万葉集の歌碑めぐり

万葉歌碑をめぐり、歌の背景等を可能な限り時間的空間的に探索し、万葉集の万葉集たる所以に迫っていきたい!

万葉歌碑を訪ねて(その248)―滋賀県高島市鵜川 四十八体石仏群参道―万葉集 巻九 一七三三 

●歌は、「思ひつつ来れど来かねて三尾の崎真長の浦をまたかへり見つ」である。

 

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滋賀県高島市鵜川 四十八体石仏群参道万葉歌碑(碁師)

●歌碑は、滋賀県高島市鵜川 四十八体石仏群参道にある。

●歌をみていこう。

 

◆思乍 雖来ゝ不勝而 水尾埼 真長乃浦乎 又顧津

                                  (碁師 巻九 一七三三)

 

 

≪書き下し≫思ひつつ来(く)れど来(き)かねて三尾(みを)の崎(さき)真長(まなが)の浦をまたかへり見つ

 

(訳)心ひかれながらも寄らずに来たけれど、やっぱり素通りしかねて、三尾の崎や真長の浦のあたりを、またまた振り返って見てしまった。(伊藤 博 著 「万葉集 二」 角川ソフィア文庫より)

(注)碁師:碁氏出身の法師か。(同上)

(注)三尾の崎:琵琶湖の西岸、高島市の明神崎か。その北の岬とも。(同上)

 

 題詞は、「碁師歌二首」<碁師が歌二首>である。

 

 もう一首もみてみよう。

 

◆祖母山 霞棚引 左夜深而 吾舟将泊 等万里不知母

               (碁師 巻九 一七三二)

 

≪書き下し≫大葉山(おほばやま)霞(かすみ)たなびきさ夜(よ)更(ふ)けて我が舟泊(は)てむ泊(とま)り知らずも

 

(訳)大葉山には霞が立ち込め、夜もすっかり深くなったのに、私のこの舟はいったいどこに泊まるのか、そのあても知られない。(同上)

(注)大葉山:所在未詳

 ※この歌は、次の巻七 一二二四歌と同じである。古歌を利用したもの。(同上)

 

◆大葉山 霞蒙 狭夜深而 吾船将泊 停不知文

                (作者未詳 巻七 一二二四)

 

 鵜川四十八体石仏群については、高島市HP「観光・イベント」の項に次のように記されている。

「場所:JR近江高島駅から車約5分

 白鬚神社から北へ旧西近江路を約600m進むと、高さ1.6mに及ぶ石仏群が見られます。天文22年(1553年)観音寺城(安土町)城主佐々木六角義賢が亡き母の追善のため、対岸の地(高島市鵜川)に48体の阿弥陀如来座像を建立したものと言われています。様式は室町時代の作風を示す花崗岩質の阿弥陀如来坐像で、一体一体が個性溢れる表情をし、琵琶湖に向かって(観音寺城安土町の方角)静かに並座しています。48体あった石仏のうち13体が大津市坂本の慈眼堂に移され、2体は行方不明となっており、現在は33体が残っています。」

 

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四十八体石仏群

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四十八体石仏群説明案内板

 161号線を走ると白髭神社が左手に見えてくる。通り越ししばらく走ると、左手に「四十八体石仏群」の案内碑がある。入り口の分岐のところに「いにしえの街道 西近江路」の碑がある。少しゆるやかな上りになるが、300mほどの所に石仏群がある。万葉歌碑は、そこから161号線に出る少し手前、左側にある。こちらの分岐点にも「いにしえの街道 西近江路」の碑がある。

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「いにしえの街道・西近江路」碑

 

 

 近くの白鬚神社については、公益社団法人びわこビジターズビューローHP「滋賀・びわ湖観光情報」に詳しい説明があるので引用させていただく。

「JR近江高島駅の南約2kmにある神社。湖中に朱塗りの大鳥居があり、国道161号線をはさんで社殿が立つ。「白鬚さん」「明神さん」の名で広く親しまれ、また、「近江の厳島(いつくしま)」とも呼ばれています。

 社名のとおり、延命長寿・長生きの神様として知られ、また、縁結び・子授け・開運招福・学業成就・交通安全・航海安全など、人の営みごと、業ごとすべての導きの神でもあります。祭神は猿田彦命(さるたひこのみこと)。

 創建は約2000年前、近江最古といわれる歴史を誇り、現在の社殿は豊臣秀吉の遺命によって、その子秀頼が片桐且元(かたぎりかつもと)を奉行として造営したものです。本殿は正方形の明解な平面で、明治時代の拝殿再建の際、本殿に接続させたために現在のような複雑な屋根形式になっています。

 水平線に浮かぶ沖島を背景に、湖中の鳥居を通して漁船が行きかう風景が美しいです。また、9月5、6日の例大祭には、京都・大阪を始め全国から多くの参拝者があります。また境内には、明星派の歌人である与謝野鉄幹・晶子夫婦が神社を訪れた時に詠んだ歌を刻んだ歌碑があります。〈重文〉本殿」

 

 

(参考文献)

★「萬葉集」 鶴 久・森山 隆 編 (桜楓社)

★「万葉集 二」 伊藤 博 著 (角川ソフィア文庫

★「観光・イベント」(高島市HP)

★「滋賀・びわ湖観光情報」(公益社団法人びわこビジターズビューローHP)

★「高島 万葉歌碑めぐり(前編)ならびに(後編)」(琵琶レイクオーツカHP)

 

※20230504朝食関連記事削除、一部改訂