万葉集の歌碑めぐり

万葉歌碑をめぐり、歌の背景等を可能な限り時間的空間的に探索し、万葉集の万葉集たる所以に迫っていきたい!

2025-10-01から1ヶ月間の記事一覧

万葉集の世界へ飛び込もう(その3078)―書籍掲載歌を中軸に(Ⅴ)―誕生とは

【冠婚葬祭にない誕生】 「なぜ、冠婚葬祭という、・・・人生行事の・・・中に、『誕生』・・・が含まれていないのだろうか。そもそも『誕生』とは、日本人の人生にとっては、どのような『点』であり『節』であるのだろうか。 日本人は、その生死の時刻が、…

万葉集の世界へ飛び込もう(その3077)―書籍掲載歌を中軸に(Ⅴ)―人生の以前以後

本稿から「『万葉びとの一生』 池田弥三郎 著 講談社現代新書」をベースに勉強していきたいと思います。引き続き、ご指導賜りますようお願い申し上げます。 第一章 冠婚葬祭 【年中行事と人生行事】 「冠婚葬祭という語は、・・・中国の文献にでてくる語であ…

万葉集の世界へ飛び込もう(その3076)―書籍掲載歌を中軸に(Ⅳ)―『万葉集』とは

【明治時代人の心のバランス】 「・・・明治時代・・・同調圧力が中国文化から西洋文化に変わっただけの話である。正岡子規の俳句、短歌の革新運動も、欧化に対して心のバランスを取るものであったといえよう。その子規がもっとも重んじたのが、『万葉集』な…

万葉集の世界へ飛び込もう(その3075)―書籍掲載歌を中軸に(Ⅳ)―日本回帰志向

【聖武天皇と阿倍仲麻呂と李白、王維】 「阿倍仲麻呂(あべのなかまろ)の歌は、渡唐していたこともあってか、『古今和歌集』に収められている。有名な『天の原 ふりさけ見れば 春日なる 三蓋(みかさ)の山に いでし月かも』(巻九の四〇六)である。阿倍仲…

万葉集の世界へ飛び込もう(その3074)―書籍掲載歌を中軸に(Ⅳ)―日本文化の創造性

【なぜ『文選』だったのか】 「ではなぜ、日本において、『文選』が学ばれたかといえば、それは、中国において、群を抜いて権威のある『集』だったからである。つまり、『万葉集』の形成期においては、『文選』は、東アジア漢字文化圏でもっとも有力な『総集…

万葉集の世界へ飛び込もう(その3073)―書籍掲載歌を中軸に(Ⅳ)―『万葉集』とは日本の『文選』である

万葉集の世界へ飛び込もう(その3073)―書籍掲載歌を中軸に(Ⅳ)―『万葉集』とは日本の『文選』である 終章 偉大なる文化遺産のゆくえ 【日本の歌の二つの源流】 「言葉も漢字も、歴史を背負って、今、ここに存在する。日本社会は、無文字社会から、漢字…

万葉集の世界へ飛び込もう(その3072)―書籍掲載歌を中軸に(Ⅳ)―『万葉集』という歌集名をどう理解するか

【『万葉集』という歌集名をどう理解するか】 「・・・一九七〇年代までは、万葉の意味は、『万』は『よろず』・・・よろず言の葉。・・・たくさんの歌を集めた歌集というのが、その本義・・・ところが、小島憲之(こじまのりゆき)が、・・・『万葉』は基本…

万葉集の世界へ飛び込もう(その3071)―書籍掲載歌を中軸に(Ⅳ)―やまと歌復興

【平城天皇『万葉集』勅撰説】 「・・・紀淑望(きのよしもち)の手になる『古今和歌集』真名序(まなじょ)(漢文序文)には・・・『万葉集』は平城天皇の下命による勅撰集ということになっている。が、しかし。平城天皇勅撰の事実を、六国史(『日本書紀』…

万葉集の世界へ飛び込もう(その3070)―書籍掲載歌を中軸に(Ⅳ)―『古今和歌集』仮名序の万葉観

【『古今和歌集』仮名序の万葉観】 「では、『古今和歌集』仮名序は、『万葉集』をどのような書物と見ているのであろうか。・・・ 重要なことは、『万葉集』が『ならの御時』から広まったと伝えられていることである。ところが、この『ならの御時』がなかな…

万葉集の世界へ飛び込もう(その3069)―書籍掲載歌を中軸に(Ⅳ)―『万葉集』から『古今和歌集』へ

第六章 『万葉集』の本質は何か 【日本文学史のなかで】 「・・・恋と四季の文学に、やまと歌の世界は集約される、・・・恋情発想は、やまと歌の基底にあるもので、日本の歌とは恋を語るものなのである。これは、歌が男女の掛け合いから出発したものだからで…

