万葉集の歌碑めぐり

万葉歌碑をめぐり、歌の背景等を可能な限り時間的空間的に探索し、万葉集の万葉集たる所以に迫っていきたい!

ザ・モーニングセット190213(万葉の小径シリーズーその35なつめ)

サニーレタスと焼き豚をはさんでサンドイッチ。信楽焼の長方皿に盛り付けました。

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デザートはりんごの輪切りの四方に縦切りを立てて、スィートスプリングやブドウ、バナナを飾りました。

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万葉の小径シリーズもいよいよ最終である。今日の歌碑の紹介は、「なつめ」である。

●万葉の小径シリーズーその34 なつめ ナツメ

玉掃(たまはばき) 刈り来鎌麿(かりこかままろ) 室の樹と(むろのきと) 棗が本と(なつめがもとと) かき掃かむため(かきはかむため) (長意吉麿 巻一六 三八三〇)

玉掃 苅来鎌麻呂 室乃樹 與棗本 可吉将掃為

鎌麿よ、玉掃を刈り取って来なさい。むろの木と棗の木の下を掃こうと思うから。

「ナツメは、落葉低木または小高木で、「夏芽でその芽立ちがおそく、初夏に入ってようやく芽を出す特性を以って名付けた」(牧野新日本植物図鑑)という。ナツメを歌う歌は、わずかに二首で、もう一首の短歌においては、梨、棗、黍(きび)、粟、葛、葵の六種の植物が一度に詠まれ、ここでも、玉掃(たまはばき)・室(むろ)・棗(むろのき)の三種が一度に歌われていて、ナツメを中心に歌った歌ではない。

それにしても風変わりな歌である。確かに刈り来(カリコ)鎌麿(カママロ)かき掃かむ(カキハカム)には、カ音のリズムはあるけれど、歌の内容は何もなく、ただ命令口調で伝えているだけの歌に過ぎない実はこの歌には条件がついていて、「玉掃、鎌、天木香、棗」を詠むことを指示され、この互いに無関係の四つのものを、ある関連をつけて即座に歌うのが条件であった。長意吉麿(ながのおきまろ)は、鎌を人名の鎌麿とし、玉掃の枝を鎌という名を持つ男に刈り取ってくるように命じ、それで作った箒(ほうき)で、天木香(むろ)と棗の木の下を掃こうと歌ったのである。その点では意味が一応通っており、リズム感もある即興歌と言えよう。作者長意吉麿は、正しくは長忌寸意吉麿(ながのいみきおきまろ)といい、忌寸(いみき)という姓から渡来系の人と見られ、実に手慣れた歌人である。」(万葉の小径歌碑 なつめ)

歌碑の説明にあるもう一首の短歌は次の通りである。

🔹梨棗(なしなつめ) 黍(きみ)に粟(あは)嗣(つ)ぎ 延(は)ふ田葛(くず)の 後(のち)も逢はむと 葵(あふひ)花咲く (作者未詳 巻一六 三八三四)

梨(なし)、棗(なつめ)、黍(きび)に粟(あわ)がついでみのり、蔓(つる)を伸ばす葛(くず)のように後にまた逢おうと葵(あおい)に花が咲くよ。

歌碑の説明にもあるように、六種の秋にちなんだ植物が詠まれている。植物の名前にかけた言葉遊びが隠されている。「黍(きみ)」は、「君(きみ)」に、「粟(あは)」は「逢(あ)ふ」に、そして「葵(あふひ)」には、「逢(あ)ふ日(ひ)」の意味が込められている。この歌は、あなたに会いたい!という思いを、秋に実るたくさんの植物の名前を用いながら詠んでいる。これは、秋の宴席で出された料理にヒントを得て作られた、戯れの歌とも言われている。

(参考文献)

★万葉の小径歌碑 なつめ

★「萬葉集」 鶴 久 ・ 森山 隆 編 (桜楓社)

★「別冊國文學 万葉集必携」 稲岡耕二・編 (學燈社

★「奈良県HP はじめての万葉集

万葉の小径を歩いていると時折、歌碑の前で熱心に見ている人を見かける。何かの折に歌碑を見直したいと思っても現地に来るのは大変である。かといって、写真では味気ないし、以前にも書いたよう、いたずらでヒビが入ったものもあり、写真でも耐え難いところがある。歌碑の説明文は、そのまま転記し、万葉仮名は追記した。

さらに、歌にまつわる事柄など他の文献から引用も含めてまとめあげたつもりである。

これを機に、万葉集をさらに自分なりに親しんでいこうと考えている。

本シリーズについて、いろいろご教授いただければありがたいと思っております。

ありがとうございました。