万葉集の歌碑めぐり

万葉歌碑をめぐり、歌の背景等を可能な限り時間的空間的に探索し、万葉集の万葉集たる所以に迫っていきたい!

ザ・モーニングセット190205(万葉の小径シリーズーその28しらかし)

・今日のサンドイッチの中味は、サニーレタスと玉子である。玉子はマヨネーズを混ぜ込み電子レンジでチンして作った。f:id:tom101010:20190205182726j:plain

デザートは中央に伊予柑を置き、周りをバナナの輪切りで敷き詰め、2色のブドウの切り合わせを円形に並べた。中心部も同様切り合わせを置いた。

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PCはまだ復活していない。なんでも経験とはいえ、キーボード入力とはスピードが違う。まどろっこしいがコツコツインプットしている。

今日の万葉の小径の歌碑の紹介は「しらかし」である。

・あしひきの 山道(やまぢ)も知らず 白橿の 枝もとををに 雪の降れれば

(柿本朝臣人麿歌集 巻一〇 二三一五)

足引 山道不知 白牫牱 枝母等乎ゞ乎

細い山道は、どう続いているのかも分からない。白橿の枝も撓むほど雪があたり一面に降り積もっているので。

「橿(かし)といえば、一般に常緑高木のアラカシを指すのに対して、シラカシは同じく橿(かし)の類ではあるが、特に材質の白い常緑高木をいう。万葉集には、白橿の他に櫟(いちい:イチイガシ)や厳橿(いつかし)と呼ばれる神聖な地に生えるカシが歌われている。ともに、材質は堅く、その実(どんぐり)は食用になる。

ここでは、雪がたくさん降り積もっている冬景色を詠んでおり、日頃は目印になる高い白橿の木が、真っ白になってしまった山中で、山道も分からないと歌っている。白橿は「知らず白橿の」と続いてリズム感を出すとともに、白橿の白が雪の白さを一層強調しているので、「白橿」の表現を「厳橿の」や「橿の木の」と代えることはできない。

万葉集に収められている個人名のある歌集は、その人個人の歌の集であることが多いが、柿本人麿歌集は、柿本人麿の作の他に歌謡や他人の作もたくさん入っている。この歌も万葉集には、或いは三方沙弥(みかたのさみ)の作かとも表記されている。」 (しらかしの歌碑)

歌碑の説明にあるように、この歌の左注は、「右柿本朝臣人麻呂之歌集出也 但件一首 或本云三方沙弥作」となっている。

万葉集には二三一二から二三一五の四首が収録されている。

それらを見ていこう。

🔷我袖尓(わがそでに) 雹手走(あられたばしる) 巻隠(まきかくし) 不消有(けたずてあらむ) 妹為見(いもがみむため) (巻十 二三一二)

袖に霰がほとばしって来た。それを袖に巻き入れて隠すので消えないでほしい。いとしい人が見られるように。冷たい霰に対し逆にいとしい人への熱い思いがほとばしる歌である。

🔷足曳之(あしびきの) 山鴨高(やまかもたかき) 巻向之(まきむくの) 木志乃子松二(きしのこまつに) 三雪落來(みゆきふりけり) (巻十 二三一三)

山がかくも高いからか、巻向山の崖の小松に雪が降ったよ。「あしびきの山かも高き」と歌っているところに、親しみとある種や畏敬の気持ちも現れている。「みゆきふりけり」と、美しい自然描写が感じられる歌である。

🔷巻向之(まきむくの) 檜原毛未(えばらもいまだ) 雲居者(くもいねば) 子松之末由(こまつがうれゆ) 沫雪流(あわゆきながる) (巻十 二三一四)

巻向山のヒノキ林に、まだ雲がかかってもいないのに、このような小さな松の梢に沫雪(あわゆき)が流れるように降っている。樹々の木立の高いヒノキ林に雲もかかっていないのに、こじんまりした小さな松の梢に雪が、とある種の厳粛感と間近な小さな松の梢に沫雪が降っていると比較対比を織り交ぜた自然描写の歌である。

参考文献

★万葉の小径 しらかしの歌碑

★「萬葉集」 鶴 久 森山 隆 編 (桜楓社)

★「大和万葉ーその歌の風土」 堀内 民一 著 (創元社