万葉集の歌碑めぐり

万葉歌碑をめぐり、歌の背景等を可能な限り時間的空間的に探索し、万葉集の万葉集たる所以に迫っていきたい!

万葉集の世界に飛び込もう(その3352)―万葉一日一葉 「植物で見る万葉の世界」(國學院大學「万葉の花の会」発行)より」―からあゐ[ケイトウ]

●歌は、「秋さらば移しもせむと我が蒔きし韓藍の花を誰れか摘みけむ(作者未詳 7-1362)」である。

「からあゐ[ケイトウ]」 兵庫県加古郡稲美町 稲美中央公園万葉の森にて撮影 
20200702撮影



 

 

 「例歌は、秋がきたら染料にでもしようと蒔いておいた韓藍(からあい)の花を誰が摘んでしまったのであろうか、の意である。集中、譬喩歌として納められている。譬喩歌は相聞(そうもん)の情を表に表現せず、他のことにかこつけて譬喩的に表現する。従って『韓藍の花』を女性に例え、将来妻にと思っていたのに誰かに先取りされてしまったくやしい思いがこの歌に込められている。『韓藍』は韓の国から渡来した藍(染料になる草の意)で、現在のケイトウのことである。ケイトウは『鶏頭』と書くが、雄鶏のトサカのこと。この花軸が帯化(石化)して鶏のトサカに似ているためにトサカグサ・ケイトウカなどと呼ばれた。・・・色は栽培種では黄・白などもあるが鮮やかな赤が基本である。これを摺り染めの材とした・・・この鮮やかな赤の色が熱烈な恋心を表し、または若い美しい女性を表すものとされた。集中の4首もともに相聞の歌である。(後略)」(「植物で見る万葉の世界」(國學院大學「万葉の花の会」発行)より)

 

 

●歌をみていこう。

◆秋去者 影毛将為跡 吾蒔之 韓藍之花乎 誰採家牟

       (作者未詳 巻七 一三六二)

 

≪書き下し≫秋さらば移(うつ)しもせむと我(わ)が蒔(ま)きし韓藍(からあゐ)の花を誰(た)れか摘(つ)みけむ

 

(訳)秋になったら移し染めにでもしようと、私が蒔いておいたけいとうの花なのに、その花をいったい、どこの誰が摘み取ってしまったのだろう。(「万葉集 二」 伊藤 博 著 角川ソフィア文庫より)

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(注)からあゐ【韓藍】〘名〙:① (外来の藍の意。その紅色の花汁をうつし染めに用いたところから) 植物「けいとう(鶏頭)」の古名。《季・秋》② 美しい藍色。 [補注](①について) 異説として、鴨頭草(つきくさ)(=露草(つゆくさ))とする説、呉藍(くれない)(=紅花(べにばな))とする説などがあるが、上代の用例による、種子をまいて、秋に紅色の花が咲き、うつし染めにするという条件には、露草、紅花ともに合致しない。(コトバンク 精選版 日本国語大辞典)

(注)移しもせむ:移し染めにしようと。或る男にめあわせようとすることの譬え。(伊藤脚注)

(注の注)うつす 【移す】他動詞:①動かす。移動させる。置き変える。②流罪にする。③(心を)動かす。心変わりする。気をとられる。④しみ込ませる。⑤(時を)過ごす。経過させる。⑥物の怪(け)をほかにのりうつらせる。(weblio古語辞典 学研全訳古語辞典)ここでは➃の意

(注)誰(た)れか摘(つ)みけむ:あらぬ男に娘を捕られた親の気持ち。(伊藤脚注)

 

 

●当該歌の歌碑をみてみよう。

■滋賀県東近江市糠塚町 万葉の森船岡山万葉歌碑■

滋賀県東近江市糠塚町 万葉の森船岡山万葉歌碑(作者未詳 7-1362) 
20191023撮影



 

 

■奈良市春日野町 春日大社神苑萬葉植物園万葉歌碑(プレート)■

奈良市春日野町 春日大社神苑萬葉植物園万葉歌碑(プレート)(作者未詳 7-1362) 20210427撮影

 

■兵庫県加古郡稲美町 稲美中央公園万葉の森万葉歌碑■

兵庫県加古郡稲美町 稲美中央公園万葉の森万葉歌碑(作者未詳 7-1362) 
20200702撮影

 

■松山市御幸町 護国神社・万葉苑万葉歌碑(プレート)■

松山市御幸町 護国神社・万葉苑万葉歌碑(プレート)(作者未詳 7-1362) 
20220922撮影



 

 

