万葉集の歌碑めぐり

万葉歌碑をめぐり、歌の背景等を可能な限り時間的空間的に探索し、万葉集の万葉集たる所以に迫っていきたい!

万葉歌碑を訪ねて(その848,849)― 高岡市城光寺 旧二上山郷土資料館、高岡市二上山山頂 家持像台座―万葉集 巻十七 三九八七

 

●歌は、どちらも「玉櫛笥二上山に鳴く鳥の声の恋しき時は来にけり」である。

 

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二上山郷土資料館万葉歌碑(大伴家持

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二上山山頂大伴家持像台座万葉歌碑(大伴家持

 

●歌碑は「その848」が、高岡市城光寺 旧二上山郷土資料館にある。そして「その849」は、高岡市二上山山頂 家持像台座にある。

 

●歌をみていこう。

この歌は、「二上山の賦」の短歌二首の一つであり、ブログ拙稿「万葉歌碑を訪ねて(その824)」で紹介している。

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tom101010.hatenablog.com

 

◆多麻久之氣 敷多我美也麻尓 鳴鳥能 許恵乃孤悲思吉 登岐波伎尓家里

               (大伴家持 巻十七 三九八七)

 

≪書き下し≫玉櫛笥(たまくしげ)二上山に鳴く鳥の声の恋(こひ)しき時は来にけり

 

(訳)玉櫛笥二上山に鳴く鳥の、その声の慕わしくならぬ季節、待ち望んだ時は、今ここにとうとうやって来た。(「万葉集 四」 伊藤 博 著 角川ソフィア文庫より)

(注)たまくしげ【玉櫛笥・玉匣】名詞:櫛(くし)などの化粧道具を入れる美しい箱。 ※「たま」は接頭語。歌語。

たまくしげ【玉櫛笥・玉匣】分類枕詞:くしげを開けることから「あく」に、くしげにはふたがあることから「二(ふた)」「二上山」「二見」に、ふたをして覆うことから「覆ふ」に、身があることから、「三諸(みもろ)・(みむろ)」「三室戸(みむろと)」に、箱であることから「箱」などにかかる。(weblio古語辞典 学研全訳古語辞典)

 

二上山山頂に至る二上山万葉ラインのほぼ真ん中あたりに「旧二上山郷土資料館」がある。同資料館は平成25年に閉館になったという。

高岡市万葉歴史館HPに次のように書かれている。

二上山郷土資料館は昭和44年(1969)に開館しました。二上山の地層・地質に関する資料や、鳥類・蝶・貝類などの剥製や化石、二上山のパノラマ模型などのほか、奈良時代大伴家持二上山を見事に詠んでいたことから、『万葉集』に関わる絵や書なども収蔵・展示し、多くの人たちに親しまれた博物館でした。

平成25年(2013)に惜しまれつつ閉館しましたが、資料の一部を高岡市立博物館が引き継ぎ、また万葉集関係資料は昨年(2019)、当館が受け継ぎました。(後略)」

 

廃屋となった博物館の前の駐車場であったと思しき空き地の奥に、寂しそうに歌碑は佇んでいた。

歌碑の建てられているところは、土が掘り返されたような感じで写真を撮るための足場を決めにくい状態であった。

いずれどこかに移されるのであろう。

 

次は、山頂である。

途中展望台のようなものがあった。車を止め周りを探したが、歌碑らしいものが見当たらない。車に戻ろうとすると、先に車を止めていた3人のご婦人たちが、わが車のナンバープレートを見て、「わざわざ京都から・・・」とか会話しているのが聞こえて来る。

 

 そこからしばらく行くと、山を少し登ったところに大伴家持像が確認できた。

台座の歌のプレートもカメラに収めた。

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二上山山頂大伴家持

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大伴家持二上山」解説案内板(二上山の賦と短歌)



 

 山頂と言う言葉が頭に残っていたので、銅像のところから上って行かないともう一つの歌碑にたどり着けないと思い込んでしまっていた。あとで調べると「万葉植物園」であることが判明した。調査不足と現地でのマップの確認を怠ったせいである。

諦めたのに諦めきれない思いが湧いて来た。また一つ宿題を残してしまった。

 

 次は、山を下って、「二上山まなび交流館」である。

 交流館に到着するが、正面玄関の入口の上に垂れ幕が。

そこには、「永い間ご利用いただきありがとうございました。二上まなび交流館」と書かれている。

 少し奥まったところに車を止める。

 建屋と建屋の間から庭らしきものが見える。建屋には、張り紙がしてある。「閉館となりました。トイレをご利用される方はご連絡下さい」といった文言である。

 庭らしきところは、BBQなどできるような施設前の広場である。植栽もなされているのでぶらついてみる。施設の要所々々は、フェンスで閉鎖されており、その広場からは外へは行けないようになっている。静まり返っており、歌碑どころではない。

折角来たのに・・・。

 

 貼り紙から、どなたかはいらっしゃるはずと、ダメもとでインターフォンを押す。

 係の女性の方が出てこられた。歌碑を見に来た旨を話す。

 一旦、中に戻られ確認をされたようである。

嬉しいことに、OKがでたのである。

 玄関奥のところから庭に下りられるとのことで、バタバタされているのにそこまで案内していただいた。館内の道具や備品をどこかに移動する作業をしておられたのである。

 申し訳ない気持ちで、庭に下りて行き、歌碑やプレートの写真を撮らせていただいた。

 

 歌碑の歌の解説は次号で行います。

 

 

 

(参考文献)

★「萬葉集」 鶴 久・森山 隆 編 (桜楓社)

★「万葉集 四」 伊藤 博 著 (角川ソフィア文庫

★「weblio古語辞典 学研全訳古語辞典」

★「高岡市万葉歴史館」

★「万葉歌碑めぐりマップ」 (高岡地区広域圏事務組合)