万葉集の歌碑めぐり

万葉歌碑をめぐり、歌の背景等を可能な限り時間的空間的に探索し、万葉集の万葉集たる所以に迫っていきたい!

万葉歌碑を訪ねて(その1851~1853)―松山市御幸町 護国神社・万葉苑(16~18)―万葉集 巻八 一四四四、巻四 四九六.巻七 一一八八

―その1851―

●歌は、「山吹の咲きたる野辺のつほすみれこの春の雨に盛なりけり」である。

松山市御幸町 護国神社・万葉苑(16)万葉歌碑<プレート>(高田女王)

●歌碑(プレート)は、松山市御幸町 護国神社・万葉苑(16)にある。

 

●歌をみていこう。

 

題詞は、「高田女王歌一首 高安之女也」<高田女王(たかだのおほきみ)が歌一首 高安が女なり>

(注)高田女王は高安王の娘

 

◆山振之 咲有野邊乃 都保須美礼 此春之雨尓 盛奈里鶏利

      (高田女王 巻八 一四四四)

 

≪書き下し≫山吹(やまぶき)の咲きたる野辺(のへ)のつほすみれこの春の雨に盛(さか)りなりけり

 

(訳)山吹の咲いている野辺のつぼすみれ、このすみれは、この春の雨にあって、今が真っ盛りだ。(「万葉集 二」 伊藤 博 著 角川ソフィア文庫より)

 

 「やまぶき」を詠んだ歌は、万葉集には十七首収録されている。すべての歌をブログ拙稿「万葉歌碑を訪ねて(その1317)」で紹介している。

 ➡ 

tom101010.hatenablog.com

 

 高田女王の今城王に贈った六首についてはブログ拙稿「万葉歌碑を訪ねて(その90改)」で紹介している。

 ➡ 

tom101010.hatenablog.com

 

 

 

―その1852⁻

●歌は、「み熊野の浦の浜木綿百重なす心は思へど直に逢はぬかも」である。

松山市御幸町 護国神社・万葉苑(16)万葉歌碑<プレート>(柿本人麻呂

●歌碑は、松山市御幸町 護国神社・万葉苑(17)にある。

 

●歌をみていこう。

                         

四九六~四九九歌の題詞は、「柿本朝臣人麻呂歌四首」<柿本朝臣人麻呂(かきのもとのあそみひとまろ)が歌四首>である。

 

◆三熊野之 浦乃濱木綿 百重成 心者雖念 直不相鴨

        (柿本人麻呂 巻四 四九六)

 

≪書き下し≫み熊野の浦の浜木綿(はまゆふ)百重(ももへ)なす心は思(も)へど直(ただ)に逢はぬかも

 

(訳)み熊野(くまの)の浦べの浜木綿(はまゆう)の葉が幾重にも重なっているように、心にはあなたのことを幾重にも思っているけれど、じかには逢うことができません。(伊藤 博 著 「万葉集 一」 角川ソフィア文庫より)

(注)み熊野の浦:紀伊半島南部一帯。「み」は美称。

(注)はまゆふ【浜木綿】名詞:浜辺に生える草の名。はまおもとの別名。歌では、葉が幾重にも重なることから「百重(ももへ)」「幾重(いくかさ)ね」などを導く序詞(じよことば)を構成し、また、幾重もの葉が茎を包み隠していることから、幾重にも隔てるもののたとえともされる。よく、熊野(くまの)の景物として詠み込まれる。(weblio古語辞典 学研全訳古語辞典)

(注)上三句は「心は思へど」の譬喩

 

 この歌群四首については、和歌山県白浜町 平草原公園にある歌碑とともに、ブログ拙稿「万葉歌碑を訪ねて(その1187)」で紹介している。

 ➡ 

tom101010.hatenablog.com

 

 

 

―その1853―

●歌は、「山越えて遠津の浜の岩つつじ我が来るまでふふみてあり待て」である。

松山市御幸町 護国神社・万葉苑(18)万葉歌碑<プレート>(作者未詳)

