万葉集の歌碑めぐり

万葉歌碑をめぐり、歌の背景等を可能な限り時間的空間的に探索し、万葉集の万葉集たる所以に迫っていきたい!

万葉集の世界に飛び込もう(その3273)―万葉一日一葉 「植物で見る万葉の世界」(國學院大學「万葉の花の会」発行)より」―すぎ[スギ]

●歌は、「いにしへの人の植ゑけむ杉が枝に霞たなびく春は来ぬらし(柿本人麻呂歌集 10-1814)」である。

「すぎ[スギ]」 岡山理科大学HPより引用させていただきました。

 「スギは日本特産の常緑高木で、日本人の生活になじみの深い木である。例歌は、人里近くの山に植えられた杉木立から立ち昇る霞に春の到来を感じとっている歌である。スギ材は、古来建築に材や酒樽をつくるのに利用され、植林もされていたようである。また酒の神様として有名な大神(おおみわ)神社の御神体である三輪山の『杉』は集中に『三諸の神の神杉』として登場する。老舗の造り酒屋では軒先に杉の枝葉を球状に束ねた杉玉をつるす習慣があるが、それはこの杉を用いて作られる。・・・集中に杉を詠んだ歌は11首あるが、多くは・・・『神』を配して詠まれており、神の宿る木と考えられていたことが窺える。(後略)」(「植物で見る万葉の世界」(國學院大學「万葉の花の会」発行)より)

 

●歌をみていこう。

◆古 人之殖兼 杉枝 霞霏▼ 春者来良之

     (柿本人麻呂歌集 巻十 一八一四)

   ※ ▼は、「雨かんむり+微」である。「霏▼」で「たなびく」と読む。

 

≪書き下し≫いにしへの人の植ゑけむ杉が枝に霞(かすみ)たなびく春は来(き)ぬらし

 

(訳)遠く古い世の人が植えて育てたという、この杉木立の枝に霞がたなびいている。たしかにもう春はやってきたらしい。(伊藤 博 著 「万葉集 二」 角川ソフィア文庫より)

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(注)いにしへのひと【古への人】分類連語:①古人。昔の人。②古風な人。昔風な家柄の人。(weblio古語辞典 学研全訳古語辞典)ここでは①の意              

(注の注)いにしへ【古・往古】〘名〙 (「往(い)にし方(へ)」の意。時間の経過を観念にもつ):① 久しい以前。過ぎ去った時。往時。② 過去の事。過去の事跡。過去の経歴。③ 亡き人。故人。 ⇒[語誌](1)「いにしえ」と「むかし(昔)」とは同じ意味にも用いられているが、しかし、基本的にはとらえ方に違いがあるとみられる。「いにしえ」は、「往にし方」の原義が示すように、「時間的」にものをとらえる場合に用いて「今」と連続的にとらえられるのに対して、「むかし」は、そのような「過ぎ去る」という時間的経過の観念が無く、「今」とは対立的に過去をとらえる場合に用いる。

(2)語源的には、「過ぎ去った昔」の意で、直接に体験していないはるか以前について使われることが多い。これに対して「むかし」は、奈良・平安時代を通して、直接体験した懐かしく、忘れがたい、近い過去を多く意味した。

(3)鎌倉時代以降になると、はるか以前を意味する「むかし」が急増し、「いにしへ」の意味領域を侵していった。(コトバンク 精選版 日本国語大辞典)

 

 

当該歌の歌碑をみてみよう。

■奈良県桜井市三輪 檜原神社南口万葉歌碑

奈良県桜井市三輪 檜原神社南口万葉歌碑(柿本人麻呂歌集 10-1814) 
20190423撮影



 

檜原神社三つ鳥居 20190423撮影

 

■奈良市法蓮佐保山 万葉の苑万葉歌碑(プレート)■

奈良市法蓮佐保山 万葉の苑万葉歌碑(プレート)(柿本人麻呂歌集 10-1814) 
20200513撮影



 

 

■和歌山市岩橋 紀伊風土記の丘万葉植物園万葉歌碑■

和歌山市岩橋 紀伊風土記の丘万葉植物園万葉歌碑(柿本人麻呂歌集 10-1814) 2020819撮影

 

 

■和歌山市岩橋 紀伊風土記の丘万葉植物園万葉歌碑(プレート)■

和歌山市岩橋 紀伊風土記の丘万葉植物園万葉歌碑(プレート)
(柿本人麻呂歌集 10-1814) 2020819撮影

 

■島根県益田市 県立万葉植物園万葉歌碑<プレート>■

島根県益田市 県立万葉植物園万葉歌碑<プレート>(柿本人麻呂歌集 10-1814) 20211012撮影



 

 

■静岡県正浜松市北区 三ヶ日町乎那の峯万葉歌碑<プレート>■

静岡県正浜松市北区 三ヶ日町乎那の峯万葉歌碑<プレート>
(柿本人麻呂歌集 10-1814) 20220412撮影



 

 

■島根県松江市東出雲町 面足山万葉公園万葉歌碑<プレート>■

島根県松江市東出雲町 面足山万葉公園万葉歌碑<プレート>
(柿本人麻呂歌集 10-1814) 20221108撮影



 

 

■高知県大豊町粟生 土佐豊永万葉植物園万葉歌碑■

高知県大豊町粟生 土佐豊永万葉植物園万葉歌碑(柿本人麻呂歌集 10-1814) 
20221130撮影



 

 

■千葉県袖ケ浦市下新田 袖ヶ浦公園万葉植物園万葉歌碑(プレート)■

千葉県袖ケ浦市下新田 袖ヶ浦公園万葉植物園万葉歌碑(プレート)
(柿本人麻呂歌集 10-1814) 20230926撮影

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(参考文献)

★「萬葉集」 鶴 久・森山 隆 編 (桜楓社)

★「万葉集 二」 伊藤 博 著 (角川ソフィア文庫)

★「植物で見る万葉の世界」 (國學院大學「万葉の花の会」発行)

★「weblio古語辞典 学研全訳古語辞典」

★「コトバンク 精選版 日本国語大辞典」

★「岡山理科大学HP」