万葉集の世界へ飛び込もう(その3068)―書籍掲載歌を中軸に(Ⅳ)―編纂の志向性

【編纂の志向性】 「『万葉集』に一つの構造があるとするならば、そこには、どのような歌々を編纂すべきか、という志向性のようなものがあるはずである。私は私なりに、編纂の志向性を、次のように考えている。・・・ 歴史による分類志向…………時間軸に沿って…

万葉集の世界へ飛び込もう(その3067)―書籍掲載歌を中軸に(Ⅳ)―万葉集の形成時期

【部立の有無】 「・・・注目すべき点は、部立がある巻とない巻があるという点である。整理してみると、 部立のある巻……一~十四、十六 部立のない巻……十五、十七~二十 となる。巻一は雑歌の巻、巻二は相聞と雑歌の巻である。つまり、巻一と巻二はセットで…

万葉集の世界へ飛び込もう(その3066)―書籍掲載歌を中軸に(Ⅳ)―巻十七から巻二十の世界

【巻十七から巻二十の世界】 「ここからは、巻十七から巻二十のいわゆる『末(すえ)四巻』について見てゆこう。 巻十七は、越中国司赴任前後の大伴家持の歌日記をもとに編まれた巻である。 主たる年代は聖武朝(七二四~七四九)で、天平二年(七三〇)十一…

万葉集の世界へ飛び込もう(その3065)―書籍掲載歌を中軸に(Ⅳ)―巻十五と巻十六の世界

【巻十五と巻十六の世界】 「巻十五は、天平八年(七三六)の遣新羅使人(けんしらぎしじん)関係歌と、天平十年(七三八)前後の中臣宅守(なかとみのやかもり)越前国(えちぜんのくに)配流歌(はいるか)の二つの歌群を編纂して収録した巻である。 登場…

万葉集の世界へ飛び込もう(その3064)―書籍掲載歌を中軸に(Ⅳ)― 巻十三と巻十四の世界

【巻十三と巻十四の世界】 「巻十三は、作者不記載の長歌を集めて、三大部立に歌々を振り分けた巻である。 ここでは、柿本人麻呂歌集歌を取り上げておこう。 (巻十三の三二五三、三二五四)(歌は省略) ・・・口に出して、お願いをしたり、説得をしたりす…

万葉集の世界へ飛び込もう(その3063)―書籍掲載歌を中軸に(Ⅳ)―「巻九と巻十の世界(2)」・「巻十一と巻十二の世界」

「続く巻十は、三大部立のそれぞれの部立のなかで、四季分類した巻である。作者不記載歌に短歌を中心に集めている。部立の構成は、巻八と同じ。 ここでは、巻頭の一首を取り上げておこう。 (巻十の一八一二)(歌は省略) もちろん、はじまりは『春の雑歌』…

万葉集の世界へ飛び込もう(その3062)―書籍掲載歌を中軸に(Ⅳ)―巻九と巻十の世界(1)

【巻九と巻十の世界】 「巻九は、主に、先行歌集を3大部立に振り分けて編集された巻である。。 主たる年代は持統朝(六九〇~六九七)から聖武朝(七二四~七四九)まで。 登場する主な歌人は雄略天皇、藤原宇合(ふじわらのうまかい)、高橋虫麻呂である。…

万葉集の世界へ飛び込もう(その3061)―書籍掲載歌を中軸に(Ⅳ)―巻五と巻六ならびに巻七と巻八の世界

【巻五と巻六の世界】 「巻五は、天平時代の雑歌を集めたもので、大伴旅人、大伴家持らが収集した歌々をまとめた巻で・・・書簡集の観がある。 主たる年代は聖武朝(七二四~七四九)。 登場する歌人は、山上憶良、吉田 宣(よしだのよろし)、藤原房前(ふ…

万葉集の世界へ飛び込もう(その3060)―書籍掲載歌を中軸に(Ⅳ)―巻三と巻四の世界

【巻三と巻四の世界】 「巻三は、巻一、巻二に続いて、それらに収められなかった歌々を集めた巻である。 主たる年代は持統朝(六九〇~六九七)から聖武朝(七二四~七四九)まで。 登場する主な歌人は大津皇子、柿本人麻呂、高市黒人、大伴旅人、小野老(お…

万葉集の世界へ飛び込もう(その3059)―書籍掲載歌を中軸に(Ⅳ)―巻一と巻二の世界(2)

