万葉集の歌碑めぐり

万葉歌碑をめぐり、歌の背景等を可能な限り時間的空間的に探索し、万葉集の万葉集たる所以に迫っていきたい!

万葉歌碑を訪ねて(その383,384,385)―奈良県宇陀市 赤埴甲公民館、奈良県大和郡山市 平城京西市跡、同 郡山大橋東詰南堤―

―その383―

●歌は、「大和の宇陀の真赤土のさ丹付かばそこもか人の我を言なさむ」である。

 

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宇陀市赤埴甲公民館万葉歌碑(作者未詳)

●歌碑は、奈良県宇陀市 赤埴甲公民館にある。

 

●この歌は、ブログ拙稿「万葉歌碑を訪ねて(381)」で紹介したところである。

歌を再掲載する。

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◆山跡之 宇陀乃真赤土 左丹著者 曽許裳香人之 吾乎言将成

(作者未詳 巻七 一三七六)

 

≪書き下し≫大和(やまと)の宇陀(うだ)の真赤土(まはに)のさ丹(に)付(つ)かばそこもか人の我(わ)を言(こと)なさむ

 

(訳)大和(やまと)の宇陀(うだ)の真埴の赤い土がついたならば、たったそれだけのことで、世間の人は私のことをとやかく言立てるのでしょうか。(伊藤 博 著 「万葉集 二」 角川ソフィア文庫より)

(注)はに【埴】名詞:赤黄色の粘土。瓦(かわら)や陶器の原料にしたり、衣にすりつけて模様を表したりする。(weblio古語辞典 学研全訳古語辞典)

(注)に【丹】名詞:赤土。また、赤色の顔料。赤い色。

   「さ丹付く」は赤面するたとえ。(学研)

(注)ことなす【言成す】他動詞:言葉に出す。あれこれ取りざたする。(学研)

 

  宇陀市万葉歌碑めぐりラストの歌碑である。歌碑の前に車が止まっており、正面から歌碑を映すことができなかったのが残念であった。

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赤埴甲公民館歌碑説明案内板と歌碑

 

―その384―

●歌は、「西の市にただ一人出でて目並べず買ひてし絹の商じこりかも」である。

 

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平城京西市跡万葉歌碑

●歌碑は、奈良県大和郡山市 平城京西市跡にある。

 

●歌をみていこう。

 

◆西市尓 但獨出而 眼不並 買師絹之 商自許里鴨

                (作者未詳 巻七 一二六四)

 

≪書き下し≫西(にし)の市(いち)にただ一人出(い)でて目並(めなら)べず買ひてし絹(きぬ)の商(あき)じこりかも

 

(訳)西の市にたったひとりで出かけて、見比べもせずに買ってしまった絹、その絹はたいへんな買い損ないであったよ。(伊藤 博 著 「万葉集 二」 角川ソフィア文庫より)

(注)めならぶ【目並ぶ】他動詞:並べて見比べる。一説に、多くの人の目を経る。(weblio古語辞典 学研全訳古語辞典)

(注)商(あき)じこり:買い損ない

 

平城京には、東市と西市があり、東市に関する歌碑は、杏町辰市神社境内にあり、歌は「東の市の植木の木足るまで逢はず久しみうべ恋ひにけり」(門部王 巻三 三一〇)である。この歌については、ブログ拙稿「万葉歌碑を訪ねて(その23)でふれている。

絹のような高額な商品に手を出し、まがい物か粗悪品をつかまされ嘆く歌も収録されているところが、万葉集万葉集たる所以のひとつであろう。

 

 東市に関する歌についてはブログ拙稿「万葉歌碑を訪ねて(その23改)で紹介している。(初期のブログであるのでタイトル写真には朝食の写真が掲載されていますが、「改」では、朝食の写真ならびに関連記事を削除し、一部改訂いたしております。ご容赦下さい。)

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平城京西市跡の碑と歌碑

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191228平城京西市跡説明案内板

 

 

―その385-

●歌は、「佐保川の清き河原に鳴く千鳥 かはづと二つ忘れかねつも」である。

 

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郡山大橋東詰め下佐保川堤防万葉歌碑

●歌碑は、奈良県大和郡山市 郡山大橋東詰南堤にある。

 

●歌をみてみよう。

 

◆佐保河之 清河原尓 鳴知鳥 河津跡二 忘金都毛

               (作者未詳 巻七 一一二三)

 

≪書き下し≫佐保川(さほがは)の清き川原(かはら)に鳴く千鳥(ちどり)かはづと二つ 忘れかねつも

 

(訳)佐保川の清らかな川原で鳴く千鳥、そして河鹿とこの二つのものは、忘れようにも忘れられない。(伊藤 博 著 「万葉集 二」 角川ソフィア文庫より)

 

 この歌については、ブログ拙稿「万葉歌碑を訪ねて(その9)」で紹介している。(初期のブログであるのでタイトル写真には朝食の写真が掲載されていますが、「改」では、朝食の写真ならびに関連記事を削除し、一部改訂いたしております。ご容赦下さい)

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(参考文献)

★「萬葉集」 鶴 久・森山 隆 編 (桜楓社)

★「万葉集 二」 伊藤 博 著 (角川ソフィア文庫

★「うだ記紀・万葉」(宇陀市HP)

★「市内の万葉歌碑ガイドマップ」 (宇陀市商工観光課)

★「weblio古語辞典 学研全訳古語辞典」