万葉集の歌碑めぐり

万葉歌碑をめぐり、歌の背景等を可能な限り時間的空間的に探索し、万葉集の万葉集たる所以に迫っていきたい!

2025-07-01から1ヶ月間の記事一覧

万葉集の世界へ飛び込もう(その2986)―書籍掲載歌を中軸に(Ⅲ)―庭園文化(4)

「・・・大嬢とは、庭でともに遊んだ思い出もあったようです。家持は次のような歌を、大嬢に贈っています。 (秋の相聞 巻八の一六二九)(歌は省略) 結婚をしても、多忙のために妻との時間も取れない家持の嘆きの歌ですね。このとき家持は久邇京におり、妻…

万葉集の世界へ飛び込もう(その2985)―書籍掲載歌を中軸に(Ⅲ)―庭園文化(3)

「『なでしこ』は、家持が偏愛した花なのでした。・・・家持と坂上大嬢との間には、『なでしこ』に関わる思い出のあったことです。若い日の家持は、こんな歌を大嬢に贈っているのです。 (春の相聞 巻八の一四四八)(歌は省略) この歌は巻八の『春の相聞(…

万葉集の世界へ飛び込もう(その2984)―書籍掲載歌を中軸に(Ⅲ)―庭園文化(2)

【『東歌』の庭、『防人歌』の庭】 「・・・『万葉集』にも、庭園での労働の歌・・・庭でのお祭りの歌があってもいいはずです・・・が見たところ、麻関する二首(巻四の五二一、巻十四の三四五四)、防人(さきもり)が出発するにあたり、庭に祀(まつ)られ…

万葉集の世界へ飛び込もう(その2983)―書籍掲載歌を中軸に(Ⅲ)―庭園文化

第十二章 庭園と愉楽 「・・・第十二章では、・・・庭に込められた個人のそれぞれの思いについて、坂上大嬢(さかのうへのだいじょう)を偲ぶ大伴家持の庭を中心にかたってみることとしましょう。・・・」 【万葉時代の庭園文化】 「貴族や役人などの平城京…

万葉集の世界へ飛び込もう(その2982)―書籍掲載歌を中軸に(Ⅲ)―宴する歌(5)

【清麻呂三度目の登場、ご満悦】 「清麻呂は、ご満悦。家持の歌を受けて、次のように答えます。 (巻二十の四五〇四) 『いとおしいとわたしが思っている君たちよ、毎日でもいいですよ。波のように絶え間なくなんどでもなんどでもいらっしゃい!我が家には………

万葉集の世界へ飛び込もう―書籍掲載歌を中軸に(Ⅲ)―宴する歌(4)

【甘南備伊香登場、いえいえ磯(石)でなくては】 「ここで登場したのが、甘南備伊香(なむなびのいかご)という人物です。彼はこういう主張をします。 (巻二十の四五〇二)(歌は省略) 『梅の花散る春、長い日中見ても見ても見飽きないのは、庭池の磯(石…

万葉集の世界へ飛び込もう(その2980)―書籍掲載歌を中軸に(Ⅲ)―宴する歌(3)

【市原王登場、敬慕の念を述べる】 「・・・市原王は、家持と清麻呂の問答を受けて、 (巻二十の四五〇〇)(歌は省略) と歌いました。『梅の花の香を慕い、遠く離れたところにおりましても、心では常に清麻呂さまのことをお慕い申し上げます』と述べている…

万葉集の世界へ飛び込もう(その2979)―書籍掲載歌を中軸に(Ⅲ)―宴する歌(2)

【家持登場、あるじを祝福する】 「梅問答を受けて、家持が登場します。 (巻二十の四四九八)(歌は省略) 「梅の木が出たのを受けて、家持が歌ったのは『磯松』でした。・・・清麻呂の邸宅の庭には池があったのでしょう。池には岩が配されて、松が植えられ…

万葉集の世界へ飛び込もう(その2978)―書籍掲載歌を中軸に(Ⅲ)―宴する歌(1)

【宴会の時と場所】 「・・・清麻呂を敬愛する家持をはじめとした文雅(ぶんが)の士が、天平宝字(てんぴょうほうじ)二(七五八)年二月、平城京の清麻呂の邸宅に集まりました。・・・ときに、清麻呂五十七歳。家持は四十一歳・・・『万葉集』の巻二十は、…

万葉集の世界へ飛び込もう(その2977)―書籍掲載歌を中軸に(Ⅲ)―中臣清麻呂

第十一章 宴席と庭園 【万葉の時代を駆け抜けた男】 「・・・第十一章では、・・・宴席が行われた庭園についてお話します。・・・最近わたしには、気になって気になってしかたがない人物がいます。・・・その男の名は、中臣清麻呂(なかとみのきよまろ)。・…

