 巻十六 三七八八

●万葉集巻十六の巻頭に「有由縁幷雑歌」とある。物語的な内容を踏まえた歌、まさに「有由縁」歌ならびに、他の巻とは異なる視点からの「雑歌」を集めた形をとっている。今日紹介する万葉歌碑の歌は、「縵児」伝説に関わる歌である。 ●万葉歌碑を訪ねて―その…

万葉歌碑を訪ねて(その115改)―奈良県橿原市地黄町の柿本人麿神社―万葉集 巻二 二〇八

●歌は、「秋山の黄葉を茂み惑ひぬる妹を求めむ山道知らずも」である。 柿本人麿神社碑と万葉歌碑(柿本人麻呂) ●歌碑は、奈良県橿原市地黄町の柿本人麿神社にある。 ●歌をみていこう。 ◆秋山之 黄葉乎茂 迷流 妹乎将求 山道不知母 一云路不知而 (柿本人麻…

万葉歌碑を訪ねて(その114改)―奈良県桜井市上之宮春日神社境内―万葉集 巻三 四一五

●歌は、「家にあらば妹が手まかむ草枕旅にこやせるこの旅人あはれ」である。 奈良県桜井市上之宮春日神社万葉歌碑(聖徳太子) ●歌碑は、奈良県桜井市上之宮春日神社境内にある。 ●歌をみていこう。 題詞は、「上宮聖徳皇子出遊竹原井之時見龍田山死人悲傷御…

万葉歌碑を訪ねて(その113改)―多武峰談山神社 東大門前―万葉集 巻二 二四〇

●橿原市観光政策課は、「万葉集にゆかりが深い橿原で、令和の時代に万葉びとの思いや情景を感じていただければ」との思いから、市内の万葉歌碑を紹介するパンフレット『橿原の万葉歌碑めぐり~万葉人の心、千年を越えて 日本最初の歌集・万葉集~』を1万部…

万葉歌碑を訪ねて(その112改)―多武峰談山神社神廟拝所前―万葉集 巻二 九五

萬葉集巻二 九一歌から九五歌は一つの歌群をなしある種複雑は人間模様を背景とした宮廷恋物語である。臣下藤原鎌足は皇子の皇女鏡王女を正妻とし、さらに采女を得ている。中大兄皇子(天智天皇)の片腕として大化の改新で活躍その後も忠臣として仕えた論功行…

万葉歌碑を訪ねて(その111改)―奈良県桜井市倉橋ため池ふれあい公園―万葉集 巻三 二四一

●歌は、「大君は神にしませば真木の立つ荒山中に海をなすかも」である。 奈良県桜井市倉橋ため池ふれあい公園万葉歌碑(柿本人麻呂) ●歌碑は、奈良県桜井市倉橋ため池ふれあい公園にある。 ●歌をみていこう。 題詞は、「或本反歌一首」<或本(あるほん)の…

万葉歌碑を訪ねて(その110改)―奈良県桜井市粟原寺(おおばらでら)跡―万葉集 巻二 一一一、一一二

●歌は、 「古に恋ふらむ鳥かもゆずるはのみ井の上より鳴き渡り行く」(弓削皇子) 「古に恋ふらむ鳥は時鳥けだしや鳴きし我が恋ふるごと」(額田王) である。 粟原寺跡万葉歌碑(弓削皇子/額田王) ●歌碑は、奈良県桜井市粟原寺(おおばらでら)跡にある。…

万葉歌碑を訪ねて(その109改)―舒明天皇陵近くのせせらぎの側―万葉集 巻二 九二

●歌は、「秋山の樹の下かくり逝く水の吾れこそ益さめ御思ひよりは」 舒明天皇陵近くの万葉歌碑(鏡王女) ●歌碑は、舒明天皇陵近くのせせらぎの側にある。 ●歌をみていこう。 ◆秋山之 樹下隠 逝水乃 吾許曽益目 御念従者 (鏡王女 巻二 九二) ≪書き下し≫秋山の…

万葉歌碑を訪ねて(その108)―奈良県桜井市聖林寺山門にのぼる入口―万葉集 巻三 二九〇

万葉歌碑を訪ねて―その108― ●歌は、「椋橋の山を高みか夜ごもりに出で来る月の光ともしき」である。 奈良県桜井市聖林寺万葉歌碑(間人宿祢大浦) ●歌碑は、奈良県桜井市聖林寺山門にのぼる入口にある。 ●歌をみていこう。 ◆椋橋乃 山乎高可 夜隠尓 出来…

万葉歌碑を訪ねて(その107改)―桜井市高齢者総合福祉センター前―万葉集 巻七 一二八二

●歌は、「梯立の倉橋山に立てる白雲みまく欲りわがするなべに立てる白雲」である。 桜井市立高齢者総合福祉センター前万葉歌碑(作者未詳) ●歌碑は、桜井市高齢者総合福祉センター前にある。 ●歌をみていこう。 ◆橋立 倉椅山 立白雲 見欲 我為苗 立白雲 (…