■高知県大豊町粟生 土佐豊永万葉植物園万葉歌碑■

高知県大豊町粟生 土佐豊永万葉植物園万葉歌碑(作者未詳 7-1362) 
20221130撮影



 

 

■国分寺市西元町 国分寺万葉庭園万葉歌碑(プレート)■

国分寺市西元町 国分寺万葉庭園万葉歌碑(プレート)(作者未詳 7-1362) 
20251122撮影

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(参考文献)

★「萬葉集」 鶴 久・森山 隆 編 (桜楓社)

★「万葉集 二」 伊藤 博 著 (角川ソフィア文庫)

★「植物で見る万葉の世界」 (國學院大學「万葉の花の会」発行)

★「weblio古語辞典 学研全訳古語辞典」

 

万葉集の世界に飛び込もう(その3351)―万葉一日一葉 「植物で見る万葉の世界」(國學院大學「万葉の花の会」発行)より」―かほばな[ヒルガオ]

●歌は、「高円の野辺のかほ花面影に見えつつ妹は忘れかねつも(大伴家持 8-1630)」である。

「かほばな[ヒルガオ]」 「広島大学HP」より引用させていただきました。

 

 「・・・ヒルガオはヒルガオ科の蔓性多年草で原野に自生する。細い蔓は地面を這ったり、上に伸びて行く。地下茎は長く横に這い、葉は10cmほど、矢じりの形をしている。花はアサガオに似て小形で、・・・日中に花を咲かせ夜にはしぼんでしまうので、ヒルガオと呼ばれる。・・・例歌は、大伴家持が坂上大嬢(さかのうえのおおいらつめ)に贈った歌の反歌で、集中には他に3首が歌われている。家持は、野辺に咲いている美しいヒルガオをみて、顔花のように、面影にちらついて、あなたのことは忘れられないと歌っている。(後略)」(「植物で見る万葉の世界」(國學院大學「万葉の花の会」発行)より)

 

 

●歌をみていこう。

◆高圓之 野邊乃容花 面影尓 所見乍妹者 忘不勝裳

       (大伴家持 巻八 一六三〇)

 

≪書き下し≫高円(たかまと)の野辺(のへ)のかほ花(ばな)面影(おもかげ)に見えつつ妹(いも)は忘れかねつも

 

(訳)高円の野辺に咲きにおうかお花、この花のように面影がちらついて、あなたは、忘れようにも忘れられない。(伊藤 博 著 「万葉集 二」 角川ソフィア文庫より)

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(注)かほ花:未詳。かきつばたほか諸説がある。上二句は序。「面影」を起しつつ、「妹」を匂わす。(伊藤脚注)

(注の注)かほ花:「かほばな」については、カキツバタ、オモダカ、ムクゲアサガオ、ヒルガオといった諸説がある。(「植物で見る万葉の世界」(國學院大學「万葉の花の会」発行))

 

この歌は、長歌(一六二九歌)の反歌である。題詞は、「大伴宿祢家持贈坂上大嬢歌一首并短歌」<大伴宿禰家持、坂上大嬢に贈る歌一首并(あは)せて短歌>である。

 

 

●当該歌の歌碑をみてみよう。

■滋賀県東近江市糠塚町 万葉の森船岡山万葉歌碑■

滋賀県東近江市糠塚町 万葉の森船岡山万葉歌碑(大伴家持 8-1630) 
20191023撮影



 

 

■兵庫県加古郡稲美町 稲美中央公園万葉の森万葉歌碑■

兵庫県加古郡稲美町 稲美中央公園万葉の森万葉歌碑(大伴家持 8-1630) 
20200702撮影



 

 

■奈良市春日野町 春日大社神苑萬葉植物園万葉歌碑(プレート)■

奈良市春日野町 春日大社神苑萬葉植物園万葉歌碑(プレート)
(大伴家持 8-1630) 20210427撮影



 

 

■高知県大豊町粟生 土佐豊永万葉植物園万葉歌碑■

高知県大豊町粟生 土佐豊永万葉植物園万葉歌碑(大伴家持 8-1630) 
20221130撮影



 

 

■千葉県袖ケ浦市下新田 袖ヶ浦公園万葉植物園万葉歌碑(プレート)■

千葉県袖ケ浦市下新田 袖ヶ浦公園万葉植物園万葉歌碑(プレート)
(大伴家持 8-1630) 20230926撮影

 

■国分寺市西元町 国分寺万葉庭園)万葉歌碑(プレート)■

国分寺市西元町 国分寺万葉庭園)万葉歌碑(プレート)(大伴家持 8-1630) 
20251122撮影



 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(参考文献)

