●歌は、「あぢさゐの八重咲くごとく八つ代にをいませ我が背子見つつ偲はむ」である。
●歌をみていこう。
この歌については、拙稿ブログ拙稿「万葉歌碑を訪ねて(その191)でも触れている。
◆安治佐為能 夜敝佐久其等久 夜都与尓乎 伊麻世和我勢故 美都ゝ思努波牟
(橘諸兄 巻二十 四四四八)
≪書き下し≫あぢさいの八重(やへ)咲くごとく八(や)つ代(よ)にをいませ我が背子(せこ)見つつ偲ばむ
(訳)あじさいが次々と色どりを変えてま新しく咲くように、幾年月ののちまでもお元気でいらっしゃい、あなた。あじさいをみるたびにあなたをお偲びしましょう。(伊藤 博 著 「万葉集 四」 角川ソフィア文庫より)
左注は、「右一首左大臣寄味狭藍花詠也」≪右の一首は、左大臣、味狭藍(あじさゐ)の花に寄せて詠(よ)む。>である。
題詞は、「同月十一日左大臣橘卿宴右大辨丹比國人真人之宅歌三首」<同じき月の十一日に、左大臣橘卿(たちばなのまへつきみ)、右大弁(うだいべん)丹比國人真人(たぢひのくにひとのまひと)が宅(たく)にして宴(うたげ)する歌三首>である。
他の二首もみてみよう。
◆和我夜度尓 佐家流奈弖之故 麻比波勢牟 由米波奈知流奈 伊也乎知尓左家
(丹比國人真人 巻二十 四四四六)
≪書き下し≫我がやどに咲けるなでしこ賄(まひ)はせむゆめ花散るやいやをちに咲け
(訳)我が家の庭に咲いているなでしこよ、贈り物はなんでもしよう。決して散るなよ。いよいよ若返り続けて咲くのだぞ。(伊藤 博 著 「万葉集 四」 角川ソフィア文庫より)
左注は、「右一首丹比國人真人壽左大臣歌」<右の一首は、丹比國人真人、左大臣を寿(ほ)ぐ歌>である。
◆麻比之都ゝ 伎美我於保世流 奈弖之故我 波奈乃未等波無 伎美奈良奈久尓
(橘諸兄 巻二十 四四四七)
≪書き下し≫賄(まひ)しつつ君が生(お)ほせるなでしこが花のみ問(と)はむ君ならなくに
(訳)贈り物をしてはあなたがたいせつに育てているなでしこ、あなたは、そのなでしこの花だけに問いかけるようなお方ではないはずです。(伊藤 博 著 「万葉集 四」 角川ソフィア文庫より)
(注)まひ【幣】依頼や謝礼のしるしとして神にささげたり、人に贈ったりする物。「まひなひ」とも。
万葉集のなかで「あぢさい」を詠んだ歌は、お馴染みの花にしては少なく二首だけである。
もう一首もみておこう。
◆事不問 木尚味狭藍 諸弟等之 練乃村戸二 所詐来
(大伴家持 巻四 七七三)
≪書き下し≫言(こと)」とはぬ木すらあぢさゐ諸弟(もろと)らが練(ね)りのむらとにあざむかえけり
(訳)口のきけない木にさえも、あじさいのように色の変わる信用のおけないやつがある。まして口八丁の諸弟らの練りに練った託宣(たくせん)の数々にのせられてしまったのはやむえないことだわい。(伊藤 博 著 「万葉集 一」 角川ソフィア文庫より)
(注)あぢさゐ:あじさいのように色の変わる信用のおけないものがある
(注)諸弟:使者の名か
(注)練のむらと:練に練った荘重な言葉の意か。「むらと」は「群詞」か。
七七三歌は、大伴家持が久邇の京より坂上大嬢に贈った五首のうちの一首である。
(参考文献)
★「萬葉集」 鶴 久・森山 隆 編 (桜楓社)
★「植物で見る万葉の世界」 國學院大學 萬葉の花の会 著 (同会 事務局)
●本日のザ・モーニングセット&フルーツフルデザート
サンドイッチは、サンチュと焼き豚である。三角に切り、縦横に並べた。デザートは、キウイとミカンの切合わせを真ん中にもってきた。周りは、バナナ、赤と緑のブドウの切合わせ等で加飾した。