万葉集の歌碑めぐり

万葉歌碑をめぐり、歌の背景等を可能な限り時間的空間的に探索し、万葉集の万葉集たる所以に迫っていきたい!

ザ・モーニングセット&フルーツフルデザート190316(万葉歌碑を訪ねて―その12―)

●今朝は冷え込む。なんと、外は雪混じりの雨が降っている。サンドイッチはサラダ菜と焼き豚。

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3月16日のザ・モーニングセット

 デザートは、八朔を渦巻様に並べお皿の淵の隙間にいちごを配した。中心にイチゴを置き車輪状にブドウ8分の1カットを並べた。フルーツホイールのタイヤみたいな仕上がりとなった。

 

 今日は、大伴坂上郎女の人物像に迫ってみたい。大伴家持を後ろ盾となって、歌人に育て上げたことは言うまでもない。犬養 孝氏はその著のなかで、「なによりも彼女は本当の歌人であり、歌作りといえましょう。」と述べておられる。

 

 

●万葉歌碑を訪ねて―その12―

「わが背子が見らむ佐保道の青柳を手折りてだにも見むよしもがも」

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法蓮町(旧)春日野荘前庭 万葉歌碑(大伴坂上郎女

 

◆吾背兒我(わがせこが) 見良牟佐保道乃(みらむさほぢの) 青柳乎(あおやぎを) 手折而谷裳(たをりてだにも) 見縁欲得(みむよしもがな)

                    (大伴坂上郎女 巻八 一四三二)

 

(略訳)愛しいあなたが見ているでしょうね、佐保の道の青柳を せめて手折りてでも見る手立てがないものだろうか

(注)もがな:文末にあって強い願望をあらわす

 

 この歌は、題詞「大伴坂上郎女柳歌二首」の一首である。もう一首は、万葉歌碑を訪ねて―その10―で紹介した「うちのぼる佐保の河門の青柳は春べとなりにけるかも」である。

 

◆打上(うちのぼる) 佐保能河原之(さほのかはらの) 青柳者(あおやぎは) 今者春部登(いまははるへと) 成尓鶏類鴨(なりにけるかも)

                    (大伴坂上郎女 巻八 一四三三)

(略訳)ちょっと、のぼって見る佐保の川原の青柳は、もうすっかり春の風情となったことだなあ

 

 大伴坂上郎女は、大伴旅人が亡くなって後に、一族の「家刀自」(いえとじ:大伴一族をとりしきる主婦)となっている。天平五年に大伴氏を代表して、大伴の氏神をお祭りした時。坂上郎女が大伴家の先祖の神々に祈った次の祭神歌(題詞「大伴坂上郎女祭神歌一首幷短歌」による)を詠っている。

 

◆ひさかたの 天の原より 生まれ来る

神の命(みこと) 奥山の 賢木(さかき)の枝に しらかつけ

木綿(ゆふ)取り付けて 斎瓮(いはひべ) 斎ひ掘り据ゑ

竹玉(たかだま)を しじに貫(ぬ)き垂れ 鹿(しし)じもの

膝折り伏して たわやめの おすひ取り掛け

かくだにも 我は祈(こ)ひなむ 君に逢はじかも

                     (大伴坂上郎女 巻三 三七九)

 

(訳)天の原からお生まれになって来た先祖の神々よ、奥山の榊の枝にしらかを付け木綿を取り付け、斎瓮をおごそかに掘り据えて、竹玉をたくさん紐に通し垂らし、その中で私は鹿のように膝を折り曲げ伏して、女である私が肩におすひを掛け、こんなにまでして祈るのですよ。どうかあの人にお会いしたいものですよ。(訳は、万葉の小径の歌碑「さかき」を参照)

 

題詞に、「大伴坂上郎女祭神歌一首幷短歌」とあり、上記の長歌(三七九)があり、

反歌」(三八〇)がある。

 

◆木綿疉(ゆふたたみ) 手取持手(てにとりもちて) 如此谷母(かむだにも) 

吾波乞甞(あれはこひなむ) 君尓不相鴨(きみにあはじかも)

                      (大伴坂上郎女 巻三 三八〇)

 

(略訳)木綿で作った敷物を手にもって、これほどまで私はお願いしているのに、あなたに会えないのかしら。

 

 先に書いたように、郎女は、大伴一族の後見役となり世話役の務めを果たしていく。大伴一族の行事や公式的な歌も作っている。それだけに気丈な面を持っている。次の二首にはそのような性格がうかがい知れるのである。

 

 大伴坂上郎女の歌を二首あげてみる。

◆「人事(ひとごと)を 繁みや君を 二鞘(ふたさや)の 

              家をへだてて 恋ひつつをらむ」(巻四 六八五)

 ひとのうわさがうるさいゆえに、あなたに直接逢うことなく、家をへだてて恋つづけていられましょうか、とはばかり暮らす男性をはげましている。郎女の性格が表れている。

 

◆「青山を 横ぎる雲の いちじろく 

             我と笑(え)まして 人に知らゆな」(巻四 六八八)

 青山の上を横切っている白い雲のように、 目立つまでに 私に笑みを浮かべていますが、人に知られないように、の意で、相手の男をたしなめている。これも郎女らしい歌である。 

   

(参考文献)

★「萬葉集」 鶴 久・森山 隆 編 (桜楓社)

★「國文學 第23巻5号」万葉集の詩と歴史 (學燈社

★「萬葉集相聞の世界」 伊藤 博 著 (塙書房

★「万葉の恋歌」 堀内民一 著 (創元社) 

★「万葉の人びと」 犬養 孝 著 (新潮文庫

★「万葉の小径 さかきの歌碑」

★「weblio古語辞典」

★「万葉ゆかりの地を訪ねて~万葉歌碑めぐり~」(奈良市HP)