万葉集の歌碑めぐり

万葉歌碑をめぐり、歌の背景等を可能な限り時間的空間的に探索し、万葉集の万葉集たる所以に迫っていきたい!

万葉歌碑を訪ねて(その403)―長浜市木之本町 長浜市役所・木之本支所―万葉集 巻八 一五三三

●歌は、「伊香山野辺に咲きたる萩見れば君が家なる尾花し思ほゆ」である。

 

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長浜市役所・木之本支所万葉歌碑(笠金村)

●歌碑は、長浜市木之本町 長浜市役所・木之本支所にある。

 

●歌をみていこう。

 

◆伊香山 野邊尓開者 芽子見者 公之家有 尾花之所念

                                   (笠金村    巻八 一五三三)

 

≪書き下し≫伊香山(いかごやま)野辺(のへ)に咲きたる萩見れば君が家なる尾花(をばな)し思ほゆ

 

(訳)伊香山、この山の野辺に咲いている萩を見ると、あなた様のお屋敷の尾花が思い出されます。(伊藤 博 著 「万葉集 二」 角川ソフィア文庫より)

 

題詞は、「笠朝臣金村伊香山作歌二首」<笠朝臣金村、伊香山(いかごやま)にして作る歌二首>である。

 

もう一首もみてみよう。

 

草枕 客行人毛 往觸者 尓保比奴倍久毛 開流芽子香聞   

               (笠金村 巻八 一五三二)

 

≪書き下し≫草枕(くさまくら)、旅行く人も行き触(ふ)ればにほひぬべくも咲ける萩(はぎ)かも

 

(訳)旅行く人が行ずりに触れでもしたら、着物に色が染まってしまうばかりに、咲き乱れている萩の花よ。(同上)

(注)にほふ【匂ふ】自動詞:①美しく咲いている。美しく映える。②美しく染まる。(草木などの色に)染まる。③快く香る。香が漂う。④美しさがあふれている。美しさが輝いている。⑤恩を受ける。おかげをこうむる。 ここでは②の意。(weblio古語辞典 学研全訳古語辞典)

 

笠金村については、「コトバンク (ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典)」に次のように記されている。「奈良時代歌人。『万葉集』には彼の名を明記した歌のほか,『笠朝臣金村歌集出』『笠朝臣金村之歌中出』と記されたものもあり,いずれも金村の作と認められている。これらによると,霊亀1 (715) 年から天平5 (733) 年にかけて作歌活動をしており,元正,聖武両朝に宮廷歌人のような立場で仕え,身分は低かったらしい。長歌 11首,短歌 34首を残す。行幸従駕の作が大部分で,形式,技巧は洗練されているが,独創性は乏しい。」

 

▼鹽津神社➡長浜市役所・木之本支所

鹽津神社から、国道303号線を東に、約10分で長浜市役所・木之本支所に到着。駐車場に車を止める。建物と駐車場の間に歌碑があった。また歌碑の説明の石碑もあった。

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歌碑の説明碑

説明碑には、「伊香山は、賤ヶ岳の南峯といわれます。賤ヶ岳の頂上に立つと日本海をへだてた山また山の大きな難関が行く手に見えます。この山路で、咲き乱れる萩に友の家の尾花をを思い出しながら旅路をいそいだのでしょう。」と書かれていた。

 

琵琶湖一周は約200kmであるので、ほぼ半周したことになる。

 

 

(参考文献)

★「萬葉集」 鶴 久・森山 隆 編 (桜楓社)

★「万葉集 二」 伊藤 博 著 (角川ソフィア文庫

★「weblio古語辞典 学研全訳古語辞典」

★「コトバンク ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典」