★「萬葉集」 鶴 久・森山 隆 編 (桜楓社)

★「万葉集 二」 伊藤 博 著 (角川ソフィア文庫)

★「植物で見る万葉の世界」 (國學院大學「万葉の花の会」発行)

★「広島大学HP]

 

 

 

 

万葉集の世界に飛び込もう(その3350)―万葉一日一葉 「植物で見る万葉の世界」(國學院大學「万葉の花の会」発行)より」―おほゐぐさ[イグサ]

●歌は、「上つ毛野伊奈良の沼の大藺草外に見しよは今こそまされ(作者未詳 14-3417)」である。

「おほゐぐさ[イグサ]」 「庭木図鑑(植木ペディアHP)」より引用させていただきました。



 

 

 「『おほゐぐさ』は『藺草(いぐさ)』のことで、『太藺(ふとい)』とも呼ばれる。カヤツリグサ科の多年生植物。沼などの湿地に群生して、茎は丸く細長い。丈は、1m以上になる。夏には黄褐色の花を付ける。茎は、敷物の材料。藺草は古代の人たちの生活必需品であったと思われるが、藺草の詠まれた歌は例歌の1首のみである。今日では藺草といえば畳の表面を覆う材料であるが、古代の畳は菅(すが)、動物の皮、太糸の絹布などが用いられた。藺草は、農作業に用いる敷物の材料とされたのであろう。例歌は、東歌。上野(かみつけ)の国(現、群馬県)の22首の中の1首。・・・当該歌は、伊奈良の沼に生える藺草をいつも遠くから見ていたのだが、このごろは、それがとても素晴らしいものであることに気がついたという。もちろん、藺草を思う人に譬えた恋歌である。藺草が恋する人に見えるとは、何と素敵な比喩ではないか。」(「植物で見る万葉の世界」(國學院大學「万葉の花の会」発行)より)

 

 

●歌をみていこう。

◆可美都氣努 伊奈良能奴麻乃 於保為具左 与曽尓見之欲波 伊麻波曽麻左礼  柿本朝臣人麻呂歌集出也

       (柿本人麻呂歌集 巻十四 三四一七)

 

≪書き下し≫上(かみ)つ毛(け)野(の)伊奈良(いなら)の沼の大藺草(おほゐぐさ)外(よそ)に見しよは今こそまされ 柿本朝臣人麻呂が歌集に出づ

 

(訳)上野の伊奈良(いなら)の沼に生い茂る大藺草(おほゐぐさ)ではないけど、ただよそながら見ていた時よりは、我がものとした今の方が思いがつのるとは・・・。(伊藤 博 著 「万葉集 三」 角川ソフィア文庫より)

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(注)上三句は序。下二句の譬喩。(伊藤脚注)

(注)上毛野>上野 分類地名:旧国名。東山道十三か国の一つ。今の群馬県。古くは「下野(しもつけ)」と共に毛野(けの)の国に属していたが、大化改新のとき分かれて「上毛野」となった。上州(じようしゆう)。 ※「かみつけの(上毛野)」↓「かみつけ」↓「かうづけ」と変化した語。(weblio古語辞典 学研全訳古語辞典)

(注)おおゐぐさ【大藺草】〘名〙: 植物「ふとい(太藺)」の古名。(コトバンク 精選版 日本国語大辞典)

(注の注)ふとゐ【太藺/莞】:カヤツリグサ科の多年草。池沼などに生える。茎は高さ1~2メートル、円柱状で太く、中空。葉は鱗片(りんぺん)状で、褐色を帯びる。夏、黄褐色の穂をつける。おおい。おおいぐさ。まるすげ。(weblio辞書 デジタル大辞泉)

 

 

●当該歌の歌碑をみてみよう。

■滋賀県東近江市糠塚町 万葉の森船岡山万葉歌碑■

滋賀県東近江市糠塚町 万葉の森船岡山万葉歌碑(柿本人麻呂歌集 14-3417) 
20191023撮影



 

 

■奈良市春日野町 春日大社神苑萬葉植物園万葉歌碑(プレート)■

奈良市春日野町 春日大社神苑萬葉植物園万葉歌碑(プレート)
(柿本人麻呂歌集 14-3417) 20210427撮影



 

 

■島根県益田市 県立万葉植物園万葉歌碑(プレート)■

島根県益田市 県立万葉植物園万葉歌碑(プレート)(柿本人麻呂歌集 14-3417) 20211012撮影



 

 

