●歌は、「筑波嶺のさ百合の花の夜床にも愛しけ妹ぞ昼も愛しけ(大舎人部千文 20-4369)」である。


「・・・『ゆり』は集中、10首の歌に詠み込まれており、その種類としてはヤマユリまたはササユリとされ、分布などからヤマユリと考えられるのは例歌のみで、残りの多くは近畿から中国・四国地方に分布し、ヤマユリよりも繊細で楚々とした姿のササユリと考えられる。ヤマユリは日本のユリを代表する種類で、茎は1~1.5mの高さにもなり、7月から8月にかけて茎頂に2~10数個の大きな花をつける。花被片は6枚、白色で赤褐色の斑点があり、中央部には黄色の縦すじが走っている・・・例歌のように、ヤマユリは花が大きく、甘い香りがすることからササユリに比べどこか官能的である。」(「植物で見る万葉の世界」(國學院大學「万葉の花の会」発行)より)
●歌をみていこう。
◆都久波祢乃 佐由流能波奈能 由等許尓母 可奈之家伊母曽 比留毛可奈之礽
(大舎人部千文 巻二十 四三六九)
≪書き下し≫筑波嶺(つくはね)のさ百合(ゆる)の花の夜床(ゆとこ)にも愛(かな)しけ妹(いも)ぞ昼も愛(かな)しけ
(訳)筑波の峰に咲き匂うさゆりの花というではないが、その夜(よる)の床でもかわいくてならぬ子は、昼間でもかわいくってたまらぬ。(「万葉集 四」 伊藤 博 著 角川ソフィア文庫より)
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(注)上二句は序。「夜床」を起す。(伊藤脚注)「さ百合の花」は妻を匂わしてもいる。(伊藤脚注)
(注)愛しけ:「愛しき」の東国形。(伊藤脚注)
●当該歌の歌碑をみてみよう。
■兵庫県加古郡稲美町 稲美中央公園万葉の森万葉歌碑■

■名古屋市千種区東山元町 東山動植物園万葉の散歩道万葉歌碑(プレート)■

(大舎人部千文 20-4369) 20210216撮影
■茨城県つくば市大久保 つくばテクノパーク大穂万葉歌碑■

■茨城県石岡市小幡 ライオンズ広場万葉の森万葉歌碑(プレート)■

(大舎人部千文 20-4369) 20230927撮影
(参考文献)
★「萬葉集」 鶴 久・森山 隆 編 (桜楓社)
★「万葉集 四」 伊藤 博 著 (角川ソフィア文庫)
★「植物で見る万葉の世界」 (國學院大學「万葉の花の会」発行)
★「weblio古語辞典 学研全訳古語辞典」
★「国営武蔵丘陵森林公園HP」