万葉集の歌碑めぐり

万葉歌碑をめぐり、歌の背景等を可能な限り時間的空間的に探索し、万葉集の万葉集たる所以に迫っていきたい!

万葉歌碑を訪ねて(その151)―奈良県高市郡明日香村 万葉文化館(5)―

●歌は、「春日にある 御笠の山に 月の舟出づ 風流士の 飲む酒坏に 影は見えつつ」である。

 

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万葉文化館庭園万葉歌碑(5)(作者未詳)

●歌碑は、奈良県高市郡明日香村 万葉文化館庭園にある。文化館5つ目の歌碑である。

 

●歌をみていこう。

◆春日在 三笠乃山二 月船出 遊士之 飲酒坏尓 陰尓所見管

                  (作者未詳 巻七 一二九五)

 

≪書き下し≫春日にある御笠(みかさ)の山に月の舟出(い)づ 風流士(みやびを)の飲む酒坏(さかづき)に影は見えつつ

 

(訳)ここ春日の御笠の山に月の舟が出た。風流士(みやびお)の飲む酒坏に影を落としてさ。(伊藤 博 著 「万葉集 二」 角川ソフィア文庫より)

 

伊藤 博氏は、「春日有」の場合は、「かすがなる」と読み、「春日在」の場合は、「かすがにある」と読んでおられる。

「春日有」は、一八二七歌と二二一二歌の二首である。

 

◆春日有 羽賀之山従 狭帆之内敝 鳴往成者 孰喚子鳥

                (作者未詳 巻十 一八二七)

 

≪書き下し≫春日なる羽(は)がひの山ゆ佐保の内へ鳴き行くなるは誰(た)れ呼子鳥(よぶこどり)

 

(訳)春日の羽がいの山を通って佐保の里の内へ鳴いていくのは、いったい誰を呼ぶ呼子鳥なのか。(伊藤 博 著 「万葉集 二」 角川ソフィア文庫より)

 

◆雁鳴之 寒喧之従 春日有 三笠山者 色付丹家里

                (作者未詳 巻十 二二一二)

 

≪書き下し≫雁がねの寒く鳴きしゆ春日なる御笠(みかさ)の山は色づきにけり

 

(訳)雁が寒々と鳴いてからというもの、春日の御笠の山は一面色づいてきた。(伊藤 博 著 「万葉集 二」 角川ソフィア文庫より)

 

 

 

「春日在」をみてみると、三首ある。歌碑の一二九五歌の他の二首をみてみる。

 

◆春日在 三笠乃山尓 月母出奴可母 佐紀山尓 開有櫻之 花乃可見

                  (作者未詳 巻十 一八八七)

 

≪書き下し≫春日にある御笠(みかさ)の山に月も出(い)でぬかも 佐紀山(さきやま)に咲ける桜の花の見ゆべく

 

(訳)東の方春日に聳(そび)える御笠の山に早く月が出てくれないものか。西の方佐紀山に咲いている桜の花がよく見えるように。(伊藤 博 著 「万葉集 二」 角川ソフィア文庫より)

 

もう一首は、

◆春日在 三笠乃山尓 居雲乎 出見毎 君乎之曽念

                   (作者未詳 巻十二 三二〇九)

 

≪書き下し≫春日(かすが)にある御笠(みかさ)の山に居(い)る雲を出で見るごとに君をしぞ思ふ

 

(訳)春日の御笠の山にかかっている雲、その雲を、門に出て見るたびに、旅先のあの方のことが思われてならない。(伊藤 博 著 「万葉集 三」 角川ソフィア文庫より)

 

 

ちなみに、「御笠山」と「三笠山」は下記の通りで、御笠山五首、三笠山十二首である。

 

御笠山 野邊往道者 己伎太雲 繁荒有可 久尓有勿國(巻二 二三二)

三笠山 野邊従久道 己伎太久母 荒尓計類鴨 久尓有名國(巻二 二三四)

◆春日乎 春日山乃 高座之 御笠乃山尓 朝不離・・・(長歌)(巻三 三七二)

◆高按之 三笠乃山尓 鳴鳥之 止者継流 戀哭為鴨(巻三 三七四)

◆雨隠 三笠乃山乎 高御香裳 月乃不出来 夜者更降管(巻六 九八〇)

◆待難尓 余為月者 妹之著 三笠山尓 隠而有来(巻六 九八七)

◆・・・春尓之成者 春日山 御笠之野邊尓 櫻花・・・(長歌)(巻六 一〇四七)

◆大王之 御笠山之 帯尓為流 細谷川之 音乃清也(巻七 一一〇二)

春日在 三笠乃山二 月船出 遊士之 飲酒坏尓 陰尓所見管(巻七 一二九五)

◆鍾礼能雨 無間零者 三笠山 木末歴 色附尓家里(巻八 一五五三)

◆皇之 御笠之山能 秋黄葉 今日之鍾礼尓 散香過奈牟(巻八 一五五四)

能登河之 水底幷尓 光及尓 三笠乃山者 咲来鴨(巻十 一八六一)

春日在 三笠乃山尓 月母出奴可母 佐紀山尓 開有櫻之 花乃可見(巻十 一八八七)

◆雁鳴之 寒喧之従 春日有 三笠山者 色付丹家里(巻十 二二一二)

◆君之服 三笠乃山尓 居雲乃 立者継流 戀為鴨(巻十一 二六七五)

◆妹待跡 三笠乃山之 山菅之 不止八将戀 命不死者(巻十二 三〇六六)

春日在 三笠乃山尓 居雲乎 出見毎 君乎之曽念(巻十二 三二〇九)

 

 

(参考文献)

★「萬葉集」 鶴 久・森山 隆 編 (桜楓社)

★「万葉集 二」 伊藤 博 著 (角川ソフィア文庫

★「万葉集 三」 伊藤 博 著 (角川ソフィア文庫

★「犬養孝揮毫万葉歌碑マップ(明日香村)」

 

●今日のザ・モーニングセット&フルーツフルデザート

 サンドイッチは、10枚切りの3枚使いである。中味は、サンチュとトマト、そして焼き豚である。デザートは、キウイの縦切りスライスを中心に周囲にバナナを配し、トンプソンとクリムゾンシードレスで加飾した。

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7月31日のザ・モーニングセット

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7月31日のフルーツフルデザート