万葉歌碑を訪ねて(その106改)―奈良県桜井市吉備春日神社―万葉集 巻二 一六三

●歌は、「神風の伊勢の国にあらましを何しか来けむ君もあらなくに」である。 吉備春日神社歌碑(大津皇子漢詩と大伯皇女万葉歌) ●歌碑は、奈良県桜井市吉備春日神社境内にある。 ●歌をみていこう。 ◆神風乃 伊勢能國尓母 有益乎 奈何可来計武 君毛不有尓 (…

万葉歌碑を訪ねて(その104改、105改)ー桜井市立図書館、安倍文殊院西古墳横―万葉集 巻六 九九〇、巻三 二八二

―その104― 歌は、「茂岡に神さび立ちて栄えたる千代松の樹の歳の知らなく」である。 桜井市立図書館万葉歌碑(紀朝臣鹿人) ●歌碑は、桜井市立図書館にある。 ●歌をみていこう。 ◆茂岡尓 神佐備立而 榮有 千代松樹乃 歳之不知久 (紀朝臣鹿人 巻六 九九〇…

万葉歌碑を訪ねて(その103改)―等彌神社の「霊畤拝所」―万葉集 巻十 二三四六

●「うかねらふ」これも枕詞である。狩猟のとき、鳥獣の足跡をたどってねらうことやねらう人を「跡見(とみ)」ということから、同音の地名「跡見山」にかかるのである。 ●歌は、「うかねらふ跡見山雪のいちしろく恋ひば妹が名人知らむかも」である。 等彌神…

万葉歌碑を訪ねて(その102改)― 奈良県桜井市桜井 等彌神社 ―万葉集 巻八 一五六〇

●歌は、「妹が目を跡見の崎の秋はぎは比月ごろは散りこすなゆめ」である。 等彌神社境内万葉歌碑(大伴坂上郎女) ●歌碑は、奈良県桜井市桜井の等彌神社にある。 ●歌をみてみよう。 ◆妹目乎 始見之埼弐乃 秋芽子者 此月其呂波 落許須莫湯目 (大伴坂上郎女 …

万葉歌碑を訪ねて(その101改)―等彌神社境内鳥見山登山口西側―万葉集 巻六 一五四九

●歌は、「射目立てて跡見の岳邊のなでしこの花総手折りわれは行きなむ奈良人のため」である。 等彌神社境内万葉歌碑(紀朝臣鹿人) ●歌碑は、等彌神社境内鳥見山登山口西側(登山口には鳥見山稲荷があり、「鳥見山霊畤」の碑がある)にある。 鳥見山霊時の碑…

万葉歌碑を訪ねて(その100改)―吉隠公民館広場―巻二 二〇三

●現在「万葉歌碑を訪ねて」シリーズをブログに書いているが、今日がちょうど100回目である。それ以前も、奈良県と京都府の県境にある「万葉の小径」の歌碑を紹介したことがあった。 100回とは、よく続いたものだ。これからも日々の積み重ねをコツコツ…

万葉歌碑を訪ねて(その99改)―出雲初瀬街道沿い―万葉集 巻二 一一六

●歌は、ひとごとをしげみこちたみおのが世に未だ渡らぬ朝川わたる」である。 出雲 初瀬街道沿い万葉歌碑(但馬皇女) ●歌碑は、出雲初瀬街道沿いにある。 ●歌をみていこう。 ◆人事乎 繁美許知痛美 己世尓 未渡 朝川渡 (但馬皇女 巻二 一一六) ≪書き下し≫人…

「泊瀬川」で始まる歌は、万葉集には五首収録されている(万葉歌碑を訪ねて―その98―)

●「泊瀬川」で始まる歌は、万葉集には五首収録されている。現在の初瀬川(大和川)は、残念ながら、かなりましになったとはいえ万葉歌のようなイメージとはかけ離れている。 ●サンドイッチは、ピーナツペーストをはさんだ。6分割して並べた。デザートは、り…

万葉歌碑を訪ねて(その97改)―桜井市慈恩寺欽明天皇磯城嶋金刺宮址―万葉集 巻十三 三二五四

●歌は、「しきしまの大和の国は言霊のさきはふ国ぞまさきくありこそ」である。 奈良県桜井市欽明天皇磯城嶋金刺宮跡万葉歌碑(柿本人麻呂) ●歌碑は、桜井市慈恩寺欽明天皇磯城嶋金刺宮址(きんめいてんのうしきしまかなさしのみやあと)にある。 ●歌をみて…

万葉歌碑を訪ねて(その96改)―桜井市立東中学校校庭―万葉集 巻六 九九一

万葉歌碑を訪ねて―その96― ●歌は、「岩走りたぎち流るる泊瀬川たゆる事なくまたも来てみむ」である。 桜井市立東中学校校庭万葉歌碑(紀朝臣鹿人) ●歌碑は、桜井市立東中学校校庭にある。 ●歌をみていこう。 ◆石走 多藝千流留 泊瀬河 絶事無 亦毛来而将見…