万葉集の歌碑めぐり

万葉歌碑をめぐり、歌の背景等を可能な限り時間的空間的に探索し、万葉集の万葉集たる所以に迫っていきたい!

万葉歌碑を訪ねて(その389)―大阪府交野市私部西 逢合橋左岸詰―

●歌は、「彦星と織女と今夜逢ふ天の川門に波立つなゆめ」である。

 

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交野市私部西 逢合橋左岸詰万葉歌碑(作者未詳)

●歌碑は、大阪府交野市私部西 逢合橋左岸詰にある。

 

●歌をみていこう。

 

◆牽牛 与織女 今夜相 天漢門尓 浪立勿謹

               (作者未詳 巻十 二〇四〇)

 

≪書き下し≫彦星(ひこぼし)と織女(たなばたつめ)と今夜(こよひ)逢ふ天(あま)の川門(かはと)に波立つなゆめ

 

(訳)彦星と織姫とが今宵逢う、その天の川の渡し場には、波よ、荒々しく立たないでおくれ。決して。(伊藤 博 著 「万葉集 二」 角川ソフィア文庫より)

(注)かはと【川門】名詞:両岸が迫って川幅が狭くなっている所。川の渡り場。(weblio古語辞典 学研全訳古語辞典)

(注)ゆめ【努・勤】副詞:①〔下に禁止・命令表現を伴って〕決して。必ず。②〔下に打消の語を伴って〕まったく。少しも。(学研)

 

この歌碑が、天野川の逢合橋の袂にあるのは出来過ぎである。

 

万葉集に詠われている、七夕に関する歌を巻の若い順にあげてみよう。

 

☆題詞は、「山上臣憶良七夕歌十二首」<山上臣憶良(やまのうへのおみおくら)が七夕(たなばた)の歌十二首>

  巻 八 一五一八~一五二九歌  12首

 

☆題詞は、「泉河邊間人宿祢作歌二首」<泉川(いづみがは)の辺(へ)にして間人宿禰(はしひとのすくね)が作る歌二首>の一首である。 

  巻 九 一六八六歌        1首

 

☆題詞は、「七夕歌一首幷短歌」<七夕(しちせき)の歌一首幷せて短歌>である。

  巻 九 一七六四~一七六五歌   2首

 

☆題詞は、「七夕」<七夕(しちせき>である。

  巻 十 一九九九~二〇九三歌  98首

 

  巻十三 三二六四歌        1首 

(注)「七夕」等の直接的な表記はないが、上三句(年渡 麻弖尓毛人者 有云乎)が「七夕の恋」を背景とした表現となっている。

 

  巻十三 三二九九歌        1首

(注)これも「七夕」等の直接的な表記はないが、「見渡尓 妹等者立志 是方尓 吾者立而 思虚 不安國・・・」本来は七夕の歌と思われる。

 

 ☆題詞は、「七夕歌一首」<七夕(しちせき)の歌一首」である。左注は、「右柿本朝臣人麻呂歌」<右は柿本朝臣人麻呂が歌>である。

  巻十五 三六一一歌        1首

 

 ☆題詞は、「七夕仰觀天漢各陳所思作歌三首」<七夕(しちせき)に天漢(あまのがは)を仰ぎ観(み)て、おのもおのも所思(おもひ)を陳(の)べて作る歌三首>である。

  巻十五 三六五六~三六五八歌   3首

 

☆題詞は、「十年七月七日之夜獨仰天漢聊述懐一首」<十年の七月の七日の夜(よ)に、独(ひと)り天漢(あまのがは)を仰ぎて、いささかに懐(おもひ)を述ぶる一首>である。

  巻十七 三九〇〇歌        1首

 

☆題詞は、「七夕歌一首幷短歌」<七夕(しちせき)の歌一首幷(あは)せて短歌>である。 左注は、「右七月七日仰見天漢大伴宿祢家持作」<右は、七月の七日に、仰見天漢(あまのがは)を仰(あふ)ぎ見て、大伴宿禰家持作る>である。

  巻十八 四一二五~四一二七歌   3首

 

☆題詞は、「豫作七夕歌一首」<予(あらかじ)め作る七夕(しちせき)の歌一首>である。

  巻十九 四一六三         1首

 

☆題詞は、「七夕歌八首」<七夕(しちせき)の歌八首>である。左注は、「右大伴宿祢家持獨仰天漢作之」<右は、大伴宿禰家持、独(ひと)り天漢(あまのがは)を仰ぎて作る>である。

  巻二十 四三〇六~四三一三歌   8首

 

以上、全部で、132首が収録されている。

 

 

(参考文献)

★「萬葉集」 鶴 久・森山 隆 編 (桜楓社)

★「万葉集 二」 伊藤 博 著 (角川ソフィア文庫

★「万葉集 三」 伊藤 博 著 (角川ソフィア文庫

★「万葉集 四」 伊藤 博 著 (角川ソフィア文庫

★「交野市HP」

★「weblio古語辞典 学研全訳古語辞典」