●歌は、「立ちて思ひ居てもそ念ふくれなゐの赤裳裾引き去にし姿を」である。
●歌をみていこう。
◆立念 居毛曽念 紅之 赤裳下引 去之儀乎
(作者未詳 巻十一 二五五〇)
≪書き下し≫立ちて思ひ居(ゐ)てもぞ思ふ紅(くれない)の赤裳(あかも)裾(すそ)引き去(い)にし姿を
(訳)立っても思われ、坐っても思われてならない。紅(べに)染の赤裳の裾を引きながら、歩み去って行ったあの姿が。
今回の明日香村訪問は3回目である。「犬養孝揮毫万葉歌碑マップ(明日香村)」を頼りに明日香村南半分に挑戦することに。前回撮り損ねた、大伴家持の「なでしこ」の歌碑を最後に、計画をたてる。
高松塚古墳前➡飛鳥周遊歩道下平田休憩園地➡坂田寺跡➡飛鳥周遊歩道岡寺から石舞台方面へすぐ➡稲淵 飛石➡大伴家持(なでしこの歌碑)
これを廻れば、「犬養孝揮毫万葉歌碑」は完了する。あとは揮毫以外の歌碑を残すだけとなる。
グーグルマップで、飛鳥歴史公園高松塚周辺地区駐車場をベースに高松塚古墳前と下平田休憩園地の2か所を廻ることにする。
現地の近隣周辺地図を見ると高松塚古墳東南方向に「万葉歌碑」と記されている。方向性がわかるだけでもありがたい。目標に向かって歩き出す。結構な距離である。漸く高松塚古墳が姿を見せる。比較的小さな円墳である。
そこから100mほど上に小さな丘があり、その一角に万葉歌碑があった。小高いところだけに眺めが良い。人っ子ひとりいない。この歴史的空間を独占している。
戻りつつ、途中の高松塚壁画館に立ち寄る。
壁画の模写したものや石槨の原寸大模型が展示されていた。石槨には盗掘のために石を削った跡まで復原されていた。他には海獣葡萄鏡のレプリカや木棺金具など盗掘の価値がないものがわずかに残されたもののレプリカもあった。
東壁や西壁に裳をまとった女子群像が壁画として描かれている。
高松塚古墳壁画女子群像や先日、犬養万葉記念館に展示してあった万葉時代の女性の衣装を思い浮かべ、この歌の情景を想像してみる。
このような思いというのは、時間を超越して理解できるものである。
(参考文献)
★「萬葉集」 鶴 久・森山 隆 編 (桜楓社)
★「犬養孝揮毫万葉歌碑マップ(明日香村)」
★「飛鳥の美、ここに再現」 (高松塚壁画館パンフレット)
★「weblio古語辞典 学研全訳古語辞典」
20220105朝食関連記事削除、一部改訂