●歌は、「手に取れば袖さへにほふをみなえしこの白露に散らまく惜しも」である。

●歌をみていこう。
◆手取者 袖并丹覆 美人部師 此白露尓 散巻惜
(作者未詳 巻十 二一一五)
≪書き下し≫手に取れば袖(そで)さへにほふをみなへしこの白露(しらつゆ)に散らまく惜(を)しも
(訳)手に取れば袖までも染まる色美しいおみなえしなのに、この白露のために散るのが今から惜しまれてならない。(「万葉集 二」 伊藤 博 著 角川ソフィア文庫より)
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(注)にほふ【匂ふ】自動詞:①美しく咲いている。美しく映える。②美しく染まる。(草木などの色に)染まる。③快く香る。香が漂う。④美しさがあふれている。美しさが輝いている。⑤恩を受ける。おかげをこうむる。(weblio古語辞典 学研全訳古語辞典) ここでは②の意
(注)白露:漢語「白露」の翻読語。普通秋の露にいう。(伊藤脚注)

20210427撮影
「をみなへし」の万葉仮名表記をみてみよう。
「娘子部四」 六七五歌
「姫押」 一三四六歌
「娘部思」 一五三〇歌、一九〇五歌
「娘部志」 一五三四歌、一五三八歌
「佳人部為」 二一〇七歌
「美人部師」 二一一五歌
「娘部四」 二二七九歌
「乎美奈敝之」 三九四三歌、三九四四歌、三九五一歌
「乎美奈弊之」 四二九七歌、四三一六歌
女郎花(オミナエシ)の語源・由来については、「語源由来辞典」に「オミナエシの『オミナ(女郎)』は、美しい女性の意味で、『万葉集』では『女郎』のほか、オミナに『佳人』『美人』『娘子』『娘』『姫』などの字が使われている。
オミナエシの『エシ』には、動詞『ヘス(圧す)』の連用形とする説と、推量の『ベシ』とする説がある。」と書かれている。
(注)をみな【女】名詞:若く美しい女性。女。(学研)
一字表記でも「美」を使っているところは書き手の遊び心が伺える。
■女郎花(オミナエシ)と男郎花(オトコエシ)■
横浜市こども植物園HPに次のような記載があったので紹介させていただきます。
「こども植物園の薬草園で女郎花(オミナエシ)と男郎花(オトコエシ)が見られます。
女郎花の歴史的仮名遣いは『をみなへし』。『をみな』は女性のことで、古くは美人、佳人の意味です。『へし』は『圧(へ)す』の連用形なので、美人を圧倒するほど美しいという意味で、この名がついたとされています。また、同科で白い花を咲かせる男郎花(オトコエシ)は、花の色が白く地味で,茎や葉は女郎花より大きく男性的な感じがすることから命名されたと言われています。薬草園では、隣り合わせで咲いていますので、是非御覧になってください。」


本稿で国分寺市西元町 国分寺万葉庭園の万葉歌碑(プレート)をベースにした歌の紹介が終ります。
次稿からは「植物で見る 万葉の世界」(國學院大學[万葉の花の会]発行)をベースに当該歌の植物はもとよりこれまで巡って来た歌碑等を紹介していきたいと思います。
引き続きよろしくお願い申し上げます。
(参考文献)
★「萬葉集」 鶴 久・森山 隆 編 (桜楓社)
★「万葉集 二」 伊藤 博 著 (角川ソフィア文庫)
★「weblio古語辞典 学研全訳古語辞典」
★「横浜市こども植物園HP」