万葉集の歌碑めぐり

万葉歌碑をめぐり、歌の背景等を可能な限り時間的空間的に探索し、万葉集の万葉集たる所以に迫っていきたい!

万葉歌碑を訪ねて(その275、276)―東近江市糠塚町 万葉の森船岡山(16)(17)―

―その275―

●歌は、「苗代の小水葱が花を衣に摺りなるるまにまにあぜか愛しけ」である。

 

f:id:tom101010:20191127212027j:plain

万葉の森船岡山万葉歌碑(16)(作者未詳)

●歌碑は、東近江市糠塚町 万葉の森船岡山(16)である。

 

●歌をみていこう。

 

◆奈波之呂乃 古奈宜我波奈乎 伎奴尓須里 奈流留麻尓末仁 安是可加奈思家

                (作者未詳 巻十四 三五七六)

 

≪書き下し≫苗代(なはしろ)の小水葱(こなぎ)が花を衣(きぬ)に摺(す)りなるるまにまにあぜか愛(かな)しけ

 

(訳)通し苗代に交じって咲く小水葱(こなぎ)の花、そんな花でも、着物に摺りつけ、着なれるにつれて、どうしてこうも肌合いにぴったりで手放し難いもんかね。(伊藤 博 著 「万葉集 三」 角川ソフィア文庫より)

(注)こなぎ【小水葱・小菜葱】① ミズアオイ科の一年草。水田などの水湿地に生える。ミズアオイ(ナギ)に似るが全体に小さく、花序が葉より短い。ササナギ。② ナギ(ミズアオイの古名)を親しんでいう称。 (weblio辞書 三省堂 大辞林 第三版)

(注)まにまに【随に】分類連語:①…に任せて。…のままに。▽他の人の意志や、物事の成り行きに従っての意。②…とともに。▽物事が進むにつれての意。

※参考名詞「まにま」に格助詞「に」の付いた語。「まにま」と同様、連体修飾語を受けて副詞的に用いられる。(weblio古語辞典 学研全訳古語辞典)

 

 この歌は、「比喩歌」三五七二~三五七六歌の一首。「小水葱(こなぎ)の花」は女性の譬えで、「衣に摺り」は肌を寄せ合うこと、「なるるまにまに」は、着慣れしてくると、すなわち、かの女性と慣れ親しんでくると、の意である。

 

 

―その276―

●歌は、「向つ峰の若桂の木下枝取り花待つい間に嘆きつるかも」である。

 

f:id:tom101010:20191127212249j:plain

万葉の森船岡山万葉歌碑(17)(作者未詳)

●歌碑は。東近江市糠塚町 万葉の森船岡山(17)である。

 

●歌をみていこう。

◆向岳之 若楓木 下枝取 花待伊間尓 嘆鶴鴨

             (作者未詳 巻七 一三五九)

 

≪書き下し≫向(むか)つ峰(ね)の若桂(わかかつら)の木下枝(しづえ)取り花待つい間(ま)に嘆きつるかも

 

(訳)向かいの高みの若桂の木、その下枝を払って花の咲くのを待っている間にも、待ち遠しさに思わず溜息(ためいき)が出てしまう。(伊藤 博 著 「万葉集 二」 角川ソフィア文庫より)

 

 題詞は、「寄木」<木に寄す>である。

  この歌にある「楓」は、こんにちの楓(かえで)を指すものではない。楓(かえで)はヲカツラといい、桂はメカツラといって対になっている。いずれも良い香りがするカツラの木のことである。カツラは、落葉大高木で初夏に葉よりも早く紅色の花を咲かせる。カツラの花期は4月。高木の割には小さな花なので注意しなければ気づかないのである。

 それだけに、カツラの下枝を取り払って、何とか世話をして、早く花が咲かないかと待ち望むわけである。

 上二句「向つ峰の若桂木」は、男が恋する少女を喩えているのである。この歌はカツラの木の美しさを歌ったものではなく、この歌の題詞にあるように、「寄木」<木に寄す>、すなわち、カツラの木によせて恋心を述べた比喩の歌である。この歌も、巻七の部立「譬喩歌」の中の一首である。

 花が咲くというのは、その少女が成人した女性になることをいう。だから、男の溜め息は、少女が成人するまで待ち遠しく、さらには、ほかの男のいろいろな妨害が入ることを恐れているのである。

 美しい幼い少女を、将来の妻にと心に決めていながら、一人前の女性になる間が待ち遠しいので、ついついため息が出てくる男の心情を綴った歌である。

 

 万葉集には、「カツラ」と詠われている歌は三首あるが、実際の植物である「カツラ」を詠った歌は、この一三五九歌のみであり。他の二首(六三二、二二〇二歌)は月に桂の巨木があるという中国の俗信に基づく想像上の植物を詠っている。

 この歌もみてみよう。

 

◆目二破見而 手二破不所取 月内之 楓如 妹乎奈何責

                (湯原王 巻四 六三二)

≪書き下し≫目には見て手には取らえぬ月の内(うち)の桂(かつら)のごとき妹をいかにせむ

 

(訳)目には見えても手には取らえられない月の内の桂の木のように、手を取って引き寄せることのできないあなた、ああどうしたらよかろうか。(伊藤 博 著 「万葉集 一」 角川ソフィア文庫より)

(注)月の内の桂の木:月に桂の巨木があるという中国の俗信に基づく。

 

◆黄葉為 時尓成良之 月人 楓枝乃 色付見者

              (作者未詳 巻十 二二〇二)

 

≪書き下し≫黄葉(もみち)する時になるらし月人(つきひと)の桂(かつら)の枝の色づく見れば

 

(訳)木の葉の色づく季節になったらしい。お月様のなかの桂の枝が色付いてきたところをみると。(伊藤 博 著 「万葉集 二」 角川ソフィア文庫より)

(注)月人の:月を人と見た語

 

 

(参考文献)

★「萬葉集」 鶴 久・森山 隆 編 (桜楓社)

★「万葉集 一」 伊藤 博 著 (角川ソフィア文庫

★「万葉集 二」 伊藤 博 著 (角川ソフィア文庫

★「植物で見る万葉の世界」 國學院大學 萬葉の花の会 著 (同会 事務局)

★「weblio辞書 三省堂 大辞林 第三版」

★「weblio古語辞典 学研全訳古語辞典」

 

●本日のザ・モーニングセット&フルーツフルデザート

 サンドイッチは、サニーレタスと焼き豚である。デザートは、小振りのみかんを丸ごと真ん中に配した。ミカンの周りは、柿、バナナ、ブドウで加飾した。

f:id:tom101010:20191127212716j:plain

11月27日のザ・モーニングセット

f:id:tom101010:20191127212758j:plain

11月27日のフルーツフルデザート