万葉集の歌碑めぐり

万葉歌碑をめぐり、歌の背景等を可能な限り時間的空間的に探索し、万葉集の万葉集たる所以に迫っていきたい!

万葉歌碑を訪ねて(その1350裏)-小矢部市蓮沼 万葉公園(源平ライン)(5裏)―万葉集 巻十九 四二五〇

●歌は、「しなざかる越に五年住み住みて立ち別れまく惜しき宵かも」である。

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小矢部市蓮沼 万葉公園(源平ライン)(5裏)万葉歌碑(大伴家持))

●歌碑は、小矢部市蓮沼 万葉公園(源平ライン)(5裏)にある。

 

●歌をみていこう。

 

◆之奈謝可流 越尓五箇年 住ゝ而 立別麻久 惜初夜可毛

      (大伴家持 巻十九 四二五〇)

 

≪書き下し≫しなざかる越に五年住み住みて立ち別れまく惜しき宵かも

 

(訳)都を離れて山野層々たる越の国に、五年ものあいだ住み続けて、今宵かぎりに立ち別れゆかねばならぬと思うと、名残惜しい。(「万葉集 四」 伊藤 博 著 角川ソフィア文庫より)

(注) しなざかる 分類枕詞:地名「越(こし)(=北陸地方)」にかかる。語義・かかる理由未詳。(weblio古語辞典 学研全訳古語辞典) 

 

枕詞「しなざかる」いついて、伊藤 博氏は、「万葉集 四(角川ソフィア文庫)」の脚注で「階段状に坂が重なって遠い意。家持の造語か。」と書いておられる。

 

 この歌についてはブログ拙稿「万葉歌碑を訪ねて(その820)」で紹介している。

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「しなざかる」については、「万葉神事語事典」(國學院大學デジタルミュージアム)に次のように書かれている。

「枕詞。地名、越(こし)にかかる。意味・かかり方は未詳。『しなざかる』は万葉集では『大君の 任けのまにまに しなざかる(之奈射加流) 越を治めに 出でて来し ますら我す』(17-3969)の家持作歌が初出で、他に家持に3例(18-4071、19-4154、19-4250)坂上郎女作歌に1例(19-4220)のみ用いられている枕詞である。『しな』は階段・階層などの意があり、『さかる』は離れる・遠ざかるの意であろうから、階層が離れているといった意。また越が多くの坂を越えた遠い土地の意からともいわれる。『天ざかる』『鄙ざかる』などの連想から家持が作った枕詞であろうか。初出の3969は家持と池主のやりとりの1首であるが、そこでは頻繁に『天離る』が用いられており、都を高しとし、鄙を低しとする考え方から、天と鄙の関係を、越に家持が転換させたと考えられる。」

 

 上記の歌をおってみよう。

 

◆於保吉民能 麻氣乃麻尓ゝゝ 之奈射加流 故之乎袁佐米尓 伊泥氐許之 麻須良和礼須良 余能奈可乃 都祢之奈家礼婆 宇知奈妣伎 登許尓己伊布之 伊多家苦乃 日異麻世婆 可奈之家口 許己尓思出 伊良奈家久 曽許尓念出 奈氣久蘇良 夜須家奈久尓 於母布蘇良 久流之伎母能乎 安之比紀能 夜麻伎敝奈里氏 多麻保許乃 美知能等保家婆 間使毛 遣縁毛奈美 於母保之吉 許等毛可欲波受 多麻伎波流 伊能知乎之家登 勢牟須辨能 多騰吉乎之良尓 隠居而 念奈氣加比 奈具佐牟流 許己呂波奈之尓 春花乃 佐家流左加里尓 於毛敷度知 多乎里可射佐受 波流乃野能 之氣美豆妣久ゝ 鸎 音太尓伎加受 乎登賣良我 春菜都麻須等 久礼奈為能 赤裳乃須蘇能 波流佐米尓 ゝ保比々豆知弖 加欲敷良牟 時盛乎 伊多豆良尓 須具之夜里都礼 思努波勢流 君之心乎 宇流波之美 此夜須我浪尓 伊母祢受尓 今日毛之賣良尓 孤悲都追曽乎流

