●歌は、「さ檜隈檜隈川の瀬を速み君が手取らば言寄せむかも」である。
●歌碑は、奈良県高市郡明日香村明日香周遊歩道下平田休憩園地にある。
万葉歌碑マップを見ると、歌碑は、国営飛鳥歴史公園駐車場北西方向、欽明天皇陵手前である。方向と周辺のポイントを探りながらの探索になる。公園を出ると「平田川」という小川にでる。後でわかったのだが、高取川の支流である。高取川は古代、檜隈川と言っていたようである。この歌碑の案内は、近辺案内図に載っていない。川にちなむ歌であるから、歌碑も川沿いにあるのではと進む。新興住宅ブロックを抜けると、近鉄線が見えて来たので行き過ぎと軌道修正、漸く欽明天皇陵が見えてきた。
地図に従い、そこまでは行かずに途中で右折、鬼の俎、雪隠方向に進む。木々のトンネルのような少しこんもりしたところが見えて来た。なんとなく休憩園地の雰囲気が。木陰に歌碑があった。
よくよく周りを見渡してみると、歴史公園の出口から直進にて左折すればすぐのところである。四角形の一辺の長さは他の三辺の和よりも短いのは当たり前、なんと遠回りをしたことか。
●歌をみていこう。
◆佐檜乃熊 檜隈川之 瀬乎早 君之手取者 将縁言毳
(作者未詳 巻七 一一〇九)
≪書き下し≫さ檜隈(ひのくま)檜隈川(ひのくまがは)の瀬を早み君が手取らば言寄(ことよ)せむかも
(訳)檜隈、そこを流れ行く檜隈川の川瀬が早いので、あなたの手を取り縋(すが)ったら、あれこれ世間に噂されることでしょうか。
(注)ことよす【言寄す・事寄す】
①言葉や行為によって働きかける。言葉を添えて助力する。
②あるものに託す。かこつける。
③うわさをたてる。
「さひのくま ひのくま」と詠い出されている歌がもう一首ある。
◆佐檜隈 檜隈河尓 駐馬 馬尓水令飲 吾外将見
(作者未詳 巻十二 三〇九七)
≪書き下し≫さ檜(ひ)の隈(くま)檜(ひ)の隈(くま)川(がは)に馬留(とど)め馬に水飼(か)へ我(わ)れ外(よそ)見む
(訳)さ檜隈を流れる檜隈川の岸に馬をとめて、馬に水を飲ませてください。その間にも、私、脇からこっそりとお姿を見ましょう。(伊藤 博 著 「万葉集 三」 角川ソフィア文庫より)
朝に、人目につかないように、帰っていく男に、馬を急かせて帰ってしまっては、せっかくのお姿を見ることができないではありませんか、川岸に馬を止めて、馬に水を飲ませている間はあなたのお姿を見ていましょう。
両歌とも、人目を気にしつつも、ほとばしる情熱を内に秘めた歌である。心洗われる歌である。
(参考文献)
★「萬葉集」 鶴 久・森山 隆 編 (桜楓社)
★「犬養孝揮毫万葉歌碑マップ(明日香村)」
★「万葉の大和路」 犬養 孝/文 入江泰吉/写真 (旺文社文庫)
★「大和万葉―その歌の風土」 堀内民一 (創元社)
●本日のザ・モーニングセット&フルーツフルデザート
サンドイッチは、ロメインレタスと焼き豚である。8等分し鉢に盛り付けた。デザートは、バナナとトンプソンとクリムゾンシードレスの切合わせで飾り付けた。