万葉集の歌碑めぐり

万葉歌碑をめぐり、歌の背景等を可能な限り時間的空間的に探索し、万葉集の万葉集たる所以に迫っていきたい!

万葉集の世界に飛び込もう―万葉歌碑を訪ねて(その2538)―

●歌は、「多摩川にさらす手作りさらさらになにぞこの子のここだ愛しき」である。

 

 

東京都狛江市元和泉 小田急狛江駅北口広場万葉歌碑(プレート) 20231119撮影


●歌碑(プレート)は、東京都狛江市元和泉 小田急狛江駅北口広場にある。

 

●歌をみていこう。

 

◆多麻河泊尓 左良須弖豆久利 佐良左良尓 奈仁曽許能兒乃 己許太可奈之伎

        (作者未詳 巻十四 三三七三)

 

≪書き下し≫多摩川(たまがは)にさらす手作(てづく)りさらさらになにぞこの子のここだ愛(かな)しき

 

(訳)多摩川にさらす手織の布ではないが、さらにさらに、何でこの子がこんなにもかわいくってたまらないのか。(「万葉集 三」 伊藤 博 著 角川ソフィア文庫より)

(注)上二句は序。「さらさらに」を起こす。(伊藤脚注)

(注)てづくり【手作り】名詞:①手製。自分の手で作ること。また、その物。②手織りの布。(weblio古語辞典 学研全訳古語辞典)ここでは②の意

(注)さらさら【更更】副詞:①ますます。改めて。②〔打消や禁止の語を伴って〕決して。(学研)ここではここでは①の意

(注)さらす【晒す・曝す】他動詞:①外気・風雨・日光の当たるにまかせて放置する。②布を白くするために、何度も水で洗ったり日に干したりする。③人目にさらす。( 学研)ここでは②の意

(注)ここだ【幾許】副詞:①こんなにもたくさん。こうも甚だしく。▽数・量の多いようす。②たいへんに。たいそう。▽程度の甚だしいようす。 ※上代語。(学研) ここでは②の意

 

 リズミカルで、心情そのままの思いを詠っている。労働作業歌であろう。

 

 この歌については、拙稿ブログ「万葉歌碑を訪ねて(その1132)」で、武蔵の国の歌九首とともに紹介している。

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 三三七三歌を読んでリズムを楽しんでいると、巻一 五四の坂門人足の「巨勢山のつらつら椿つらつらに見つつ偲はな巨勢の春野を」が頭に浮かんでくる。

 

 「さらさら」と歌われている歌をみてみよう。

◆石上 振乃神杉 神備西 吾八更ゝ 戀尓相尓家留

        (作者未詳 巻十 一九二七)

 

≪書き下し≫石上(いそのかみ)布留(ふる)の神杉(かむすぎ)神(かむ)びにし我(あ)れやさらさら恋にあひにける

 

(訳)石上の布留の社の年経た神杉ではないが、老いさらばえてしまった私が、今また改めて、恋の奴にとっつかまってしまいました。(伊藤 博著「万葉集 二」角川ソフィア文庫より)

(注)石上布留の神杉:奈良県天理市石上神宮一帯。上二句は序。「神びにし」を起す。(伊藤脚注)

(注)神びにし:下との関係では年老いるの意。(伊藤脚注)

(注)さらさら【更更】副詞:①ますます。改めて。②〔打消や禁止の語を伴って〕決して。(学研)ここでは①の意

 

 この歌については、拙稿ブログ「万葉歌碑を訪ねて(その54改)」で紹介している。

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東京都狛江市元和泉 小田急狛江駅北口広場にある「万葉をしのぶ乙女像『たまがわ』」を見た後は、「玉川碑」へ。六郷さくら通りを歩いて目指す!

 

 

 

 

 

 

 

 

(参考文献)

★「萬葉集」 鶴 久・森山 隆 編 (桜楓社)

★「万葉集 二」 伊藤 博 著 (角川ソフィア文庫

★「万葉集 三」 伊藤 博 著 (角川ソフィア文庫

★「weblio古語辞典 学研全訳古語辞典」

★「狛江市HP]