■高知県大豊町粟生 土佐豊永万葉植物園万葉歌碑■

高知県大豊町粟生 土佐豊永万葉植物園万葉歌碑(柿本人麻呂歌集 14-3417) 
20221130撮影



 

 

■国分寺市西元町 国分寺万葉庭園万葉歌碑(プレート)■

国分寺市西元町 国分寺万葉庭園万葉歌碑(プレート)
(柿本朝臣人麻呂歌集 14-3417) 20251122撮影

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(参考文献)

★「萬葉集」 鶴 久・森山 隆 編 (桜楓社)

★「万葉集 三」 伊藤 博 著 (角川ソフィア文庫)

★「植物で見る万葉の世界」 (國學院大學「万葉の花の会」発行)

★「weblio古語辞典 学研全訳古語辞典」

★「weblio辞書 デジタル大辞泉」

★「コトバンク 精選版 日本国語大辞典」

★「庭木図鑑」 (植木ペディアHP)

万葉集の世界に飛び込もう(その3349)―万葉一日一葉 「植物で見る万葉の世界」(國學院大學「万葉の花の会」発行)より」―え[エノキ]

●歌は、「我が門の榎の実もり食む百千鳥千鳥は来れど君ぞ来まさぬ(作者未詳     16-3872)」である。

「え[エノキ]」 「庭木図鑑(植木ペディアHP)」より引用させていただきました。

 

 「・・・例歌に歌われている『榎(え)』というのは、字の通り夏の木である。男が女の家に通うというのが通常の婚姻形態であった時代である。歌意は、私の家の門の傍らに生えているエノキはたわわに実をつけていて、沢山の鳥たちが通って来て、その実をついばんでいるのに、どうしてあなたは私のもとを尋ねて来てはくれないのだろうと、足の遠のいた男に対する想いと怨みの歌である。エノキというのは、古代から現在に至るまで、日本人の生活に極めて近い樹木として親しまれてきたようである。人名・地名にもかなりみられる(後略)」(「植物で見る万葉の世界」(國學院大學「万葉の花の会」発行)より)

 

●歌をみていこう。

◆吾門之 榎實毛利喫 百千鳥 ゝゝ者雖来 君曽不来座

         (作者未詳 巻十六 三八七二)

 

≪書き下し≫我(わ)が門(かど)の榎(え)の実(み)もり食(は)む百千鳥(ももちとり)千鳥(ちとり)は来(く)れど君ぞ来(き)まさぬ

 

(訳)我が家の門口の榎(えのき)の実を、もぐように食べつくす群鳥(むらどり)、群鳥はいっぱいやって来るけれど、肝心な君はいっこうにおいでにならぬ。(伊藤 博 著 「万葉集 三」 角川ソフィア文庫より)

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(注)もり食む:もいでついばむ意か。(伊藤脚注)

(注)ももちどり 【百千鳥】名詞①数多くの鳥。いろいろな鳥。②ちどりの別名。▽①を「たくさんの(=百)千鳥(ちどり)」と解していう。③「稲負鳥(いなおほせどり)」「呼子鳥(よぶこどり)」とともに「古今伝授」の「三鳥」の一つ。うぐいすのことという。(weblio古語辞典 学研全訳古語辞典)

 

 

●当該歌の歌碑をみてみよう。

■京都府城陽市寺田 正道官衙遺跡公園万葉歌碑■

京都府城陽市寺田 正道官衙遺跡公園万葉歌碑(作者未詳 16-3872) 
20190905撮影

 

■奈良市法蓮佐保山 万葉の苑万葉歌碑(プレート)■

奈良市法蓮佐保山 万葉の苑万葉歌碑(プレート)(作者未詳 16-3872) 20200513撮影 <このような痛ましいプレートは残念である>

 

■奈良市神功 万葉の小径万葉歌碑■

奈良市神功 万葉の小径万葉歌碑(作者未詳 16-3872) 20200405撮影 <カラト古墳側のこの「榎」の歌碑の陶板が、心無い人に破壊され見るも無残な姿になっていた。それがようやく新しく設置しなおされたのである。まだカバーがかかってはいるが、大切にしたいものである。>

 

■高岡市伏木一宮 高岡市万葉歴史館万葉歌碑(プレート)■

高岡市伏木一宮 高岡市万葉歴史館万葉歌碑(プレート)(作者未詳 16-3872) 
20201105撮影



 

 

■奈良市春日野町 春日大社神苑萬葉植物園万葉歌碑(プレート)■

奈良市春日野町 春日大社神苑萬葉植物園万葉歌碑(プレート)
(作者未詳 16-3872) 20210427撮影



 

