●歌は、「白真弓斐太の細江の菅鳥の妹に恋ふれか寐を寝かねつる」である。
●歌碑は、彦根市肥田町 宇曽川堤防にある。
●歌をみていこう。
◆白檀 斐太乃細江之 菅鳥乃 妹尓戀哉 寐宿金鶴
(作者未詳 巻十二 三〇九二)
≪書き下し≫白真弓(しらまゆみ)斐太(ひだ)の細江(ほそえ)の菅鳥(すがとり)の妹(いも)に恋ふれか寐(い)を寝かねつる
(訳)斐太の細江に棲む菅鳥が妻を求めて鳴くように、あの子に恋い焦がれているせいか、なかなか寝つかれないでいる。(伊藤 博 著 「万葉集 三」 角川ソフィア文庫より)
(注)しらまゆみ【白真弓・白檀弓】名詞:まゆみの木で作った、白木のままの弓。
しらまゆみ【白真弓・白檀弓】分類枕詞:弓を張る・引く・射ることから、同音の
「はる」「ひく」「いる」などにかかる。(weblio古語辞典 学研全訳古語辞典)
※この歌では、「斐太(ひだ)」に掛かっているが不明。
(注)すがどり【菅鳥】:鳥の名。オシドリとも,一説に「管鳥(つつどり)」の誤りかともいう。 (weblio辞書 三省堂 大辞林 第三版)
(注)いもねられず 【寝も寝られず】分類連語:眠ることもできない。 ※なりたち名詞「い(寝)」+係助詞「も」+動詞「ぬ(寝)」の未然形+可能の助動詞「らる」の未然形+打消の助動詞「ず」
(注)かぬ 接尾語 〔動詞の連用形に付いて〕:①(…することが)できない。②(…することに)耐えられない。
肥田町のこの歌碑の近くに戦国時代、高野瀬氏によって築かれたという平城の肥田城跡がある。万葉歌碑との時代の乖離ははなはだしい。ここ、宇曽川の堤防に歌碑が建てられているが、「斐太乃細江」の「斐太」を肥田町としたからであろう。しかし、あまりにも説明資料がなく、さみしいかぎりである。
◆◆◆生駒市万葉歌碑めぐり◆◆◆
以前、生駒市俵口町の生駒山麓公園の歌碑を見に行ったが、同公園には、生駒市内の六か所の万葉歌碑を紹介する形で歌碑が作られていた。その歌碑には、当該歌碑の所在地が記されていた。そのうち3箇所は回り切れていなかったので、今日(3月9日)巡ろうと思いたった。新型コロナウィルス騒動で、なんとなく気持ちが落ち着かないが、人が集まる所でもないので、それでも念のためマスクを着け、ミニドライブに出かけた。
生駒市西畑町国道308号線暗峠(くらがりとうげ)➡同小瀬町大瀬中学校➡同高山町高山竹林園の3箇所である。
- 西畑町国道308号線暗峠
事前準備で、暗峠の歌碑は、ストリートビューで調べるもなかなか見つからない。奈良女子大の万葉歌碑データベースを参考に、所在地を絞り込み、再度ストリートビューをかける。ようやくターゲットを見つける。バス停「西畑町入口」の近くにあることが分かった。またすぐ近くに手打ちうどんの店がある。バスの時刻表を見ると、一日4往復しかない。
国道308号線は、昔から「酷道308」と言われていたが、確かになかなかの道である。慎重にハンドルを握る。しかし、以前から比べるとかなり改良されているように思った。
ようやく現地に到着。じっくりと眺める。すぐ横には「くらがり峠 旅行く芭蕉」の碑もあった。
●大瀬中学校
次は大瀬中学校である。今度は峠を下って行くので上りの時よりも坂の急さがはっきりわかる。坂の先が視界から消えることがしばしば。すれ違いもやっとである。
中学校はコロナの影響で臨時休校になっているので、人影も見えない。平成2年に建てられた「この上すぐ万葉歌碑」の案内碑が、万葉歌碑に誘ってくれている。
●高山竹林園
3箇所目は竹林園である。国道163号線「高山大橋」交差点から北へ、約1kmの所である。途中、「茶筅の町 高山」の看板が迎えてくれる。
駐車場に止め、園内をぶらつく。資料館の前に園内地図があり、万葉歌碑の位置が記されていた。楽勝であった。
園内の広場には、茶筅つくり用の竹の「寒干し」が行われていた。
歌の解説等は後日のブログで行いたい。
(参考文献)
★「萬葉集」 鶴 久・森山 隆 編 (桜楓社)
★「weblio古語辞典 学研全訳古語辞典」