万葉集の世界へ飛び込もう(その2976)―書籍掲載歌を中軸に(Ⅲ)―

【芸人の芸をめでる】 「・・・特定の人物の芸を、皆で楽しむ、・・・今日でいえば芸人的地位を有していたと考えられる歌人に長忌寸意吉麻呂(ながのいみきおきまろ)という人物がいます。・・・意吉麻呂が巧みに歌を詠むということはおそらく有名で、ために…

万葉集の世界へ飛び込もう(その2975)―書籍掲載歌を中軸に(Ⅲ)―笑い

【餓鬼についても一定のイメージが共有されていた】 「・・・餓鬼についても同じで・・・当時の大寺には餓鬼道に堕(お)ちた亡者の極端な瘦身(そうしん)の像が置かれていたのではないでしょうか。大伴家持に熱い思いをもちながらも、失恋してしまった笠女…

万葉集の世界へ飛び込もう(その2974)―書籍掲載歌を中軸に(Ⅲ)―あらさがしの笑い

第十章 笑いと宴席 【あらさがしの笑い】 「・・・万葉びとはどのような宴に遊んだのでしょうか。巻十六の歌のなかには、宴での歌を伝えていると考えられるものがあります。そのなかに、人のあらさがしをして他人をあざける歌があるのです。 (有由縁雑歌 巻…

万葉集の世界へ飛び込もう(その2973)―書籍掲載歌を中軸に(Ⅲ)―家持vs紀女郎(2)

【反撃を予想して伏線を張る】 「相手の反撃を予想している場合、先制攻撃をする側は、伏線を張ります。家持の伏線を見てゆきましょう。まず家持はこう歌いました。 大伴宿禰(すくね)家持が紀女郎に贈る歌一首 鶉(うづら)鳴く 故(ふ)りにし郷(さと)…

万葉集の世界へ飛び込もう(その2972)―書籍掲載歌を中軸に(Ⅲ)―家持vs紀女郎(1)

【ああいえば、こういう】 「『ああいえば、こういう』という男女間のやり取りは、・・・一つの文芸の伝統であり、歌垣の文化の流れを引き継ぐものである、と考えることもできます。・・・取り上げる歌は次の二首です。・・・ (相聞 巻四の七七五)(同 同…

万葉集の世界へ飛び込もう(その2971)―書籍掲載歌を中軸に(Ⅲ)―大原の雪

第九章 揶揄と笑い 【反発しあう男と女】 「『万葉集』を読んでいると、男女の間で交わされている歌に・・・互いが互いを笑いものにしたり、揶揄したりというふうに反発しあっている内容の歌が多い・・・有名な歌を挙げるとすれば・・・ (相聞 巻二の一〇三…

万葉集の世界へ飛び込もう(その2970)―書籍掲載歌を中軸に(Ⅲ)―怨恨と揶揄(2)

【おばさんの反撃】 「坂上郎女も反撃せざるを得ません。彼女は、こう反撃しました。 大伴坂上郎女の歌一首 心には 忘るる日なく 思へども 人の言(こと)こそ 繁(しげ)き君にあれ(相聞 巻四の六四七) 坂上郎女は、『相手への思いが途絶えた日はなかった…

万葉集の世界へ飛び込もう(その2969)―書籍掲載歌を中軸に(Ⅲ)―怨恨と揶揄(1)

第八章 怨恨と揶揄 【それは、一つの揶揄なのだが……?】 「本章の『怨恨と揶揄』というテーマで私が選んだのは、次の歌です。・・・巻四に収載されている大伴駿河麻呂(おほとものするがまろ)と大伴坂上郎女(おほとものさかのうへのいらつめ)の間で交わさ…

万葉集の世へ飛び込もう(その2968)―書籍掲載歌を中軸に(Ⅲ)―使ひのよどみ

【使いが来なくなるということ】 「『万葉集』の恋歌を読んでいると、当時は恋人の間で使いが煩雑に出されていたことがわかります。・・・つれなくなると、たよりもなくなるのは、今も昔も変わらぬ世の常です。・・・川や池の水が停滞して動かなくんっている…

万葉集の世界へ飛び込もう(その2967)―書籍掲載歌を中軸に(Ⅲ)―怨恨歌

【大伴坂上郎女の怨恨歌】 「つまり、『待つ女の文芸』は、次の二つによって支えられているのです。一つは当時の婚姻関係であり、もう一つは中国の閏怨詩です。そういう『待つ女の文芸』の系譜に連なる作品を、坂上郎女も残しています。その名も『怨恨歌』と…

