万葉集の歌碑めぐり

万葉歌碑をめぐり、歌の背景等を可能な限り時間的空間的に探索し、万葉集の万葉集たる所以に迫っていきたい!

ザ・モーニングセット190110(万葉の小径シリーズーその5 いちし ヒガンバナ)

●サンドイッチの中身は、レタスと焼豚そしてトレビスを使った。備前の丸皿に盛り、トレビスの葉を飾り付けた。

 ※ トレビスはヨーロッパ原産の赤紫色の葉物野菜。別名赤チコリ。

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1月10日のモーニングセット

 

 デザートはみかんの輪切りを4枚使い、中央に5個の2色ぶどうの飾り合わせを配した。バナナの上に2色ぶどうの縦切りのぶどうを飾り、干しブドウをあしらった。 

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1月10日のデザート

 

●万葉の小径シリーズーその5 いちし ヒガンバナ

 

 道の辺の 壱師の花の いちしろく 人皆知りぬ わが恋妻を

                   (柿本人麻呂歌集 巻十一 二四八〇)

 

 「路邊 壹師花 灼然 人皆知 我戀嬬 

   或本歌曰 灼然 人知尓家里(ひとしりにけり)

                  継而之念者(つぎてしおもえば)」

 

 道の辺の壱師の花が、目立って咲いている。そのようにはっきりと世間の人は皆、私の恋妻のことを知ってしまったことよよ

 

 「いちしの花は、一説ではヒガンバナマンジュシャゲ)かと見られ、秋分の日の頃、他のあぜなどに密生して真っ赤な花を咲かせる多年生草木である。奈良時代の歌学書に「いちしの花の白妙の」という表現が見られるので、これによると、いちしの花は白ということになる。ヒガンバナの赤とは正反対である。

 そこで、この弱点を補って、白い花の咲くタデ科のギシギシやイタドリなどもいちしかと推測されるが、目立つという点ではヒガンバナに遠く及ばない。

 当時の恋人たちは、二人の関係が世間に知られることを非常に恐れていた。一旦、知られてしまうと、言葉が霊力を持って、次から次へ伝わって、結局、二人の間が断ち切られると思っていた。この歌は、まるでいちしの花のように鮮やかに、二人の恋が世間に知れ渡ってしまったことを嘆く恋歌である。」(万葉の小径 いちしの歌碑)

 

●歌碑の説明文にある歌学書とは、奈良時代末期の藤原浜成によって書かれた「歌経標式(かきょうひょうしき)」である。

 

 路の辺の伊知旨(いちし)の花のしろたへのいちしろくしも我(あ)れ恋ひめやも

                             (歌経標式)

 

 「いちし」のイチは、「イツ紫、イツ藻などに通じる接頭語」とする説もある。折口博士の「口訳万葉集」には、「道の辺の櫧(しい)の花」という訓読みがされている。「櫧」は、カシ、またはイチイガシである。

 説明文では、「いちしの花は白ということになる。ヒガンバナの赤とは正反対である。」といっているが、白いヒガンバナには触れていない。色だけが決め手になるか議論が分かれるところである。

 

 

(参考文献)

★万葉の小径 いちしの歌碑

★「萬葉集」 鶴 久・森山 隆 編 (桜楓社)

★「万葉の恋歌」 堀内民一 著 (創元社