●歌は、「大君は 神にしませば 赤駒の腹這ふ田居を 都と成しつ」である。
この歌碑は、奈良県高市郡明日香村の飛鳥坐神社にある。同神社には3つの万葉歌碑がある。
歌をみていこう。
◆皇者 神尓之座者 赤駒之 腹婆布田為乎 京師跡奈之都
(大伴御行 巻十九 四二六〇)
≪書き下し≫大君(おほきみ)は神にしませば赤駒(あかごま)の腹這(はらば)ふ田居(たゐ)を 都と成(な)しつ
(訳)我が大君は神でいらっしゃるので、赤駒でさえも腹まで漬(つ)かる泥深い田んぼ、そんな田んぼすらも、立派な都となされた。(伊藤 博 著 「万葉集 四」 角川ソフィア文庫より)
(注)大君:天武天皇
(注)はらばふ 【腹這ふ】:腹を地につけて手足でまたは身をくねらせて進む。
(注)たゐ 【田居】:田。たんぼ。
題詞は、「壬申年之乱平定以後歌二首」<壬申(じんしん)の年の乱平定(しづ)まりし以後(のち)の歌二首>とある。
左注は、「右一首大将軍贈右大臣大伴卿昨」<右の一首は、大将軍贈右大臣大伴卿が作(おほとものまへつきみ)
もう一首のほうもみていこう。
◆大王者 神尓之座者 水鳥乃 須太久水奴麻乎 皇都常成通 作者未詳
(作者未詳 巻十九 四二六一)
≪書き下し≫大君は神にしませば水鳥(みづとり)のすだく水沼(みぬま)を都と成しつ
(訳)我が大君は神でいらっしゃるので、水鳥のたくさん群れ騒いでいる水沼、そんな沼地すらも、たちまち立派な都となされた。(伊藤 博 著 「万葉集 四」 角川ソフィア文庫より)
(注)すだく【集く】:① 虫などが多く集まって鳴く。 ② 集まる。群がる。群がってさわぐ。
(注)水鳥のすだく水沼:赤駒の腹這う田居よりさらに都にしにくい沼地をいう
この歌の左注は、「右件二首天平勝寶四年二月二日聞之 即載於玆也」<右の件(くだり)の二首は、天平勝宝(てんぴやうしょうほう)四年の二月の二日に聞く。すなわちここに載す。>とある。
伊藤 博氏は、四二六〇歌の脚注に、この二首は偉大な帝業への讃歌と位置づけ、二三五歌なども参照されたい旨書かれている。
二三五歌をみてみよう。
◆皇者 神二四座者 天雲之 雷之上尓 廬為流鴨
(柿本人麻呂 巻三 二三五)
≪書き下し≫大君(おほきみ)は神にしませば天雲(あまくも)の雷(いかづち)の上(うへ)に廬(いほ)らせるかも
(訳)天皇は神であらせられるので、天雲を支配する雷神、その神の上に廬(いおり)をしていらっしゃる(伊藤 博 著 「万葉集 一」 角川ソフィア文庫より)
これは、巻三の冒頭歌であり、序詞にあるように「天皇御遊雷岳之時柿本朝臣人麻呂作歌一首」≪天皇(すめらみこと)、雷(いかづち)の岳(をか)に幸(いでま)す時に、柿本朝臣人麻呂が作る歌一首>で、宮廷歌人人麻呂が天皇を讃えた歌である。
(参考文献)
★「萬葉集」 鶴 久・森山 隆 編 (桜楓社)
★「犬養孝揮毫万葉歌碑マップ(明日香村)」
●本日のザ・モーニングセット&フルーツフルデザート
サンドイッチは、ロメインレタスと焼き豚である。デザートは、りんごの市松模様の飾り切りを真ん中にどーんと配し、周りをトンプソンとクリムゾンシードレスの切合わせで加飾した。