「続く巻二、は・・・主たる年代は天智朝(六六八~六七一)から元正(げんしょう)朝(七一五~七二四)まで。 登場する主な歌人は藤原鎌足(ふじわらのかまたり)、大津皇子(おおつのみこ)、日並皇子(ひなみしのみこ)(草壁皇子(くさかべのみこ))、…

万葉集の世界へ飛び込もう(その3058)―書籍掲載歌を中軸に(Ⅳ)―巻一と巻二の世界(1)

第五章 『万葉集』のかたちと成り立ち 【第四章のまとめ】 「・・・前章では、交流と交換という視点から、『万葉集』の特性を明らかにした。では、『万葉集』の時代とは、いったいどんな時代だったのだろうか。『万葉集』に収載されている歌で、もっとも古い…

万葉集の世界へ飛び込もう(その3057)―書籍掲載歌を中軸に(Ⅳ)―家持・書持兄弟の絆

【大伴家持・書持兄弟の絆】 「平城京と越中をつなぐ書簡の話である。大伴家持には書持(ふみもち)という弟がいた。天平十八年(七四六)の秋に、大伴家持は越中に赴任するのであるが、九月のある日、書持の突然の訃報に接する。かなり長いけれども、家持の…

万葉集の世界へ飛び込もう(その3056)―書籍掲載歌を中軸に(Ⅳ)―Uターン采女

【采女の人生】 「(采女たちは)、都で天皇の宮に奉仕したのちに・・・一部は、当然、帰郷したものと思われる。・・・彼女たちは、都の文化を身につけて帰って行ったものと思われる。こんな歌が巻十六に伝わっている。 (巻十六の三八〇七と同左注)(歌な…

万葉集の世界へ飛び込もう(その3055)―書籍掲載歌を中軸に(Ⅳ)―志賀島の海人の歌

【筑前国の志賀の海人の歌】 「筑前国(ちくぜんのくに)は、現在の福岡県東北部である。その筑前国の『那の大津(なのおおつ)』すなわち博多湾の東の入り口にあたるのが、金印で有名な志賀島(しかのしま)である。志賀島の海人たちは、漁労・製塩・海運に…

万葉集の世界へ飛び込もう(その3054)―書籍掲載歌を中軸に(Ⅳ)―地方文化との交流

万葉集の世界へ飛び込もう(その3054)―書籍掲載歌を中軸に(Ⅳ)―地方文化との交流 【万葉歌の北限】 「陸奥国」といえば、現在の福島、宮城、岩手、青森も含まれるが、東歌の陸奥国の歌は、(前稿の)三首が、ほぼ北限と考えてよい。・・・おそらく、そ…

万葉集の世界へ飛び込もう(その3053)―書籍掲載歌を中軸に(Ⅳ)―陸奥国の歌

【西から東へと広がる文化】 「なぜ東国関係歌だけが、一巻にまとめられるかという問題は、都の人びとにとって、東国がどのようなイメージを喚起する場所であったか、という観点から考えねばならない。東歌には、どこの国の歌かがわかる(『勘国歌(かんこく…

万葉集の世界へ飛び込もう(その3052)―書籍掲載歌を中軸に(Ⅳ)―東歌

【東歌の世界】 「東歌も、・・・都との交流のなかで生まれた歌々なのである。東国の農民の民謡であるという考え方は、すでに過去のものになりつつある。・・・『東歌』といっても、東国に関わる歌とのみ考えればよいのであって、東国に住む人びとの歌だけで…

万葉集の世界へ飛び込もう(その3051)―書籍掲載歌を中軸に(Ⅳ)―家持と防人歌

【防人と共振する大伴家持】 「防人歌の収集をした大伴家持は、防人たちに接し、さらには防人たちの歌に接して、深くその立場に同情している。防人たちは、歌によって自らの心情を伝え、伝えられた心情に深く共感して、家持はその気持ちを表現する歌をいくつ…

万葉集の世界へ飛び込もう(その3050)―書籍掲載歌を中軸に(Ⅳ)―防人歌は家族愛の文学

【ふたたび防人歌の世界へ】 万葉時代は、漢字を通して、都と地方が結ばれた時代であった。「防人歌や東歌も、そういった巨視的観点から読み直してゆく必要があるのである。・・・『万葉集』に収められている防人歌は、合計九十八首で(巻十四に五首、巻二十…

万葉集の世界へ飛び込もう(その3049)―書籍掲載歌を中軸に(Ⅳ)―東国出身者

【東国出身者に対する同情】 前稿で紹介した大伴三中の歌に詠われた、史生の丈部龍麻呂は、「『丈部(はせつかべ)』という氏は東国に多いので、東国出身者の可能性は大きいと見られている。次に、龍麻呂が父母のことを『母父』と呼んでいたと三中が記してい…