万葉集の歌碑めぐり

万葉歌碑をめぐり、歌の背景等を可能な限り時間的空間的に探索し、万葉集の万葉集たる所以に迫っていきたい!

2024-01-01から1年間の記事一覧

万葉集の世界に飛び込もう(その2766)―書籍掲載歌を中軸に(Ⅱ)―

●歌は、「あぢの棲む渚沙の入江の荒礒松我を待つ子らはただひとりのみ(作者未詳 11-2751)」である。 本稿から「愛知県・静岡県」になります。 【すさの入江】 「作者未詳(巻十一‐二七五一)(歌は省略)名古屋市内の万葉故地の『桜田(さくらだ)』・・・…

万葉集の世界に飛び込もう(その2765)―書籍掲載歌を中軸に(Ⅱ)―

●歌は、「あかねさす紫野行き標野行き野守は見ずや君が袖振る(額田王 1-20)」ならびに「紫草のにほえる妹を憎くあらば人妻故に我れ恋ひめやも(大海人皇子 1-21)」である。 【蒲生野】 「額田王(巻一‐二〇)・大海人皇子(巻一‐二一)(いずれも歌は省略…

万葉集の世界に飛び込もう(その2764)―書籍掲載歌を中軸に(Ⅱ)―

●歌は、「塩津山打ち越え行けば我が乗れる馬ぞつまづく家恋ふらしも(笠金村 3-365)」である。 【塩津山】 「笠金村(巻三‐三六五)(歌は省略)近江から越前に越えるのには大要三通りがある。一は湖北塩津から沓掛(くつかけ)を経て新道野(しんどうの)…

万葉集の世界に飛び込もう(その2763)――書籍掲載歌を中軸に(Ⅱ)―

●歌は、「伊香山野辺に咲きたる萩見れば君が家なる尾花し思ほゆ(笠金村 8-1533)」である。 【伊香山】 「笠金村(巻八‐一五三三)(歌は省略)伊香(いかご)山は賤(しず)ヶ岳の南嶺といわれる。・・・山麓に・・・式内伊香後具神社がある。そこから賤ヶ…

万葉集の世界に飛び込もう(その2762)―書籍掲載歌を中軸に(Ⅱ)―

●歌は、「高島の安曇の港を漕ぎ過ぎて塩津菅浦今か漕ぐらむ(小弁 9-1734)」である。 【塩津菅浦】 「小弁(巻九‐一七三四)(歌は省略)・・・当時、湖西を越前に向う通路は、海津から愛発(あらち)山越をするか、“あどの湊”を出て、菅浦・竹生島の間をす…

万葉集の世界に飛び込もう(その2761)―書籍掲載歌を中軸に(Ⅱ)―

●歌は、「率ひて漕ぎ去にし舟は高島の安曇の港に泊てにけむかも(高市黒人 9-1718)」である。 【あどの湊】 「高市黒人(巻九‐一七一八)(歌は省略) 『阿渡(あど)の水門(みなと)』は、高島郡の安曇川(あどがわ)の河口付近にあった湊であろう。・・…

万葉集の世界に飛び込もう(その2760)―書籍掲載歌を中軸に(Ⅱ)―

●歌は、「いづくにか我が宿りしせむ高島の勝野の原にこの日暮れなば(高市黒人 3-275)」である。 【勝野の原】 「高市黒人(巻三‐二七五)(歌は省略)・・・勝野はひところまで舟運の港だったがいまは小さな漁舟の泊り場だ。かつての『大御舟(おおみふね…

万葉集の世界に飛び込もう(その2759)―書籍掲載歌を中軸に(Ⅱ)―

●歌は、「楽浪の比良山風の海吹けば釣りする海人の袖返る見ゆ(槐本 9-1715)」である。 「槐本(巻九‐一七一五)(歌は省略)・・・比良の暮雪ともいわれるように、裏日本からの寒風は晩春までも連嶺に雪をのこし、早春三月ごろには冷たい比良おろしは湖上…

万葉集の世界に飛び込もう(その2758)―書籍掲載歌を中軸に(Ⅱ)―

●歌は、「楽浪の志賀の唐崎幸くあれど大宮人の舟待ちかねつ(柿本人麻呂 1-30)」ならびに「楽浪の志賀の大わだ淀むとも昔の人にまたも逢はめやも(柿本人麻呂 1-31)」である。 【唐崎】 「柿本人麻呂(巻一‐三〇)(巻一‐三一)(いずれも歌は省略)・・・…

万葉集の世界に飛び込もう(その2757)―書籍掲載歌を中軸に(Ⅱ)―

●歌は、「後れ居て恋ひつつあらずは追ひ及かむ道の隈みに標結へ我が背(但馬皇女 2-115)」である。 【志賀山寺址】 「但馬皇女(巻二‐一一五)(歌は省略)志賀山寺(しがのやまでら)は天智七年(六六八)に大津宮の西北の山地に建てられた崇福寺である。…

