第十二章 庭園と愉楽
「・・・第十二章では、・・・庭に込められた個人のそれぞれの思いについて、坂上大嬢(さかのうへのだいじょう)を偲ぶ大伴家持の庭を中心にかたってみることとしましょう。・・・」
【万葉時代の庭園文化】
「貴族や役人などの平城京生活者の私邸に設けられた<庭園>については資料も少なく、発掘事例も皆無に等しいのです。むしろ、『万葉集』が、その様子を伝える第一級の史料である、とさえいえます。・・・今回語ってみたいと思うのは、個人の宅に付随する<庭園>についてです。なぜならば、それは平城京生活者の私的空間であり、そこに万葉びとの『愉楽(ゆらく)』を発見できる、と考えたからです。そこで、『万葉集』から庭園に関わる語彙を拾い上げてみましょう。
シマ……十五例、池や築山(つきやま)を中心とする人工的な遊覧の空間。
ソノ……二十一例、食用植物が植えられている人工的な遊覧の空間。
ニハ……三十一例、祭祀(さいし)や儀礼、労働の空間にも利用されうる遊覧の空間。
ヤド……九十五例、『屋外』『屋前』『屋庭』と表記され得る遊覧の空間。
・・・このテキストでわたしが使用する<庭園>という言葉は、上の四語が重なり合うところをいうものです。」(「万葉集の心を読む」 上野 誠著 角川ソフィア文庫より)
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【愉楽の空間】
「では、その庭園とはどんなところだったのでしょうか。これまた『万葉集』のなかから拾い集めて見ましょう。
- なでしこの花を見る(巻三の四六四)/黄葉を見る(巻十九の四二五九)/月の光を愛でる(巻二十の四四五三)
- 池がある(巻三の三七八)/池に島がある(巻二の一八〇)/築山がある(『五言。宝宅(ほうたく)にして新羅(しらぎ)の客を宴す』『懐風藻』)/あずまやがある(巻八の一六三七)
- 橘を植える(巻三の四一一)/梅を植える(巻三の四五三)/藤を植える(巻八の一四七一)
- 鳥を飼育する(巻三の一八二)/うぐいすの飛来を楽しむ(巻二十の四四九〇)/ほととぎすの飛来を楽しむ(巻八の一四八〇)/コオロギの音を楽しむ(巻八の一五五二)
・・・『人が遊覧を目的として(①)、地形に手を加え(②)、植物を植えたり(③)、特定の動物・昆虫を餌付(えづ)けまたは飼育したり、特定の鳥の飛来を楽しむ空間(➃)』ということができます。まさに、四季折々の楽しみを極め尽くす愉楽の空間ということができますね。」(「万葉集の心を読む」 上野 誠著 角川ソフィア文庫より)
それぞれの歌をみていこう。
・なでしこの花を見る(巻三の四六四)については、拙稿ブログ「万葉歌碑を訪ねて(その1051)」で紹介している。
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・黄葉を見る(巻十九の四二五九)については、同「同(その498)」で紹介している。
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・月の光を愛でる(巻二十の四四五三)については、同「同(その1120)」で紹介している。
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・池がある(巻三の三七八)については、同「同(その三改)」で奈良市法華寺町法華寺境内万葉歌碑tとともに紹介している。
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・池に島がある(巻二の一八〇)については、同「同(その502)」で紹介している。
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・あずまやがある(巻八の一六三七)については、同「同(その963)」で紹介している。
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・橘を植える(巻三の四一一)については、同「同(その1313)」で紹介している。
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・梅を植える(巻三の四五三については、同「同(その1360)」で紹介している。
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・藤を植える(巻八の一四七一)については、同「同(その205)」で紹介している。
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・鳥を飼育する(巻三の一八二)については、同「同(その502)」で紹介している。
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・うぐいすの飛来を楽しむ(巻二十の四四九〇)については同「同(その1096)」で紹介している。
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・ほととぎすの飛来を楽しむ(巻八の一四八〇)については、同「同(その1348表①)」で紹介している。
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・コオロギの音を楽しむ(巻八の一五五二)については、同「同(その1327)」で紹介している。
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(参考文献)
★「萬葉集」 鶴 久・森山 隆 編 (桜楓社)
★「weblio古語辞典 学研全訳古語辞典」