万葉集の歌碑めぐり

万葉歌碑をめぐり、歌の背景等を可能な限り時間的空間的に探索し、万葉集の万葉集たる所以に迫っていきたい!

万葉歌碑を訪ねて(その256)―草津市志那中町 惣社神社―

 

●歌は、「藤波の影なす海の底清み沈く石をも玉とぞ我が見る」である。

 

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滋賀県草津市惣社神社「惣社大藤の縁起」の碑の万葉集の歌(大伴家持

●歌碑ではないが、草津市志那中町 惣社神社の「惣社大藤の縁起」の碑の真ん中にこの歌が記されている。

 

 今回から、草津市東近江市シリーズである。

 惣社神社の大藤は、「志那三郷の藤」(惣社神社・三大神社・志那神社)と呼ばれている。毎年4月下旬から5月上旬にかけて花の穂が「地面に達するほど長く咲く。「惣社大藤の縁起」として天武帝の除病延命仏法興隆を祈念して藤が供えられたことに始まるとある。

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惣社神社鳥居と神社名碑

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惣社神社の大藤(5,6月には見事な花を咲かせる)

●歌をみてみよう。(滋賀県緑化推進会「巨木・名木のご紹介」より)

 

◆藤奈美乃 影成海之 底清美 之都久石乎毛 珠等曽吾見流

              (大伴家持 巻十九 四一九九)

 

≪書き下し≫藤波(ふぢなみ)の影なす海の底清(きよ)み沈(しづ)く石をも玉とぞ我が見る   

 

(訳)藤の花房が影を映している海、その水底までが清く澄んでいるので、沈んでいる石も、真珠だと私はみてしまう。(伊藤 博 著 「万葉集 四」 角川ソフィア文庫より)

(注)ふぢなみ【藤波・藤浪】名詞:藤の花房の風に揺れるさまを波に見立てていう語。転じて、藤および藤の花。

 

 題詞は、「十二日遊覧布勢水海船泊於多祜灣望見藤花各述懐作歌四首」<十二日に、布勢水海(ふせのみづうみ)に遊覧するに、多祜(たこ)の湾(うら)に舟泊(ふなどま)りす。藤の花を望み見て、おのもおのも懐(おもひ)を述べて作る歌四首>である。

(注)布勢の海:富山県氷見市にあった湖

(注)多祜(たこ)の湾(うら):布勢の海の東南部

 

 他の三首も見ておこう。

 

◆多祜乃浦能 底左倍尓保布 藤奈美乎 加射之氐将去 不見人之為

              (内蔵忌寸縄麻呂 巻十九 四二〇〇)

 

≪書き下し≫多祜の浦のさへにほふ藤波をかざして行かむ見ぬ人のため

 

(訳)多祜の浦の水底さえ照り輝くばかりの藤の花房、この花房を髪に挿して行こう。まだ見たことのない人のために。(同上)

 

◆伊佐左可尓 念而来之乎 多祜乃浦尓 開流藤見而 一夜可經

              (久米広綱 巻十九 四二〇一)

 

≪書き下し≫いささかに思ひて来(こ)しを多祜の浦に咲ける藤見て一夜(ひとよ)経(へ)ぬべし

 

(訳)ほんのかりそめのつもりでやって来たのに、多祜の浦に咲き映えている藤、この藤を見るままに、一晩過ごしてしまいそうだ。(同上)

 

◆藤奈美乎 借廬尓造 灣廻為流 人等波不知尓 海部等可見良牟

              (久米継麻呂 巻十九 四二〇二)

 

≪書き下し≫藤波(ふぢなみ)を仮廬(かりいほ)に作り浦廻(うらみ)する人とは知らに海人(あま)とか見らむ 

 

(訳)藤の花房、この花房を仮廬(かりいお)に(ふ)いて、浦めぐりしている人とは知らずに、土地の海人(あま)だと見られているのではなかろうか。(同上)

 

 大伴家持のこの歌碑の歌の氷見のフジについて、「しばしば布勢水海に遊覧した越中国守・大伴家持は、田子の浦周辺の藤の花の美しさを愛し、『藤波の 影成す海の 底清み しずく石をも 珠とぞ吾が見る』(万葉集め第19巻4199)と歌っており、氷見市下田子の田子浦藤波神社の後ろには、その歌が万葉仮名で刻まれた『大伴家持卿歌碑』が建っています。

 また室町時代に佐阿弥安清がつくった有名な謡曲『藤』も、田子の浦の藤がテーマです。」

(「田子浦藤波神社のフジ」きときとひみどっとこむHP 氷見市観光協会氷見市商工観光課)と書かれている。

 いつか、北陸の大伴家持の足跡をたどってみたいものである。

 

 

(参考文献)

★「萬葉集」 鶴 久・森山 隆 編 (桜楓社)

★「万葉集 四」 伊藤 博 著 (角川ソフィア文庫

★「巨木・名木のご紹介(滋賀県緑化推進会HP)

★「田子浦藤波神社のフジ」 (氷見市観光協会氷見市商工観光課 きときとひみどっとこむHP)

 

●本日のザ・モーニングセット&フルーツフルデザート

 サンドイッチは、レタス、トマトそして焼き豚である。デザートは、ミカンの輪切りに半切りを交互に並べ、中央には、バナナ、ブドウで取り囲み、中心部には赤と緑のブドウの切合わせを配した。

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11月12日のザ・モーニングセット

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11月12日のフルーツフルデザート