●歌碑(プレート)は、松山市御幸町 護国神社・万葉苑(18)にある。

 

●歌をみていこう。

 

◆山超而 遠津之濱之 石管自 迄吾来 含流有待

        (作者未詳 巻七 一一八八)

 

≪書き下し≫山越えて遠津(とほつ)の浜の岩つつじ我(わ)が来(く)るまでふふみてあり待て

 

(訳)山を越えて遠くへ行くというではないが、その遠津の浜に咲く岩つつじよ、われらが再びここに帰って来るまで蕾(つぼみ)のままでいておくれ。(伊藤 博 著 「万葉集 二」 角川ソフィア文庫より)

(注)やまこえて【山越えて】( 枕詞 ):山を越えて遠くの意で、地名「遠津」にかかる。 (weblio辞書 三省堂 大辞林 第三版)

(注)遠津の浜:所在地不明

(注)岩つつじ:岩間に咲くつつじ。土地の娘の譬えであろう。(伊藤脚注)

(注)ふふむ【含む】自動詞:花や葉がふくらんで、まだ開ききらないでいる。つぼみのままである。(学研)

 

この歌は、和歌山市岩橋 紀伊風土記の丘万葉植物園の歌碑(プレート)とともにブログ拙稿「万葉歌碑を訪ねて(その719)」で紹介している。

 ➡ 

tom101010.hatenablog.com

                           

 愛媛万葉苑や紀伊風土記の丘万葉植物園のような「万葉植物園」は全国で何カ所程度あるのか調べてみたいと思った。

フリー百科事典『ウィキペディアWikipedia)』に全国の一覧がまとめられていたので引用させていただきました。(行ったところについては、現地の名称に変更させていただいております)

 

■東北地方(4)

徳良湖万葉植物園 - 尾花沢市二藤袋

昭和万葉の森 - 宮城県黒川郡大衡村

みちのく真野万葉植物園- 南相馬市鹿島区江垂桜平

郡山あだたら万葉植物園(H29 4月閉鎖)、四季の里緑水苑 - 郡山市喜久田町

■関東地方(16)

万葉植物園、天平の丘公園 - 栃木県下野市

万葉自然公園かたくりの里 - 栃木県佐野市

伊香保万葉植物園[9]西田公園 - 群馬県伊香保町

万葉植物園、群馬県立館林高等学校 - 群馬県館林市富士原町

万葉植物園、埼玉県 県民健康福祉村 - 埼玉県越谷市北後谷

万葉公園 - 東京都八王子市

万葉植物園- 東京都 国分寺市西元町

万葉植物園、杉並区立向陽中学校 - 東京都杉並区下高井戸

万葉・薬用園、赤塚植物園 - 東京都板橋区赤塚

薬師池公園 萬葉草花苑 - 東京都町田市

万葉植物園- 千葉県 市川市大野町

城山公園 万葉の径 - 千葉県館山市

万葉植物園(通称)、専修大学生田キャンパス - 神奈川県 川崎市多摩区東三田

万葉公園- 神奈川県湯河原町, 松(六990)、梅(五849)、椿、楓(八1623)、歌碑(十四3668)

足柄万葉公園 - 神奈川県 南足柄市関本

足柄万葉森林公園 丸太の森・万葉植物苑 - 神奈川県 南足柄市

中部地方(19)