     (大伴家持 巻十七 三九六九)

 

≪書き下し≫大君(おほきみ)の 任(ま)けのまにまに しなざかる 越(こし)を治(おさ)めに 出(い)でて来(こ)し ますら我れすら 世間(よのなか)の 常しなければ うち靡き 床(とこ)に臥(こ)い伏(ふ)し 痛けくの 日に異(け)に増せば 悲しけく ここに思ひ出(で) いらなけく そこに思ひ出(で) 嘆くそら 安けなくに 思ふそら 苦しきものを あしひきの 山きへなりて 玉桙(たまほこ)の 道の遠けば 間使(まつかひ)も 遣(や)るよしもなみ 思ほしき 言(こと)も通(かよ)はず たまきはる 命(いのち)惜(を)しけど せむすべの たどきを知らに 隠(こも)り居(ゐ)て 思ひ嘆かひ 慰(なぐさ)むる 心はなしに 春花(はるはな)の 咲ける盛りに 思ふどち 手折(たを)りかざさず 春の野の 茂(しげ)み飛び潜(く)く うぐひすの 声だに聞かず 娘女(をとめ)らが 春菜(はるな)摘(つ)ますと 紅(くれなゐ)の 赤裳(あかも)の裾(すそ)の 春雨(はるさめ)に にほひひづちて 通(かよ)ふらむ 時の盛りを いたづらに 過ぐし遣(や)りつれ 偲はせる 君が心を うるはしみ この夜(よ)すがらに 寐(ゐ)も寝ずに 今日(けふ)もしめらに 恋ひつつぞ居(を)る。

 

(訳)大君の仰せのままに、幾重にも山坂を重ね隔てた越(こし)の国を治めにやって来た、一かどの官人であるはずの私、その私としたことが、人の世は無常なものだから、ぐったりと病の床に横たわる身となって、苦しみが日に日につのるばかりなので、悲しいことをあれこれ思い出し、つらいことをいろいろ思い出しては、嘆く空しさは休まることとてなく、思う空しさは苦しいことばかりなのに、重なる山々に隔てられて都への道が遠いものだから、こまごまと使いをやる手だてもなくて、言いたいことも伝えられないまま・・・、さりとて命は惜しいけれども、どうしたらよいのか手がかりもわからず、家(うち)に引き籠(こも)って思い悩んでは溜息(ためいき)つき、気晴らしになることは何にもないままに、春の花がまっ盛りだというのに、気心合った友と手折ってかざすこともなく、春の野の茂みを飛びくぐって鳴く鶯の声さえ聞くこともなく、娘子たちが春菜を摘まれるとて、紅の赤裳の裾が春雨に濡(ぬ)れてひときわ照り映(は)えながら往き来している、春たけなわの時、こんな佳き季節をただ空しくやり過ごしてしまって・・・。こうして心をかけて下さるあなたのお気持ちがありがたく、この夜も世通し眠りもせず、明けた今日も日がな一日、お逢いしたいと思いつづけています。(同上)

(注)しなざかる 分類枕詞:地名「越(こし)(=北陸地方)」にかかる。語義・かかる理由未詳。(学研)階段状に坂が重なって遠い意、家持の造語か。

(注)痛けく、悲しけく、いらなけく:痛し、悲し、いらなしの「ク語法」

(注の注)ク語法:活用語の語尾に「く(らく)」が付いて、全体が名詞化される語法。(コトバンク デジタル大辞泉

(注)そら【空】名詞:気持ち。心地。▽多く打消の語を伴い、不安・空虚な心の状態を表す。(学研)

(注)山きへなりて:山が隔てとなって遠い道のりでもないのに。「き」は不明。

(注)たどき【方便】名詞:「たづき」に同じ。 ※上代語。(学研)>たづき【方便】名詞:①手段。手がかり。方法。②ようす。状態。見当。 ⇒参考 古くは「たどき」ともいった。中世には「たつき」と清音にもなった。(学研)

(注)おもふどち【思ふどち】名詞:気の合う者同士。仲間。(学研)