万葉集の世界へ飛び込もう(その2966)―書籍掲載歌を中軸に(Ⅲ)―待つ女の文芸

【妻問婚と待つ女の文芸】 「・・・待つことの苦しみを歌った歌は、『万葉集』のあちこちに見られます。・・・万葉の時代には妻問婚(つまどいこん)という結婚の形式が、広く行われていました。・・・こういった結婚形態においては、妻は一般に夫の訪れを待…

万葉集の世界へ飛び込もう(その2965)―書籍掲載歌を中軸に(Ⅲ)―嫉妬

第7章 愛情と怨恨 【「愛憎半ば」といっていまえばただそれだけのことだが……】 「・・・第7章では、その愛情と怨恨(えんこん)が歌のなかでどのように表現されているかを・・・みたいと思います。・・・」 【異色、異例の長歌】 「愛憎半ばとはよくいいま…

万葉集の世界へ飛び込もう(その2964)―書籍掲載歌を中軸に(Ⅲ)―母の叱咤

【ふたたび大伴坂上郎女と大嬢】 「・・・長歌は、注記がなく制作年代が不明なのですが、・・・天平十一(七三九)年の歌と見る人もいます。坂上郎女は、跡見(とみ)の庄から、娘・大嬢にこんな歌を贈りました。 (相聞 巻四の七二三)(同 同七二四)(歌…

万葉集の世界へ飛び込もう(その2963)―書籍掲載歌を中軸に(Ⅲ)―小山田の鹿猪田

【儒教の浸透と家父長権の確立】 「・・・桜井満(さくらいみつる)(一九三三-九五)は『両親をオモチチ・アモシシという表現は、・・・母系制時代の呼称の名残りとみられる古い表現形式であり、チチハハというのは、家父長権(かふちょうけん)の確立とか…

万葉集の世界へ飛び込もう(その2962)―書籍掲載歌を中軸に(Ⅲ)―オモチチ

第六章 家族と愛情 【父親というもの】 「・・・『万葉集』を見ていても、父親の影は薄いのです。なぜなら妻問婚(つまどいこん)では、父親というのは子どもの同居者ではないからです。万葉歌では両親を並べて呼ぶ場合、母親を先にいう呼び方も存在するので…

万葉集の世界へ飛び込もう(その2961)―書籍掲載歌を中軸に(Ⅲ)―宅庄往来の文芸

【届けられた妻の下着】 この九月には、庄の大嬢から、平城京の家持のもとへもう一つ大切な贈り物が届きました。それは、大嬢の下着です。下着を受け取った家持が庄の大嬢に贈った歌が、続いて収載されています。 (秋の相聞 巻八の一六二六)(歌は省略) …

万葉集の世界へ飛び込もう(その2960)―書籍掲載歌を中軸に(Ⅲ)―業

【「宅」から「庄」へ】 「・・・家持は平城京から庄に返事を贈りました。 (秋の相聞 巻八の一六二五)(歌は省略) 家持の答えは、滑稽なほど大げさなものです。『業(なり)と作れる』は、専門の職業として作ったということなのですが。大嬢の歌の『我が…

万葉集の世界へ飛び込もう(その2959)―書籍掲載歌を中軸に(Ⅲ)―縵

【心と心を結ぶ手紙】 天平十一年「九月、坂上大嬢(さかのうへのだいぢゃう)が『竹田の庄』ないし『跡見の庄』と思われる場所から、家持に歌を贈っています。地名が詠み込まれていないのでどちらかは特定できませんが、大嬢も庄に下向していたのです。その…

万葉集の世界へ飛び込もう(その2958)―書籍掲載歌を中軸に(Ⅲ)―泊瀬(初瀬)

【庄で秋を感じる】 「家持は久しぶりの再会を果たして、平城京に戻りました。するとまた、郎女は淋しさを募らせます。九月になって、大伴坂上郎女は、次のような歌を歌っているのです。 (秋の雑歌 巻八の一五九二)(同 巻八の一五九三)(歌は省略) 『五…

万葉集の世界へ飛び込もう(その2957)―書籍掲載歌を中軸に(Ⅲ)―竹田の庄 第五章 労働と貴族

第五章 労働と家族 【万葉貴族も二重生活だった】 「万葉時代の貴族もまた二重生活者だったのです。万葉貴族は、いわゆる官僚ですから、平城京内の『邸宅』に住むことが義務づけられていました。・・・彼らは、ミヤの周辺に住み、イへ(邸宅)からミヤに出勤…