弥彦山 万葉の道 新潟県弥彦村

万力公園万葉の森[14] - 山梨県山梨市

万葉植物園、十二町潟水郷公園 - 富山県氷見市十二町中開

越中万葉植物園、正法寺 - 富山県高岡市伏木一宮若草

二上山万葉植物園 - 富山県高岡市二上

高岡市万葉歴史館 庭園 - 富山県高岡市

万葉植物園、倶利伽羅県定公園 - 小矢部市埴生

万葉植物園、信濃国分寺史跡公園内 - 長野県上田市国分

千曲川万葉公園 - 長野県千曲市上山田温泉

富士万葉植物園、倫理研究所 - 静岡県御殿場市印野

万葉植物園、片岡神社 - 静岡県榛原郡吉田町

楽寿園 万葉の森 - 静岡県三島市

万葉の小径 - 静岡県伊東市

万葉の森公園 - 静岡県浜松市浜北区平口

万葉植物園、福井総合植物園 - 福井県越前町朝日

西浦温泉万葉の小径 - 愛知県蒲郡市

万葉歌碑公園 - 愛知県南知多町

万葉公園 - 愛知県一宮市萩原町

万葉の散歩道 名古屋市東山植物園 名古屋市千種区

近畿地方(13)

 万葉植物園 万葉の森 - 滋賀県東近江市野口町・糠塚町船岡山

長居植物園 万葉のみち - 大阪市東住吉区

恩智城址公園 第一万葉植物園 - 大阪府八尾市恩智中町

西田公園 万葉植物苑 - 兵庫県西宮市

猪名川万葉植物園 - 兵庫県川西市矢問

いなみ野 万葉の森 - 兵庫県稲美町

春日大社 萬葉植物園 - 奈良市春日野町 1932年(昭和7年)開園、日本最初

萬葉の森 - 奈良県橿原市

国営飛鳥歴史公園 万葉植物園路- 奈良県明日香村

吉野宮滝 萬葉の道 - 奈良県吉野町

紀伊風土記の丘 万葉植物園 - 和歌山市岩橋

紀の国萬葉めぐり - 和歌山市

片男波公園 万葉館 - 和歌山市

■中国地方(6)

島根県立万葉公園- 島根県益田市高津町

因幡万葉歴史館 - 鳥取県岩美郡国府

鏡野 万葉の道 - 岡山県鏡野町

万葉植物園、広島大学附属福山中学校・高等学校 - 福山市春日町

万葉植物園、山口県セミナーパーク - 山口市秋穂二島

万葉の森 - 山口県徳山市

四国地方(4)

川島万葉植物園 - 吉野川市川島地区

愛媛県万葉植物苑、愛媛県護国神社 - 松山市御幸

土佐豊永万葉植物園、定福寺 - 高知県長岡郡大豊町粟生

■九州地方(8)

金印公園と志賀島万葉植物歌碑めぐり - 福岡県福岡市

都府楼とつくし万葉歌碑めぐり - 太宰府市

椿の山万葉自然植物園 - 福岡県筑紫野市

万葉公園 - 福岡県志摩町(現・糸島市

万葉のみち、松浦河畔公園 - 唐津市

西のはて 万葉の里 - 長崎県三井楽町

万葉公園 - 長崎県石田町

万葉植物園、早水公園- 宮崎県都城市早水町

 

リストとして70カ所あげられている。訪れたことのあるのは21カ所(上記太字)である。まだまだ挑戦課題が山積である。

 

 これまでに行ったところを2回に分けて覗いてみよう。

 

高岡市万葉歴史館 庭園 - 富山県高岡市

■万葉の森公園 - 静岡県浜松市浜北区平口

■西浦温泉万葉の小径 - 愛知県蒲郡市

■万葉公園 - 愛知県一宮市萩原町

■万葉の散歩道 名古屋市東山植物園 名古屋市千種区

■万葉植物園 万葉の森 - 滋賀県東近江市野口町・糠塚町船岡山

■西田公園 万葉植物苑 - 兵庫県西宮市

■いなみ野 万葉の森 - 兵庫県稲美町

春日大社 萬葉植物園 - 奈良市春日野町

■萬葉の森 - 奈良県橿原市



 

(参考文献)

★「萬葉集」 鶴 久・森山 隆 編 (桜楓社)

★「万葉集 一」 伊藤 博 著 (角川ソフィア文庫

★「万葉集 二」 伊藤 博 著 (角川ソフィア文庫

★「weblio古語辞典 学研全訳古語辞典」

★「フリー百科事典『ウィキペディアWikipedia)』」