万葉集の歌碑めぐり

万葉歌碑をめぐり、歌の背景等を可能な限り時間的空間的に探索し、万葉集の万葉集たる所以に迫っていきたい!

万葉歌碑を訪ねて(その144改)―奈良県高市郡明日香村 飛鳥坐神社(2)―

●歌は、「大君は 神にしませば 赤駒の腹這ふ田居を 都と成しつ」である。

 

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飛鳥坐神社境内万葉歌碑(大伴御行

 この歌碑は、奈良県高市郡明日香村の飛鳥坐神社にある。同神社には3つの万葉歌碑がある。

 

歌をみていこう。

◆皇者 神尓之座者 赤駒之 腹婆布田為乎 京師跡奈之都

大伴御行 巻十九 四二六〇)

 

≪書き下し≫大君(おほきみ)は神にしませば赤駒(あかごま)の腹這(はらば)ふ田居(たゐ)を 都と成(な)しつ

 

(訳)我が大君は神でいらっしゃるので、赤駒でさえも腹まで漬(つ)かる泥深い田んぼ、そんな田んぼすらも、立派な都となされた。(伊藤 博 著 「万葉集 四」 角川ソフィア文庫より)

(注)大君:天武天皇

(注)はらばふ 【腹這ふ】:腹を地につけて手足でまたは身をくねらせて進む。

(注)たゐ 【田居】:田。たんぼ。

 

 題詞は、「壬申年之乱平定以後歌二首」<壬申(じんしん)の年の乱平定(しづ)まりし以後(のち)の歌二首>とある。

 左注は、「右一首大将軍贈右大臣大伴卿昨」<右の一首は、大将軍贈右大臣大伴卿が作(おほとものまへつきみ)

 

 もう一首のほうもみていこう。

◆大王者 神尓之座者 水鳥乃 須太久水奴麻乎 皇都常成通  作者未詳

                (作者未詳 巻十九 四二六一)

 

≪書き下し≫大君は神にしませば水鳥(みづとり)のすだく水沼(みぬま)を都と成しつ

 

(訳)我が大君は神でいらっしゃるので、水鳥のたくさん群れ騒いでいる水沼、そんな沼地すらも、たちまち立派な都となされた。(伊藤 博 著 「万葉集 四」 角川ソフィア文庫より)

(注)すだく【集く】:①  虫などが多く集まって鳴く。 ②  集まる。群がる。群がってさわぐ。

(注)水鳥のすだく水沼:赤駒の腹這う田居よりさらに都にしにくい沼地をいう

 

 この歌の左注は、「右件二首天平勝寶四年二月二日聞之 即載於玆也」<右の件(くだり)の二首は、天平勝宝(てんぴやうしょうほう)四年の二月の二日に聞く。すなわちここに載す。>とある。

 

 伊藤 博氏は、四二六〇歌の脚注に、この二首は偉大な帝業への讃歌と位置づけ、二三五歌なども参照されたい旨書かれている。

 

 二三五歌をみてみよう。

◆皇者 神二四座者 天雲之 雷之上尓 廬為流鴨

               (柿本人麻呂 巻三 二三五)

 

≪書き下し≫大君(おほきみ)は神にしませば天雲(あまくも)の雷(いかづち)の上(うへ)に廬(いほ)らせるかも

 

(訳)天皇は神であらせられるので、天雲を支配する雷神、その神の上に廬(いおり)をしていらっしゃる(伊藤 博 著 「万葉集 一」 角川ソフィア文庫より)

 

 これは、巻三の冒頭歌であり、序詞にあるように「天皇御遊雷岳之時柿本朝臣人麻呂作歌一首」≪天皇(すめらみこと)、雷(いかづち)の岳(をか)に幸(いでま)す時に、柿本朝臣人麻呂が作る歌一首>で、宮廷歌人人麻呂が天皇を讃えた歌である。

 

 

 

(参考文献)

★「萬葉集」 鶴 久・森山 隆 編 (桜楓社)

★「万葉集 四」 伊藤 博 著 (角川ソフィア文庫

★「万葉集 一」 伊藤 博 著 (角川ソフィア文庫

★「犬養孝揮毫万葉歌碑マップ(明日香村)」

★「weblio古語辞典 三省堂大辞林

 

●本日のザ・モーニングセット&フルーツフルデザート

 サンドイッチは、ロメインレタスと焼き豚である。デザートは、りんごの市松模様の飾り切りを真ん中にどーんと配し、周りをトンプソンとクリムゾンシードレスの切合わせで加飾した。

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7月24日のザ・モーニングセット

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7月24日のフルーツフルデザート