(注)ひづつ【漬つ】自動詞:ぬれる。泥でよごれる。(学研) にほひひづちて>濡れて色が一層映えるさま。

(注)うるはしみ:ありがたく思い

(注)よすがら【夜すがら】名詞副詞:夜じゅう。夜通し。 ※「すがら」は接尾語。[反対語] 日(ひ)すがら。(学研)

(注)しみらに【繁みらに】副詞:ひまなく連続して。一日中。「しめらに」とも。 ⇒参考「夜はすがらに」に対して、常に「昼はしみらに」の形で使う。(学研)

 

 この歌は、家持が病に倒れた時に池主と書簡や歌のやりとりをした時の歌である。書簡と長歌短歌の構成でなっており、この歌についてはブログ拙稿「万葉歌碑を訪ねて(その854)」で紹介している。

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之奈射可流 故之能吉美良等 可久之許曽 楊奈疑可豆良枳 多努之久安蘇婆米

      (大伴家持 巻十八 四〇七一)

 

≪書き下し≫しなざかる越の君らとかくしこそ柳かづらき楽しく遊ばめ

 

(訳)山野層々として都から遠く隔たったこの越の国のあなた方と、これからもこのように柳を縵(かずら)にして楽しく遊ぼう。(同上)

 

左注は、「右郡司已下子弟已上諸人多集此會 因守大伴宿祢家持作此歌也」<右は、郡司已下(ぐんしいげ)、子弟已上の諸人(もろひと)、多くこの会に集(つど)ふ。よりて、守(かみ)大伴宿禰家持、この歌を作る>である。

 

 

◆安志比奇乃 山坂超而 去更 年緒奈我久 科坂在 故志尓之須米婆 大王之 敷座國者 京師乎母 此間毛於夜自等 心尓波 念毛能可良 語左氣 見左久流人眼 乏等 於毛比志繁 曽己由恵尓 情奈具也等 秋附婆 芽子開尓保布 石瀬野尓 馬太伎由吉氐 乎知許知尓 鳥布美立 白塗之 小鈴毛由良尓 安波勢理 布里左氣見都追 伊伎騰保流 許己呂能宇知乎 思延 宇礼之備奈我良 枕附 都麻屋之内尓 鳥座由比 須恵弖曽我飼 真白部乃多可

     (大伴家持 巻十九 四一五四)

 

≪書き下し≫あしひきの 山坂越えて 行きかはる 年の緒(を)長く しなざかる 越(こし)にし住めば 大君(おほきみ)の 敷きます国は 都をも ここも同(おや)じと 心には 思ふものから 語り放(さ)け 見放(さ)くる人目(ひとめ) 乏(とも)しみと 思ひし繁(しげ)し そこゆゑに 心なぐやと 秋(あき)づけば 萩(はぎ)咲きにほふ 石瀬野(いはせの)に 馬(うま)だき行きて をちこちに 鳥踏(ふ)み立て 白塗(しらぬり)の 小鈴(をすず)もゆらに あはせ遣(や)り 振り放(さ)け見つつ いきどほる 心のうちを 思ひ延べ 嬉(うれ)しびながら 枕付まくらづ)く 妻屋(つまや)のうちに 鳥座(とぐら)結(ゆ)ひ 据(す)ゑてぞ我が飼ふ 真白斑(ましらふ)の鷹(たか) 

 

(訳)険しい山や坂を越えてはるばるやって来て、改まる年月長く、山野層々と重なって都離れたこの越の国に住んでいると、大君の治めておられる国であるからには、都もここも違わないと心では思ってみるものの、話をして気晴らしをし合って心を慰める人、そんな人もあまりいないこととて、物思いはつのるばかりだ。そういう次第で、心のなごむこともあろうかと、秋ともなれば、萩の花が咲き匂う石瀬野に、馬を駆って出で立ち、あちこちに鳥を追い立てては、鳥に向かって白銀の小鈴の音もさわやかに鷹を放ち遣(や)り、空中かなたに仰ぎ見ながら、悶々(もんもん)の心のうちを晴らして、心嬉しく思い思いしては、枕を付けて寝る妻屋の中に止まり木を作ってそこに大事に据えてわれらが飼っている、この真白斑(ましらふ)の鷹よ。(同上)

