万葉集の歌碑めぐり

万葉歌碑をめぐり、歌の背景等を可能な限り時間的空間的に探索し、万葉集の万葉集たる所以に迫っていきたい!

万葉歌碑を訪ねて(その450)―東大阪市東豊浦町 枚岡公園―万葉集 巻十五 三五八九 

●歌は、「夕さればひぐらし来鳴く生駒山越えてぞ我が来る妹が目を欲り」である。

 

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東大阪市東豊浦町 枚岡公園万葉歌碑(秦間満)

●歌碑は、東大阪市東豊浦町 枚岡公園にある。

 

●歌をみていこう。

この歌は、ブログ拙稿「万葉歌碑を訪ねて(その448)」と同じである。

 

由布佐礼婆 比具良之伎奈久 伊故麻山 古延弖曽安我久流 伊毛我目乎保里

             (秦間満 巻十五 三五八九)

 

≪書き下し≫夕(ゆふ)さればひぐらし来(き)鳴(な)く生駒山(いこまやま)越えてぞ我(あ)が来る妹(いも)が目を欲(ほ)り

 

(訳)夕方になると、ひぐらしが来て鳴くものさびしい生駒山、生駒の山を越えて私は大和へと急いでいる。もう一目あの子に逢いたくて。(伊藤 博 著 「万葉集 三」 角川ソフィア文庫より)

(注)めをほる【目を欲る】:連語 見たい、会いたい。(weblio古語辞典 学研全訳古語辞典)

 

「ひらおかの森こうえん」(枚岡公園HP)によると、「昭和13年に開設され、額田地区および枚岡地区の2つの尾根からなり、その中央部を豊浦渓谷が流下している自然を生かした公園で、面積が約43.4haです。昭和33年に金剛生駒国定公園が指定されるにあたり枚岡公園の全地域も国定公園地域に含められました。桜の名所としても有名です。」とある。

 国道170号線(大阪外環状線)「新町」交差点から府道702号線を東に進む。その先は国道308号線である。酷道の洗礼を受ける。狭い、急坂、カーブの連続。ようやく枚岡公園の駐車場に到着。案内図を見ると広大な公園である。たった1個の万葉歌碑をどうやって探すのかが課題である。しばらく歩くと売店があった。店のおばさんに万葉歌碑の場所を尋ねる。わからないが、管理事務所に行って聞いてみたらとアドバイスをもらう。来た道を引き返す感じで振り出しに戻る。

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枚岡公園入り口付近からの遠望

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枚岡公園案内図

 管理事務所で、公園の案内地図をもらい、場所を教えてもらう。松尾芭蕉の句碑の近くで、休憩所があるが、現在は解体工事中であり、ひょっとしたら近づけないかもしれないとのことであった。

 とにかく行ってみよう。歌碑を求めて、そこそこきつい上り道を歩く。国道308号線にそった一本上の道である。しばらく行くと、足下に解体工事現場が見えた。芭蕉の句碑に場所とほぼ合致する。国道308号線沿いに建てられていたのである。引き返す感じで308号線に下りて行く。ようやくたどり着く。

 

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松尾芭蕉句碑

 句碑には、松尾芭蕉が最後の旅の途中、暗峠を越えた時に読んだ「菊の香にくらがり登る節句かな」の一句が刻まれていた。この句碑は、明治時代に再建されたそうである。句碑の手前に目指す歌碑があった。歌碑といっても、三角柱を円柱で挟んだ積み木のような形で、三角柱の三面の一つに、三五八九歌と芭蕉の句が刻まれているのである。

 

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国道308号線

 

(参考文献)

★「萬葉集」 鶴 久・森山 隆 編 (桜楓社)

★「万葉集 三」 伊藤 博 著 (角川ソフィア文庫

★「ひらおかの森こうえん」(枚岡公園HP)

★「weblio古語辞典 学研全訳古語辞典」