 

■静岡県浜松市浜北区 万葉の森公園万葉歌碑(プレート)■

静岡県浜松市浜北区 万葉の森公園万葉歌碑(プレート)(下)
(作者未詳 16-3872) 20220412撮影



 

 

■坂出市沙弥島 万葉樹木園万葉歌碑■

坂出市沙弥島 万葉樹木園万葉歌碑(作者未詳 16-3872) 20220714撮影

 

■高知県大豊町粟生 土佐豊永万葉植物園万葉歌碑■

高知県大豊町粟生 土佐豊永万葉植物園万葉歌碑(作者未詳 16-3872) 
20221130撮影



 

 

■国分寺市西元町 国分寺万葉庭園万葉歌碑(プレート)■

 国分寺市西元町 国分寺万葉庭園万葉歌碑(プレート)(作者未詳 16-3872) 
20251122撮影



 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(参考文献)

★「萬葉集」 鶴 久・森山 隆 編 (桜楓社)

★「万葉集 三」 伊藤 博 著 (角川ソフィア文庫)

★「植物で見る万葉の世界」 (國學院大學「万葉の花の会」発行)

★「weblio古語辞典 学研全訳古語辞典」

★「庭木図鑑」 (植木ペディアHP)

万葉集の世界に飛び込もう(その3348)―万葉一日一葉 「植物で見る万葉の世界」(國學院大學「万葉の花の会」発行)より」―うり[マクワウリ]

●歌は、「瓜食めば子ども思ほゆ栗食めばまして偲はゆいづくより来りしものぞまなかひにもとなかかりて安寐し寝さぬ(山上憶良 5-802)」である。

「うり[マクワウリ]」 「『植物で見る万葉の世界』(國學院大學「万葉の花の会」発行)」
より引用させていただきました。

 「単に『うり』という名の植物はなく、甜瓜(まくわうり)・白瓜・瓢箪などのウリ科植物の果実の総称である。・・・甜瓜は応神天皇の御代(270~310)に美濃国(現、岐阜県)真桑村で産出したのが始まりという。一方、考古学の知見では・・・わが国では古くからの栽培植物であったことが窺い知れる。・・・また瓜(甜瓜)は、西瓜と並び夏を代表する果物。淀橋成子坂には幕府の瓜畑があったことや、『瓜売りが瓜売りに来て、瓜売り残し、瓜売り帰る、瓜売りの声』と江戸の遊び言葉にもあるように、皆に愛された。」(「植物で見る万葉の世界」(國學院大學「万葉の花の会」発行)より)

 

 

●歌をみていこう。

◆宇利波米婆 胡藤母意母保由 久利波米婆 麻斯堤葱斯農波由 伊豆久欲利 枳多利斯物能曽 麻奈迦比尓 母等奈可利堤 夜周伊斯奈佐農

    (山上憶良 巻五 八〇二)

 

≪書き下し≫瓜食(うりはめ)めば 子ども思ほゆ 栗(くり)食めば まして偲(しの)はゆ いづくより 来(きた)りしものぞ まなかひに もとなかかりて 安寐(やすい)し寝(な)さぬ

 

(訳)瓜を食べると子どもが思われる。栗を食べるとそれにも増して偲(しの)ばれる。こんなにかわいい子どもというものは、いったい、どういう宿縁でどこ我が子として生まれて来たものなのであろうか。そのそいつが、やたら眼前にちらついて安眠をさせてくれない。(「万葉集 一」 伊藤 博 著 角川ソフィア文庫より)

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(注)まなかひ【眼間・目交】名詞:目と目の間。目の辺り。目の前。 ※「ま」は目の意、「な」は「つ」の意の古い格助詞、「かひ」は交差するところの意。(weblio古語辞典 学研全訳古語辞典)

(注)もとな 副詞:わけもなく。むやみに。しきりに。 ※上代語。(学研)

(注)やすい【安寝・安眠】名詞:安らかに眠ること。安眠(あんみん)。 ※「い」は眠りの意(学研)

 

 八〇〇・八〇一歌の題詞は、「惑情(わくじやう)を反(かへ)さしむる歌一首 幷せて序」と、八〇二・八〇三歌の題詞は、「「子等(こら)を思ふ歌一首 幷せて序」、八〇四・八〇五歌の題詞は、「世間(せけん)の住(とど)みかたきことを哀(かな)しぶる歌一首 幷せて序」の三群からなり、第一群が情苦、第二群が愛苦、第三群が老苦を主題として詠われているのである。

