万葉集の歌碑めぐり

万葉歌碑をめぐり、歌の背景等を可能な限り時間的空間的に探索し、万葉集の万葉集たる所以に迫っていきたい!

ザ・モーニングセット190123(万葉の小径シリーズーその17かしは)

●本日のサンドイッチは、サニーレタスと焼豚。サニーレタスの勢いが良いので、中味がはちきれんばかりである。信楽焼の長方皿に盛り付けた。

f:id:tom101010:20190123212321j:plain

1月23日のモーニングセット

 デザートは、リンゴの縦切りの中心を花柄の野菜くり抜き道具を使って、くり抜き、3枚を使った。2枚は水平に、1枚を垂直にアーチ形になるように置いた。周辺をぶどうと干しブドウで飾り付けた。

f:id:tom101010:20190123212405j:plain

1月23日のデザート

 昨日は、近隣の公園の菅池の夕映えがあまりに見事だったので、シリーズを休み紹介した。今日は、万葉の小径シリーズ「かしは」の歌碑の紹介である。

 

●万葉の小径シリーズ-その17 かしは

 

稲見野(いなみの)の あから柏(かしは)は 時はあれど 君を我が思う 時はさねなし

              (安宿王<あすかべのおおきに> 巻二〇 四三〇一)

 

伊奈美野之 安可良我之波ゝ 等伎波安礼騰 伎美乎安我毛布 登伎波佐祢奈之

 

稲見野のあから柏でさえ 赤く色づく時期は決まっていますが、

私が天皇たちのことをお思い申し上げるときは、時に関わりなくいつもいつもですよ

 

 「カシワは広く大きく柔らかな葉に特色のある落葉高木で、古来祭祀の時に、その葉が用いられていた。万葉集には柏(かしは)は三首に歌われ、あから柏の他に、秋柏と朝柏とがある。秋や朝などの季節や時間と結びつくのは、やはりカシワといえばその葉に注目した結果である。秋に葉が黄色く色づいたカシワ、朝露によって濡れて瑞々しくなっているカシワ、そうすると、あから柏も葉の状態から生まれたことばであろうと推測される。

 あから柏は、もの皆赤に黄に色づく秋のカシワであろうか。それならば、秋柏の言葉がすでにあり、しかも、カシワの葉が色づくと黄や褐色に近く、決して赤いいろとはいえない。それゆえ、この赤を新葉の赤みとして、若葉が赤みを帯びて照り映えている柏とする説が、実際に即して、あから柏にもっともふさわしい。播磨国守であった安宿王は、平城京における宴席の場で「稲見野のあから柏」、おそらくは宮中の祭祀にも使われたカシワを歌って、一層天皇をたたえている。」

                        (万葉の小径 かしはの歌碑)

 

 この歌の題詞は、「七日天皇太上天皇太后在於東常宮南大殿肆宴歌一首」とあり、左記は、「右一首播磨國守安宿王奏 古今未詳」とある。

 

 安宿王の歌は、万葉集に二首収録されている。

 もう一首は、題詞「八月一三日在内南安殿肆宴歌二首」とあり、安宿王と大伴宿祢の歌が収録されている。

 

乎等賣良我(をとめらが) 多麻毛須蘇婢久(たまもすそびく) 許能尓波尓(このにはに) 安伎可是不吉弖(あきかぜふきて) 波奈波知里都ゝ(はなはちりつつ)

                        (安宿王 巻二〇 四四五二)

 

左記は、「右一首内匠頭兼播磨守正四位下安宿王奏之」

 

 柏餅は、香りの良い、比較的厚手の柏の葉でくるんであるが、実際に枝についている葉を見たのは、この万葉の小径に植わっている3本の柏の木が初めてであった。以前、長野に出張した時、りんごの木を初めて見て、枝から赤いりんごがたくさんぶら下がっているのに、感動したのと同じくらい、あの柏の葉が、と驚いたものである。そのあと、2本が根元から切られたが、いつも間にか復活していたのにも驚かされた。生命力の強い木である。

 落葉高木というが、枯れた葉をほとんど落としていないのはある意味異様な光景ではある(下の写真は1月19日に撮影したものである)。毎年枯葉をかき分けて新芽を出してくるが、それはそれで趣がある。

f:id:tom101010:20190123215254j:plain

枯葉を着けたままの柏の木

 

 

 

   

(参考文献)

★万葉の小径 かしはの歌碑

★「萬葉集」 鶴 久・森山 隆 編 (桜楓社)