万葉集の歌碑めぐり

万葉歌碑をめぐり、歌の背景等を可能な限り時間的空間的に探索し、万葉集の万葉集たる所以に迫っていきたい!

ザ・モーニングセット190119(万葉の小径シリーズーその14さかき)

●今日のサンドイッチはブラン入りの食パンを使った。しっとりして見るからにおいしそうであったので、耳も残した。三角形に切り、備前の皿に盛った。中身のサニーレタスと焼豚が皿の色ともマッチして見た目もいつもより良くなった。

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1月19日のモーニングセット

 デザートは、バナナ、イチゴ、ぶどうの輪切りの半分を対称に並べた。十字の間に伊予柑を置いた。ブドウ、干しブドウ、いちごのスライスを適宜ならべ見た目も意識した。

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1月19日のデザート

 万葉の小径の歌碑を順番に紹介している。歌碑の文言は原則そのまま写し、万葉仮名の歌を追記してある。歌に関する事柄を付け加えている。関連する歌なども掲載しているが、訳などは我流であるところもあるのでご容赦いただきたい。

 今日は、「さかき」である。

 

●万葉の小径シリーズ-その14 さかき サカキ 

 

ひさかたの 天の原より 生まれ来る

神の命(みこと) 奥山の 賢木(さかき)の枝に しらかつけ

木綿(ゆふ)取り付けて 斎瓮(いはひべ) 斎ひ掘り据ゑ

竹玉(たかだま)を しじに貫(ぬ)き垂れ 鹿(しし)じもの

膝折り伏して たわやめの おすひ取り掛け

かくだにも 我は祈(こ)ひなむ 君に逢はじかも

                     (大伴坂上郎女 巻三 三七九)

 

天の原からお生まれになって来た先祖の神々よ、奥山の榊の枝にしらかを付け木綿を取り付け、斎瓮をおごそかに掘り据えて、竹玉をたくさん紐に通し垂らし、その中で私は鹿のように膝を折り曲げ伏して、女である私が肩におすひを掛け、こんなにまでして祈るのですよ。どうかあの人にお会いしたいものですよ。

 

 「サカキは、常緑高木。厚い葉には瑞々しいつやがあるので、上代から今に至るまで神前に供えられることが多い。サカキの名の由来も、あるいは「栄え木」がつづまったものかという。この歌は、祭神歌であって、天平五年に大伴氏を代表して、大伴の氏神をお祭りした時の歌である。坂上郎女は、一族の家刀自(いえとじ:大伴一族をとりしきる主婦)として大伴家の先祖の神々に祈っている。天の忍日命(おしひのみこと)に始まる大伴家の先祖に、榊の枝にしらか(不明。一説に白髪とする)と白い木綿をつけて祈り、祈りの場は、瓮(かめ)を据え、竹を輪切りにしたものを紐に通して上から吊るし、自分はおすひ(長い上衣か)をかけてとり行うのである。」

                       (万葉の小径 さかきの歌碑)

 

 

題詞に、「大伴坂上郎女祭神歌一首幷短歌」とあり、上記の長歌(三七九)があり、

反歌」(三八〇)がある。

 

木綿疉(ゆふたたみ) 手取持手(てにとりもちて) 如此谷母(かむだにも) 

吾波乞甞(あれはこひなむ) 君尓不相鴨(きみにあはじかも)

                      (大伴坂上郎女 巻三 三八〇)

 

木綿で作った敷物を手にもって、これほどまで私はお願いしているのに、あなたに会えないのかしら。

 

 大伴坂上郎女は、大伴家持の叔母で姑でもあり、万葉集の代表的女性歌人長歌、短歌合わせて84首が収録されている。特に「相聞歌」では突出している。「斉明天皇など、二,三の皇族作家に雑歌の多い人がいるが、女性とはいえ、公的な地位にあった彼女たちにおいて、それは当然ともいえよう。異彩を放つ大伴坂上郎女すら、やはり相聞歌の方が(雑歌に比し)はるかに多い。」「女性にとって、相聞に生きることがその生活の中心であった。(中略)男にすがって必死に生きなければならなかった女性の立場を、よく伝えている。」(「萬葉集相聞の世界」 伊藤 博 著より抜粋)

 

大伴坂上郎女の歌を二首あげてみる。

「人事(ひとごと)を 繁みや君を 二鞘(ふたさや)の 

              家をへだてて 恋ひつつをらむ」(巻四 六八五)

ひとのうわさがうるさいゆえに、あなたに直接逢うことなく、家をへだてて恋つづけていられましょうか、とはばかり暮らす男性をはげましている。郎女の性格が表れている。

 

「青山を 横ぎる雲の いちじろく 

             我と笑(え)まして 人に知らゆな」(巻四 六八八)

青山の上を横切っている白い雲のように、 目立つまでに 私に笑みを浮かべていますが、人に知られないように、の意で、相手の男をたしなめている。郎女らしい歌である。 

   

(参考文献)

★万葉の小径 さかきの歌碑

★「萬葉集」 鶴 久・森山 隆 編 (桜楓社)

★「國文學 第23巻5号」万葉集の詩と歴史 (學燈社

★「萬葉集相聞の世界」 伊藤 博 著 (塙書房

★「万葉の恋歌」 堀内民一 著 (創元社)