 

 

●当該歌の歌碑をみてみよう。

■滋賀県東近江市糠塚町 万葉の森船岡山万葉歌碑■

滋賀県東近江市糠塚町 万葉の森船岡山万葉歌碑(山上憶良 5-802) 
20191023撮影

 

■奈良市神功4丁目 万葉の小径万葉歌碑■

奈良市神功4丁目 万葉の小径万葉歌碑(山上憶良 5-802) 20200405撮影

 

 

■兵庫県西宮市西田町西田公園万葉植物苑万葉歌碑(プレート)■

兵庫県西宮市西田町西田公園万葉植物苑万葉歌碑(プレート)(山上憶良 5-802) 
20200603撮影

 

■愛知県蒲郡市西浦町 万葉の小径万葉歌碑(プレート)■

愛知県蒲郡市西浦町 万葉の小径万葉歌碑(プレート)(山上憶良 5-802) 
20220411撮影

 

■愛媛県西予市 三滝公園万葉の道万葉歌碑■

愛媛県西予市 三滝公園万葉の道万葉歌碑(山上憶良 5-802) 
20220921撮影



 

 

■安八郡神戸町 神戸町役場玄関ロビー万葉歌碑(壁書)■

安八郡神戸町 神戸町役場玄関ロビー万葉歌碑(壁書)(山上憶良 5-802) 
20221018撮影



 

 

■鳥取県倉吉市国府 伯耆国分寺跡北側万葉歌碑■

鳥取県倉吉市国府 伯耆国分寺跡北側万葉歌碑(山上憶良 5-802ならびに803) 20221108撮影

 

■島根県松江市東出雲町 面足山万葉公園万葉歌碑(プレート)■

島根県松江市東出雲町 面足山万葉公園万葉歌碑(プレート)(山上憶良 5-802) 
20221108撮影



 

 

■高知県大豊町粟生 土佐豊永万葉植物園万葉歌碑■

高知県大豊町粟生 土佐豊永万葉植物園万葉歌碑(山上憶良 5-802) 
20221130撮影



 

 

■名古屋市千種区東山元町 東山動植物園万葉の散歩道万葉歌碑(プレート)■

名古屋市千種区東山元町 東山動植物園万葉の散歩道万葉歌碑(プレート)
(山上憶良 5-802) 20210216撮影

 

■千葉県袖ケ浦市下新田 袖ヶ浦公園万葉植物園万葉歌碑(プレート)■

千葉県袖ケ浦市下新田 袖ヶ浦公園万葉植物園万葉歌碑(プレート)
(山上憶良 5-802) 20230926撮影



 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(参考文献)

★「萬葉集」 鶴 久・森山 隆 編 (桜楓社)

★「万葉集 一」 伊藤 博 著 (角川ソフィア文庫)

★「植物で見る万葉の世界」 (國學院大學「万葉の花の会」発行)

★「weblio古語辞典 学研全訳古語辞典」

 

万葉集の世界に飛び込もう(その3347)―万葉一日一葉 「植物で見る万葉の世界」(國學院大學「万葉の花の会」発行)より」―うも[サトイモ]

●歌は、「蓮葉はかくこそあるもの意吉麻呂が家にあるものは芋の葉にあらし(長忌寸意吉麻呂 16-3826)」である。

 

「うも[サトイモ]」 「岡山理科大学HP」より引用させていただきました。

 「・・・この『芋』が現在の『里芋』である。・・・日本にはイネよりも古く伝えられた。前からの食用の山芋(自然生(じねんじょう))に対し里(人の住む所)で栽培したので『里芋』という。主要な食物なので、まず神饌(神に供える酒食)として用いられたようだ。・・・蓮は汚い土中からきれいな花を咲かせるので、当時はまだ仏教色は少なく、美人の形容とされた。これに比べて家の古女房は芋の葉のようだとユーモラスに詠んだのである。例歌は、当時すでに芋が豊富に出回っていたことを示している。(後略)」(「植物で見る万葉の世界」(國學院大學「万葉の花の会」発行)より)

 

 

●歌をみていこう。

題詞は、「詠荷葉歌」<荷葉(はちすば)を詠む歌>である。

 

◆蓮葉者 如是許曽有物 意吉麻呂之 家在物者 宇毛乃葉尓有之

        (長忌寸意吉麻呂 巻十六 三八二六)

 

≪書き下し≫蓮葉(はちすば)はかくこそあるもの意吉麻呂(おきまろ)が家にあるものは芋(うも)の葉にあらし

 

