●歌は、「天橋も 長くもがも 高山を 高くもがも 月夜見の 持てるをち水 い取り来て 君に奉りて をち得てしかも」である。
●この歌碑は、奈良県高市郡明日香村 万葉文化館庭園にある。文化館庭園には６つの歌碑がある。その１つ目である。
●歌をみていこう。
◆天橋文 長雲鴨 高山文 高雲鴨 月夜見乃 持有越水 伊取来而 公奉而 越得之旱物
（作者未詳 巻十三 三二四五）
≪書き下し≫天橋（あまはし）も 長くもがも 高山を 高くもがも 月夜見（つくよみ）の 持てるをち水 い取り来て 君に奉（まつ）りて をち得てしかも
（訳）天に上る梯子（はしご）でももっと長かったらなあ。天に上る高い山もいっそう高かったらなあ。月の神の持っている若返りの水、その水をこの手に取って来て、我が君に奉って若返りたいものだ。（伊藤 博 著 「万葉集 三」 角川ソフィア文庫より）
（注）つくよみ【月夜見／月読み】：《月齢を数える意から》１ 月の神。つきよみ。
２ 月。つきよみ。
（注）おちみず〔をちみづ〕【復ち水／変＝若ち水】：飲むと若返るという水。月は欠けて、また満ちるところから、月の神が持っているとされた。
（注）をち 【復ち】名詞：もとに戻ること。若返ること。
巻十三は前にも書いたように、長歌＋反歌（短歌）で一つのストーリーを形成している。
反歌（短歌）の方もみていこう。
◆天有哉 月日如 吾思有 公之日異 老落惜文
（作者未詳 巻十三 三二四六）
≪書き下し≫天（あま）なるや月日（つきひ）のごとく我が思（おも）へる君が日に異（け）に（お）ゆらく惜（を）しも
（訳）天上に、ああそこに輝く月や日のように私が思っている君が、日ましに老いて行かれるのは、何ともせつない。（伊藤 博 著 「万葉集 三」 角川ソフィア文庫より）
この次に収録されている歌は、巻十三部立て「雑歌」の終わりの歌である。これもみてみよう。
◆沼名河之 底奈流玉 求而 得之玉可毛 拾而 得之玉可毛 安多良思吉 君之 老落惜毛
（作者未詳 巻十三 三二四七）
≪書き下し≫沼名川（ぬながは）の 底なる玉 求めて 得（え）し玉かも 拾（ひり）ひて 得し玉かも あたらしき 君が 老ゆらく惜しも
（訳）沼名川の深い川底にある玉。探し求めてやっと得た玉なのだ、これは。このたいせつな玉のようにかけがえもなく尊い君、その我が君が老いてゆかれるのは、何ともせつない。（伊藤 博 著 「万葉集 三」 角川ソフィア文庫より）
沼名川を検索してみると、「現在の姫川で、その名は奴奈川姫に由来し、『底なる玉』はヒスイ（翡翠）を指していると考えられ、沼河比売はこの地のヒスイを支配する祭祀女王であるとみられる」（フリー百科事典『ウィキペディア（Wikipedia）』より抜粋）とあるように、新潟県糸魚川市関連がヒットしてくる。
巻十三は、「長歌＋短歌」で一つのストーリーを作り上げる試みが見られるが、「三二四五（長歌）、三二四六（短歌）＜左注、右二首＞」＋「三二六七（長歌）＜左注、右一首＞」で「君之老落惜毛」をキーワードに一つのストーリにまとめ上げたとも考えられる。このように見れば、万葉集の万葉集たる所以がここにも見出せるように思える。
（参考文献）
★「萬葉集」 鶴 久・森山 隆 編 （桜楓社）
★「万葉集をどう読むか―歌の『発見』と漢字世界」 神野志隆光 著 （東京大学出版会）
★「weblio古語辞典 学研全訳古語辞典」
●本日のザ・モーニングセット＆フルーツフルデザート
サンドイッチは、玉ねぎとミックスベジタブルを玉子に混ぜ込んで電子レンジでチンしたものとサンチュである。デザートは、グラスに、トンプソンとクリムゾンシードレスそしてヨーグルトの層にしたもので、上部もブドウ類で加飾した。ご近所さんからいただいた、トマト、キュウリ、万願寺、パプリカ、茄子をオブジェにした。
