万葉集の歌碑めぐり

万葉歌碑をめぐり、歌の背景等を可能な限り時間的空間的に探索し、万葉集の万葉集たる所以に迫っていきたい!

万葉歌碑を訪ねて(その163)―奈良県高市郡明日香村 飛鳥周遊歩道下平田休憩園地―

●歌は、「さ檜隈檜隈川の瀬を速み君が手取らば言寄せむかも」である。

 

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明日香村周遊歩道下平田休憩園地万葉歌碑(作者未詳)

●歌碑は、奈良県高市郡明日香村明日香周遊歩道下平田休憩園地にある。

 

 万葉歌碑マップを見ると、歌碑は、国営飛鳥歴史公園駐車場北西方向、欽明天皇陵手前である。方向と周辺のポイントを探りながらの探索になる。公園を出ると「平田川」という小川にでる。後でわかったのだが、高取川の支流である。高取川は古代、檜隈川と言っていたようである。この歌碑の案内は、近辺案内図に載っていない。川にちなむ歌であるから、歌碑も川沿いにあるのではと進む。新興住宅ブロックを抜けると、近鉄線が見えて来たので行き過ぎと軌道修正、漸く欽明天皇陵が見えてきた。

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欽明天皇陵遠望

 地図に従い、そこまでは行かずに途中で右折、鬼の俎、雪隠方向に進む。木々のトンネルのような少しこんもりしたところが見えて来た。なんとなく休憩園地の雰囲気が。木陰に歌碑があった。

 よくよく周りを見渡してみると、歴史公園の出口から直進にて左折すればすぐのところである。四角形の一辺の長さは他の三辺の和よりも短いのは当たり前、なんと遠回りをしたことか。

 

●歌をみていこう。

◆佐檜乃熊 檜隈川之 瀬乎早 君之手取者 将縁言毳

(作者未詳 巻七 一一〇九)

 

≪書き下し≫さ檜隈(ひのくま)檜隈川(ひのくまがは)の瀬を早み君が手取らば言寄(ことよ)せむかも

 

(訳)檜隈、そこを流れ行く檜隈川の川瀬が早いので、あなたの手を取り縋(すが)ったら、あれこれ世間に噂されることでしょうか。

(注)ことよす【言寄す・事寄す】

   ①言葉や行為によって働きかける。言葉を添えて助力する。

   ②あるものに託す。かこつける。

   ③うわさをたてる。

 

「さひのくま ひのくま」と詠い出されている歌がもう一首ある。

 

◆佐檜隈 檜隈河尓 駐馬 馬尓水令飲 吾外将見

         (作者未詳 巻十二 三〇九七)

 

≪書き下し≫さ檜(ひ)の隈(くま)檜(ひ)の隈(くま)川(がは)に馬留(とど)め馬に水飼(か)へ我(わ)れ外(よそ)見む

 

(訳)さ檜隈を流れる檜隈川の岸に馬をとめて、馬に水を飲ませてください。その間にも、私、脇からこっそりとお姿を見ましょう。(伊藤 博 著 「万葉集 三」 角川ソフィア文庫より)

 

 朝に、人目につかないように、帰っていく男に、馬を急かせて帰ってしまっては、せっかくのお姿を見ることができないではありませんか、川岸に馬を止めて、馬に水を飲ませている間はあなたのお姿を見ていましょう。

 

両歌とも、人目を気にしつつも、ほとばしる情熱を内に秘めた歌である。心洗われる歌である。

 

 

(参考文献)

★「萬葉集」 鶴 久・森山 隆 編 (桜楓社)

★「万葉集 三」 伊藤 博 著 (角川ソフィア文庫

★「犬養孝揮毫万葉歌碑マップ(明日香村)」

★「万葉の大和路」 犬養 孝/文 入江泰吉/写真 (旺文社文庫

★「大和万葉―その歌の風土」 堀内民一 (創元社

 

●本日のザ・モーニングセット&フルーツフルデザート

 サンドイッチは、ロメインレタスと焼き豚である。8等分し鉢に盛り付けた。デザートは、バナナとトンプソンとクリムゾンシードレスの切合わせで飾り付けた。

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8月12日のザ・モーニングセット

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8月12日のフルーツフルデザート