(訳)蓮(はす)の葉というものは、まあ何とこういう姿のものであったのか。してみると、意吉麻呂の家にあるものなんかは、どうやら里芋(いも)の葉っぱだな。(「万葉集 三」 伊藤 博 著 角川ソフィア文庫より)

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(注)蓮葉:宴席の美女の譬え。(伊藤脚注)

(注の注)はちすば 【蓮葉】名詞:はすの葉。[季語] 夏。 ※歌語。(weblio古語辞典 学研全訳古語辞典)

(注)芋の葉:妻をおとしめて言った。ウモにイモを懸けるか。(伊藤脚注)

 

 蓮の葉を、宴席に侍る美女に喩え、これと比べて家に居る妻は芋の葉のようだとおとしめて笑いを誘っている宴会歌である。芋(うも)に妹(いも)を懸けたところまでなかなか洒落た歌である。

 

 この歌に関して、廣野 卓氏は、その著「食の万葉集 古代の食生活を科学する」(中公新書)のなかで、「この時代、宴席ではハスの葉に食を盛った。ハスの葉は高価だから、一般の官人の家庭ではハス葉の代わりにイモの葉を使用していたのであろう。だが、イモの葉に盛ったのでは見栄(みば)えがしない。いまも粋(いき)でないものをイモとよぶのは、万葉時代からのことらしい。」と書いておられる。

 宴席でハスに葉に盛ったのは、三八三七歌の左注に「・・・府家(ふか)に酒食(しゆし)を備へ設(ま)けて、府の官人らに饗宴(あへ)す。ここに、饌食(せんし)は盛(も)るに、皆蓮葉(はちすば)をもちてす。・・・」とあることからも当時の宴席の様子が垣間見ることができるのである。

 さらに同氏は前著のなかで、「サトイモは稲作よりも古く伝来したといわれ、この時代にサツマイモやジャガイモは、まだ伝来していないので、イモといえばサトイモをさすことになる。サトイモは薯蕷(ヤマツイモ)に対して家芋(イエツイモ)ともよばれている。名のように住居近くの菜園で栽培したイモであり、古代の重要な主食作物であった。」とも書かれている。

(注)饌食(せんし)>しょくせん【食饌】:〘名〙 食卓や膳などの上にととのえられた食物。膳部。(コトバンク 精選版 日本国語大辞典)

 

 

●当該歌の歌碑をみてみよう。

■名古屋市千種区東山元町 東山植物園万葉歌碑(プレート)■

名古屋市千種区東山元町 東山植物園万葉歌碑(プレート)
(長忌寸意吉麻呂 16-3836) 20210216撮影



 

 

■奈良市春日野町 春日大社神苑萬葉植物園万葉歌碑(プレート)■

奈良市春日野町 春日大社神苑萬葉植物園万葉歌碑(プレート)
(長忌寸意吉麻呂 16-3836) 20210427撮影



 

 

■松山市御幸町 護国神社・万葉苑万葉歌碑(プレート)■

松山市御幸町 護国神社・万葉苑万葉歌碑(プレート)(長忌寸意吉麻呂 16-3836) 20220922撮影

 

 

■高知県大豊町粟生 土佐豊永万葉植物園万葉歌碑■

高知県大豊町粟生 土佐豊永万葉植物園万葉歌碑(長忌寸意吉麻呂 16-3836) 
20221130撮影

 

■国分寺市西元町 国分寺万葉庭園万葉歌碑(プレート)■

国分寺市西元町 国分寺万葉庭園万葉歌碑(プレート)
(長忌寸意吉麻呂 16-3826) 20251122撮影

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(参考文献)

★「萬葉集」 鶴 久・森山 隆 編 (桜楓社)

★「万葉集 三」 伊藤 博 著 (角川ソフィア文庫)

★「植物で見る万葉の世界」 (國學院大學「万葉の花の会」発行)

★「食の万葉集 古代の食生活を科学する」 廣野 卓 著 (中公新書)

★「weblio古語辞典 学研全訳古語辞典」

★「コトバンク 精選版 日本国語大辞典」

★「岡山理科大学HP」

万葉集の世界に飛び込もう(その3346)―万葉一日一葉 「植物で見る万葉の世界」(國學院大學「万葉の花の会」発行)より」―いはゐづら[スベリヒユ]

●歌は、「入間道の於保屋が原のいはゐつら引かばぬるぬる我にな絶えそね(作者未詳 14-3378)」である。

「いはゐづら[スベリヒユ]」 「農林水産・食品産業技術振興協会HP」より
引用させていただきました。

 