(注)しなざかる 分類枕詞:地名「越(こし)(=北陸地方)」にかかる。語義・かかる理由未詳。(学研)

(注)さく【放く・離く】〔動詞の連用形に付いて〕(ア)〔「語る」「問ふ」などに付いて〕気がすむまで…する。…して思いを晴らす。(イ)〔「見さく」の形で〕遠く眺める。はるかに見やる。(学研)

(注)馬だく:馬をあやつる

(注)をちこち【彼方此方・遠近】名詞:あちらこちら。(学研)

(注)ふみたつ【踏み立つ】他動詞:地面を踏み鳴らして鳥を追い立てる。(学研)

(注)しらぬり【白塗り】名詞:白く彩色したもの。白土を用いたり銀めっきをしたりする。(学研)

(注)ゆら(に・と)副詞:からから(と)。▽玉や鈴が触れ合う音を表す。(学研)

(注)あはせ遣り:獲物の鳥を目指して手に据えた鷹を放ちやり。

(注)いきどほる【憤る】自動詞:①胸に思いがつかえる。気がふさぐ。②腹を立てる。怒る。(学研) ここでは①の意

(注)とぐら【鳥座・塒】名詞:鳥のとまり木。鳥のねぐら。(学研)

 

 この歌についてはブログ拙稿「万葉歌碑を訪ねて(その857)」で紹介している。

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題詞は、「従京師来贈歌一首 幷短歌」<京師(みやこ)より来贈(おこ)する歌一首 幷(あは)短歌>である・

 

◆和多都民能 可味能美許等乃 美久之宜尓 多久波比於伎氐 伊都久等布 多麻尓末佐里氐 於毛敝里之 安我故尓波安礼騰 宇都世美乃 与能許等和利等 麻須良乎能 比伎能麻尓麻仁 之奈謝可流 古之地乎左之氐 波布都多能 和可礼尓之欲理 於吉都奈美 等乎牟麻欲妣伎 於保夫祢能 由久良々々々耳 於毛可宜尓 毛得奈民延都々 可久古非婆 意伊豆久安我未 氣太志安倍牟可母

     (大伴坂上郎女 巻十九 四二二〇)

 

≪書き下し≫海神(わたつみ)の 神(かみ)の命(みこと)の み櫛笥(くしげ)に 貯(たくは)ひ置きて 斎(いつ)くとふ 玉にまさりて 思へりし 我(あ)が子にはあれど うつせみの 世の理(ことわり)と ますらをの 引きのまにまに しなざかる 越道(こしぢ)をさして 延(は)ふ蔦(つた)の 別れにしより 沖つ波 撓(とを)む眉引(まよび)き 大船(おおぶね)の ゆくらゆくらに 面影(おもかげ)に もとな見えつつ かく恋ひば 老(お)いづく我(あ)が身 けだし堪(あ)へむかも

 

(訳)海神(わたつみ)のその神の命が玉櫛笥にしまいこんでおいてたいせつにするという真珠、その真珠にもまさって思い思っていた我が子ではあるけれど、世の中の定めとて、ますらおの引き連れるままに、山野層々と重なって都離れた越道(こしじ)をさして、延う蔦の分かれるようにあなたがはるばる別れて行ってしまったその日から、沖にうねる波のようにたおやかなあなたの眉が、大船の揺れ動くようにゆらゆらと面影にやたらちらついてやりきれない、ああこんなに恋い慕っていたなら、年老いてゆくこの身は、もしや保(も)たないのではなかろうか。(同上)

(注)はふつたの【這ふ蔦の】分類枕詞:蔦のつるが、いくつもの筋に分かれてはいのびていくことから「別る」「おのが向き向き」などにかかる。(学研)

(注)おきつなみ【沖つ波】分類枕詞:沖に立つ波の状態から「頻(し)く」「撓(とを)む」「競(きほ)ふ」「高し」などにかかる。(学研)

