万葉集の歌碑めぐり

万葉歌碑をめぐり、歌の背景等を可能な限り時間的空間的に探索し、万葉集の万葉集たる所以に迫っていきたい!

ザ・モーニングセット190207(万葉の小径シリーズーその29はねず)

●今日のサンドイッチは、サンチュと焼き豚。三角形に8分割して器に盛り付けた。

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デザートは、りんごの縦切りで井桁を作り四方に縦切りを立て、倒れないようにバナナで押さえぶどうの切り合わせを配した。

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今日の万葉の小径シリーズの歌碑の紹介は「はねず」である。

●万葉の小径シリーズーその29 はねず ニワウメ

夏まけて 咲きたる唐棣(はねず) ひさかたの

雨うち降らば うつろひなむか

大伴家持 巻八 一四八五)

夏儲而 開有波祢受 久方乃 雨打零者 将移香

夏になると、すぐに咲き始めた唐棣、それも雨が 降り続いたなら色あせて行くだろうかなあ。

唐棣は、今日のニワウメかと見られている。ニワウメはコウメとも呼ばれる落葉低木で、春の初めにかけて、葉が出る前にウメよりも小さい淡紅色の花をたくさん咲かせる。さらに、夏の盛りには、赤く澄んだ実をつけ、食用や薬用となる。ニワウメの名の由来は、庭に植える木で梅に似た花を咲かせるからだという。唐棣については、もちろん異説もあって、ニワザクラ、ザクロ、シモクレンなども挙げられている。

唐棣は、万葉集に四回歌われ、この歌以外はすべて唐棣色と書かれていて、花そのものよりも、はねず 色が興味の対象となっている。それは赤い色で、褪せやすい色でもあったから、うつろい易い恋心のありようを表すのにふさわしい色であった。

万葉びとは自分の嫌なことは歌わないから、雨もまた私たちとは異なる捉え方をするしていた。雨は百首を越える歌に詠まれ、確かに一面ではあるが、その条件を克服するところに、心の深さが示されていた。

(万葉の小径 はねずの歌碑)

歌碑の説明文にもあるように、花そのものよりはねず色が対象となっている他の三首は次の通りである。

🔷不念常(おもはじと) 日手師物乎(いひてしものを) 翼酢色之(はねずいろの) 變安寸(うつろひやすき) 吾意可聞(あがこころかも) (大伴坂上郎女 巻四 六五七)

もうあなたのことを思はないと言っては見たものの、はねず色のように、(また恋しく思ってしまう)なんと変わりやすい私の心は

🔷山振之(やまぶきの) 尓保敝流妹之(にほへるいもが) 翼酢色乃(はねずいろの) 赤裳之為形(あかものすがた) 夢所見管(いめにみえつつ) (作者未詳 巻十一 二七八六)

山吹のように美しいあの子が、はねず色(朱華色)の赤い衣を身につけた姿を夢に見ていたよ

🔷唐棣花色之(はねずいろの) 移安(うつろひやすき) 情有者(こころあれば) 年乎曽寸経(としをぞきふる) 事者不絶而(ことはたえずて) (作者未詳 巻十二 三〇七四)

はねず色のように心変わりする心の人なので、年月だけ経つだけで、あなたに言伝は絶えないように伝えているのに

いずれも、時とともに色褪せていく様を時間経過になぞらえての歌である。二七八六も夢にまで見たあの艶やかな姿もやがてといった気持ちがあるのだろう。夢から現実への時間経過を踏まえたのかも知らない。