万葉集の歌碑めぐり

万葉歌碑をめぐり、歌の背景等を可能な限り時間的空間的に探索し、万葉集の万葉集たる所以に迫っていきたい!

万葉歌碑を訪ねて(その750)―海南市名高 海南駅南高架下―万葉集 巻十一 二七三〇

●歌は、「紀伊の海の名高の浦に寄する波音高きかも逢はぬ子ゆゑに」である。

 

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海南市名高 海南駅南高架下万葉歌碑(作者未詳)

●歌碑は、海南市名高 海南駅南高架下にある。

 

●歌をみていこう。

 

◆木海之 名高之浦尓 依浪 音高鳧 不相子故尓

               (作者未詳 巻十一 二七三〇)

 

≪書き下し≫紀伊の海(きのうみ)の名高(なたか)の浦に寄する波音高(おとだか)きかも逢はぬ子ゆゑに

 

(訳)紀伊の海の名高の浦に寄せる波、その音が高いように、何と噂が高いことか。逢ってもいないあの子なのに。(伊藤 博 著 「万葉集 三」 角川ソフィア文庫より)

(注)上三句は序。「音高き」を起こす。

(注)かも 終助詞:《接続》体言や活用語の連体形などに付く。①〔感動・詠嘆〕…ことよ。…だなあ。②〔詠嘆を含んだ疑問〕…かなあ。③〔詠嘆を含んだ反語〕…だろうか、いや…ではない。▽形式名詞「もの」に付いた「ものかも」、助動詞「む」の已然形「め」に付いた「めかも」の形で。 ※参考 上代に用いられ、中古以降は「かな」。

(注)ゆゑ【故】名詞:〔体言や活用語の連体形に付いて〕①…によって。…のために。▽順接的に原因・理由を表す。②…なのに。▽逆接的に原因・理由を表す。(weblio古語辞典 学研全訳古語辞典) ここでは②の意

 

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歌の解説案内板

 

 海南駅前、西口ロータリーの歌碑の次は、先達のブログ等のキーワード「駅南高架下」等を手掛かりにメインの東西通路や北と南の通路を旋回する。しかし見つからない。改札前の売店で買い物ついでに聞いてみる。駅西口から右手にロータリーを見ながら大きな道路(国道370号線)との交差点まで進むと、その手前、高架下にあると教えてもらう。

 駅高架にそって交差点を目指す。手前に立派な歌碑が建てられている。歌の解説案内板もそろっている。

 

 駐車場の車に戻り、最後の目的地である市役所を目指す。市役所までは約五分のドライブである。少し街を外れた郊外といったイメージの高台にある。駐車場に車を停め、歌碑を探す。あちこち探すが見つからない。そんなはずはないと、スマホで先達の歌碑の写真をよーく見てみるとどうも建屋の雰囲気が違うようである。目の前の建屋は新しい感じがする。

新庁舎に移ったのではと、検索してみると、2017年11月にこの地に移転したとある。ないはずである。

 

 総合受付に行き、歌碑がどこに移転されたかを尋ねることに。しかし受付ではわからず、関係部署にあたってもらえた。ところが、海南医療センターの歌碑と勘違いしているのか、そこを教えてくれる。その歌碑は見て来たので頭に入っていたので、旧市役所にあった一三九六の歌碑と改めてきいたが、結局わからずじまいであった。歌碑は市役所が管理していないのだろう。

 

 諦めきれず、駐車場で「旧市役所前の万葉歌碑の移転先」等で、検索するもヒットしない。ようやく手掛かりとなりそうな写真を一枚見つける。歌碑の形は同じである。その写真には歌の説明案内板も写っている。祈るような気持ちで拡大してみてみたが、「・・・新庁舎建設にともないこの地に移設したものである」とある、しかし肝心の「この地」については何も書かれていない。結局見つけることができなかった。

 時間も時間であったのであきらめて帰路についたのである。

 

 

 

(参考文献)

★「萬葉集」 鶴 久・森山 隆 編 (桜楓社)

★「万葉集 三」 伊藤 博 著 (角川ソフィア文庫

★「weblio古語辞典 学研全訳古語辞典」

★「海南市役所HP」