(注)とをむ>たわむ【撓む】:自動詞①しなやかに曲がる。しなう。たわむ。②屈する。弱気になる。(学研)ここでは①の意

(注)おほぶねの【大船の】分類枕詞:①大船が海上で揺れるようすから「たゆたふ」「ゆくらゆくら」「たゆ」にかかる。②大船を頼りにするところから「たのむ」「思ひたのむ」にかかる。③大船がとまるところから「津」「渡り」に、また、船の「かぢとり」に音が似るところから地名「香取(かとり)」にかかる。(学研)

(注)ゆくらゆくらなり 形容動詞:ゆらゆらと揺れ動く。(学研)

(注)もとな 副詞:わけもなく。むやみに。しきりに。 ※上代語。(学研)

(注)けだし【蓋し】副詞:①〔下に疑問の語を伴って〕ひょっとすると。あるいは。②〔下に仮定の表現を伴って〕もしかして。万一。③おおかた。多分。大体。(学研)

(注)あふ【敢ふ】自動詞:堪える。我慢する。持ちこたえる。(学研)

 

 「反歌一首」もみてみよう。

 

◆可久婆可里 古非之久志安良婆 末蘇可我美 弥奴比等吉奈久 安良麻之母能乎

       (大伴坂上郎女 巻十九 四二二一)

 

≪書き下し≫かくばかり恋しくしあらばまそ鏡見ぬ日時なくあらましものを

 

(訳)これほどに恋しく思われるものであったなら、そなたを見ぬ日、見ぬ時とてなく、いつも一緒に暮らしていたらよかったのに。(同上)

(注)まそかがみ【真澄鏡/真十鏡】《「まそ」は「ますみ」の音変化、または、ととのっているものの意という》[枕]鏡のありさま・働きや置き場所などいろいろな意でかかる。① 「見る」にかかる。②「懸く」にかかる。③「床(とこ)」にかかる。④「磨(と)ぐ」にかかる。⑤「清し」にかかる。⑥「照る」にかかる。⑦「面影」にかかる。⑧鏡に蓋(ふた)があるところから、「ふた」にかかる。(weblio辞書 デジタル大辞泉

 

左注は、「右二首大伴氏坂上郎女賜女子大嬢也」<右の二首は、大伴氏(おほともうぢ)坂上郎女、女子(むすめ)大嬢(おほいらつめ)に賜ふ>である。

 

この二首は、「万葉に見える坂上郎女の最後の歌。時に大嬢は二八歳、坂上郎女は五五歳ばかり。」(伊藤脚注)

天平勝宝二年(750年)の作である。

 

 大伴坂上郎女の歌は、男勝りの性格の詠いぶりであるが、これらの歌は、がらりと詠いぶりが違い、弱気でやさしさと弱弱しさを感じさせる。「沖つ波 撓(とを)む眉引(まよび)き 大船(おおぶね)の ゆくらゆくらに 面影(おもかげ)に もとな見えつつ」と我が娘大嬢を恋しく恋しく詠い、「かく恋ひば 老(お)いづく我(あ)が身 けだし堪(あ)へむかも」と老いゆく我が身を詠い、四二二一歌で、越前に下向し離れ離れになった大嬢に、こんなことなら行かせたくなかったと後悔の念にさいなまれた歌を詠っているのである。

 

 大伴坂上郎女についてはブログ拙稿「万葉歌碑を訪ねて(その1059)」で紹介している。

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(参考文献)

★「萬葉集」 鶴 久・森山 隆 編 (桜楓社)

★「万葉集 四」 伊藤 博 著 (角川ソフィア文庫

★「別冊國文學 万葉集必携」 稲岡耕二 編 (學燈社

★「大伴家持 波乱にみちた万葉歌人の生涯」 藤井一二 著 (中公新書

★「万葉神事語事典」(國學院大學デジタルミュージアム

★「weblio古語辞典 学研全訳古語辞典」

★「weblio辞書 デジタル大辞泉

★「コトバンク デジタル大辞泉

★「万葉歌碑めぐりマップ」 (高岡地区広域圏事務組合)