 「『いはゐづら』は、現在のスベリヒユで田畑や路傍に生える1年草。葉や茎には水分を多量に含み、乾燥地に強く、湿地には生えない。赤味を帯びた茎は、地面をすべるように這い、枝分かれして伸びていく。・・・東歌には例歌の武蔵国と、もう1首は上野国(かみつけのくに)の歌・・・と地名を異にした類歌で2首歌われている。ともに歌意は、スベリヒユのように、引いたならずるずるとどこまでもついて来て私との仲を絶やさないで下さい、と歌っている。現代人にとってありがたくない草が、万葉びとには恋心の譬喩表現だった。路傍の草をいとおしむ素朴な生活が偲ばれる。『引く』は男が女をさそうこと、求婚を意味していた。」(「植物で見る万葉の世界」(國學院大學「万葉の花の会」発行)より)

 

 

●歌をみていこう。

◆伊利麻治能 於保屋我波良能 伊波為都良 比可婆奴流ゝゝ 和尓奈多要曽祢

        (作者未詳 巻十四 三三七八)

 

≪書き下し≫入間道(いりまぢ)の於保屋(おほや)が原(はら)のいはゐつら引かばぬるぬる我(わ)にな絶(た)えそね

 

(訳)入間の地の於保屋(おおや)が原のいわい葛(づら)のように、引き寄せたならそのまま滑らかに寄り添って寝て、私との仲を絶やさないようにしておくれ。(伊藤 博 著 「万葉集 三」 角川ソフィア文庫より)

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(注)於保屋が原:入間郡越生町大谷あたりか。(伊藤脚注)

(注)いはゐつら:未詳。蔓性植物。上三句は序。「引かばぬるぬる」を起こす。(伊藤脚注)

(注の注)いわゐづら:現在のスベリヒユ。赤みを帯びた茎は、地面をすべるように這い、枝分かれしてのびていく。(「植物で見る万葉の世界」 國學院大學 萬葉の花の会 著 )

(注)引かばぬるぬる:さそったらすなおに寄り添って寝て。「ぬる」はゆるみほどける意。「寝る」を懸ける。(伊藤脚注)

(注の注)ぬる 自動詞:ほどける。ゆるむ。抜け落ちる。(weblio古語辞典 学研全訳古語辞典) 

(注)な 副詞:①…(する)な。…(してくれる)な。▽すぐ下の動詞の表す動作を禁止する意を表す。◇上代語。②〔終助詞「そ」と呼応した「な…そ」の形で〕…(し)てくれるな。▽終助詞「な」に比してもの柔らかで、あつらえに近い禁止の意を表す。 ⇒語法:下に動詞の連用形(カ変・サ変は未然形)を伴う。 ⇒注意:禁止の終助詞「な」(動詞型活用語の終止形に接続)と混同しないこと。 ⇒参考:①②とも、上代から用いられているが、②は中古末期以降、「な」が省略され、「そ」のみで禁止を表す用法も見られる。(学研)ここでは②の意

 

 

●当該歌の歌碑をみてみよう。

■兵庫県加古郡稲美町 稲美中央公園万葉の森万葉歌碑■

兵庫県加古郡稲美町 稲美中央公園万葉の森万葉歌碑(作者未詳 14-3378) 
20200702撮影



 

 

■奈良市春日野町 春日大社神苑萬葉植物園万葉歌碑(プレート)■

奈良市春日野町 春日大社神苑萬葉植物園万葉歌碑(プレート)
(作者未詳 14-3378) 20210427撮影



 

 

■松山市御幸町 護国神社・万葉苑万葉歌碑(プレート)■

松山市御幸町 護国神社・万葉苑万葉歌碑(プレート)(右側)
(作者未詳 14-3378) 20220922撮影

 

■高知県大豊町粟生 土佐豊永万葉植物園万葉歌碑■

高知県大豊町粟生 土佐豊永万葉植物園万葉歌碑(作者未詳 14-3378) 
20221130撮影

 

■国分寺市西元町 国分寺万葉庭園万葉歌碑(プレート)■

国分寺市西元町 国分寺万葉庭園万葉歌碑(プレート)(作者未詳 14-3378)  
20251122撮影

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(参考文献)

★「萬葉集」 鶴 久・森山 隆 編 (桜楓社)

★「万葉集 三」 伊藤 博 著 (角川ソフィア文庫)

★「植物で見る万葉の世界」 (國學院大學「万葉の花の会」発行)

★「weblio古語辞典 学研全訳古語辞典」

★「農林水産・食品産業技術振興協会HP」