万葉集の歌碑めぐり

万葉歌碑をめぐり、歌の背景等を可能な限り時間的空間的に探索し、万葉集の万葉集たる所以に迫っていきたい!

万葉歌碑を訪ねて(その187改)―奈良県生駒郡三郷町龍田大社―万葉集 巻九 一七五一

●歌は、「島山をい往き廻る河副の丘邊の道ゆ昨日こそ吾が越え來しか一夜のみ宿たりしからに峰の上の櫻の花は瀧の瀬ゆ落ちて流る君が見むその日までには山下の風な吹きそと打越えて名に負へる社に風祭せな」である。

 

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奈良県生駒郡三郷町龍田大社万葉歌碑(高橋虫麻呂

●歌碑は、奈良県生駒郡三郷町 龍田大社境内にある。

 

●歌をみていこう。

 

◆嶋山乎 射徃廻流 河副乃 丘邊道従 昨日己曽 吾超来壮鹿 一夜耳 宿有之柄二 峯上之 櫻花者 瀧之瀬従 落堕而流 君之将見 其日左右庭 山下之 風莫吹登 打越而 名二負有社尓 風祭為奈

               (高橋虫麻呂 巻九 一七五一)

 

≪書き下し≫島山(しまやま)を い行き廻(めぐ)れる 川沿(かはそ)ひの 岡辺(をかべ)の道ゆ 昨日(きのふ)こそ 我(わ)が越え来(こ)しか 一夜(ひとよ)のみ 寝たりしからに 峰(を)の上(うへ)の 桜の花は 滝の瀬ゆ 散らひて流る 君が見む その日までには 山おろしの 風な吹きそと 打ち越えて 名(な)に負(お)へる社(もり)に 風祭(かざまつり)せな

 

(訳)島山を行き巡って流れる川沿いの、岡辺の道を通って私が越えて来たのはほんの昨日のことであったが、たった一晩旅宿(たびやど)りしただけなのに、尾根の桜の花は滝の早瀬をひらひら散っては流れている。我が君が帰り道のご覧になるその日までは、山おろしの風など吹かせ給うなと、馬打ちながらせっせと越えて行って、その名も高い風の神、竜田の社に風祭りをしよう。(伊藤 博 著 「万葉集 二」 角川ソフィア文庫より)

(注)しまやま 【島山】名詞:①島の中の山。また、川・湖・海などに臨む地の

    島のように見える山。②庭の池の中に作った山。築山(つきやま)。 

(注)こそ・・・しか:逆説条件

(注)君:ここでは 藤原宇合をさす。

 

 題詞は、「難波經宿明日還来之時歌一首并短歌」<難波(なには)に経宿(やど)りて明日(あくるひ)の還(かへ)り来(く)る時の歌一首幷せて短歌>である。

 

 反歌の方もみていこう。

◆射行相乃 坂之踏本尓 開乎為流 櫻花乎 令見兒毛欲得

              (高橋虫麻呂 巻九 一七五二)

 

≪書き下し≫い行き逢ひの坂のふもとに咲きををる桜の花を見せむ子もがも

 

(訳)国境の聖なる行き逢いの坂の麓に、枝もたわわに咲く桜の花、この美しい花を見せてやれる子でもいたらよいのに。(伊藤 博 著 「万葉集 二」 角川ソフィア文庫より)

(注)ををる 【撓る】(たくさんの花や葉で)枝がしなう。たわみ曲がる。

(注)もがも 《接続》体言、形容詞・断定の助動詞の連用形などに付く。〔願望〕…があったらなあ。…があればいいなあ。

 

 

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龍田大社境内

 奈良県生駒郡三郷町(さんごうちょう)のHPを開いてみるとコンテンツ「万葉歌碑」がある。鏡王女の万葉歌碑(JR大和路線沿い)、高橋虫麻呂の歌碑(JR三郷駅)、高橋虫麻呂の歌碑(龍田大社境内)が掲載されている。

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「万葉歌碑」(三郷町HP)

 高橋虫麻呂の歌碑(龍田大社境内)➡鏡王女の万葉歌碑(JR大和路線沿い)➡高橋虫麻呂の歌碑(JR三郷駅)の順に回ることにする。

 龍田大社の駐車場に車を止める。大社といわれるだけに駐車場から階段を上り、鳥居をくぐり、拝殿までそこそこ広く長い境内参道を歩く。拝殿手前右手に歌碑があった。

 

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龍田大社鳥居

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龍田大社名碑

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拝殿



 

 

 龍田大社については、「なら旅ネット」(奈良県観光公式サイト)に「龍田風神と呼ばれる風の神を祀る式内社。風を司る天御柱命国御柱命を祀ったところ、五穀豊穣になったと伝えられる。近年は、風の難を防ぐことから航海安全に霊験があるとして信仰を集め、航海や航空の安全を祈願する参拝客が数多く訪問する。天武3(674)年から営まれているという風鎮祭が毎年7月第1日曜に行われ、風鎮太鼓や神楽を奉納する。祭は豪快な手筒花火でその幕を閉じる。」とある。

 

 

(参考文献)

★「萬葉集」 鶴 久・森山 隆 編 (桜楓社)

★「万葉集 二」 伊藤 博 著 (角川ソフィア文庫

★「万葉の大和路」 犬養 孝/文 入江泰吉/写真 (旺文社文庫

★「なら旅ネット」(奈良県観光公式サイト)

★「Weblio古語辞典 学研全訳古語辞典」

 

※20210516朝食関連記事削除、一部改訂