万葉集の世界に飛び込もう(その2756)―書籍掲載歌を中軸に(Ⅱ)―

●歌は、「・・・整ふる 鼓の音は 雷の 声と聞くまで 吹き鳴せる 小くだの音も <一には「笛の音は」といふ> 敵(あた)見たる 虎か吼(ほ)ゆると 諸人(もろひと)の おびゆるまでに <一には「聞き惑ふまで」といふ> ささげたる 旗の靡きは 冬こもり 春…

万葉集の世界に飛び込もう(その2755)―書籍掲載歌を中軸に(Ⅱ)―

●歌は、「玉だすき畝傍の山の橿原のひじりの御代ゆ生れましし神のことごとつがの木のいやつぎつぎに天の下知らしめししを天にみつ大和を置きてあをによし奈良山を越えいかさまに思ほしめせかあまざかる鄙にはあれどいはばしる近江の国の楽浪の大津の宮の天の…

万葉集の世界に飛び込もう(その2754)―書籍掲載歌を中軸に(Ⅱ)―

●歌は、「近江の海夕波千鳥汝が鳴けば心もしのにいにしへ思ほゆ(柿本人麻呂 3-266)」である。 【淡海の海】 「柿本人麻呂(巻三‐二六六)(歌は省略)国名の『近江』の文字は、浜名湖のある『遠(とほ)つ淡海(あふみ)』(遠江)に対して『近(ちか)つ…

万葉集の世界に飛び込もう(その2753)―書籍掲載歌を中軸に(二)―

●歌は、「逢坂をうち出でて見れば近江の海白木綿花に波立ちわたる(作者未詳 13-3238)」である。 本稿から「滋賀県」である。 【逢坂山】 「作者未詳(巻十三‐三二三八)(歌は省略)逢坂山(相坂・合坂とも)は山城・近江両国の境にあって、大化二年(六四…

万葉集の世界に飛び込もう(その2752)―書籍掲載歌を中軸に(Ⅱ)―

●歌は、「春の日の 霞める時に 住吉の 岸に出で居て 釣船の とをらふ見れば いにしへの ことぞ思ほゆる 水江の浦の島子の 鰹釣り 鯛釣りほこり 七日まで 家にも来ずて 海境を 過ぎて漕ぎ行くに 海神の 神の女に たまさかに い漕ぎ向ひ 相とぶらひ 言成りしか…

万葉集の世界に飛び込もう(その2751)―書籍掲載歌を中軸に(Ⅱ)―

●歌は、「やすみしし 我ご大君の 畏きや 御陵仕ふる 山科の 鏡の山に 夜はも 夜のことごと 昼はも 日のことごと 哭のみを 泣きつつありてや ももしきの 大宮人は 行き別れなむ(額田王 2-155)」である。 【天智天皇陵】 「額田王(巻二‐一五五)(歌は省略…

万葉集の世界に飛び込もう(その2750)―書籍掲載歌を中軸に(Ⅱ)―

●歌は、「そらみつ大和の国あをによし奈良山越えて山背の管木の原ちはやぶる宇治の渡り岡屋の阿後尼の原を千年に欠くることなく万代にあり通はむと山科の 石田の杜のすめ神に幣取り向けて我れは越え行く逢坂山を(作者未詳 13-3236)」である。 【石田の社】…

万葉集の世界に飛び込もう(その2749)―書籍掲載歌を中軸に(Ⅱ)―

●歌は、「宇治川を舟渡せをと呼ばへども聞こえずあらし楫の音もせず(作者未詳 7-1138)」である。 【宇治川(二)】 「作者未詳(巻七‐一一三八)(歌は省略) 宇治川は大和・近江間の交通路上、木津川(泉川)とともに渡らねばならぬ交通の要衝だった。・…

万葉集の世界に飛び込もう(その2748)―書籍掲載歌を中軸に(Ⅱ)―

●歌は、「もののふの八十宇治川の網代木にいさよふ波のゆくへ知らずも(柿本人麻呂 3-264)」である。 【宇治川(一)】 「柿本人麻呂(巻三‐二六四)(歌は省略)・・・久世(くぜ)の低い丘陵に『久世(くぜ)の社(やしろ)』(巻七‐一二八六)と見られる…

万葉集の世界に飛び込もう(その2747)―書籍掲載歌を中軸に(Ⅱ)―

●歌は、「早来ても見てましものを山背の高の槻群散にけるかも(高市黒人 3-277)」である。 【高の槻群】 「高市黒人(巻三‐二七七)(歌は省略)この歌の『高(たか)の槻群(つきむら)は、・・・生田耕一氏の研究によって、綴喜(つづき)郡多河(たか)…

万葉集の世界に飛び込もう(その2746)―書籍掲載歌を中軸に(Ⅱ)―

●歌は、「泉川行く瀬の水の絶えばこそ大宮ところうつろひゆかめ(田辺福麻呂 6-1054)」である。 【泉川】 「田辺福麻呂(巻六‐一〇五四)(歌は省略)木津(きづ)川は古く山背(やましろ)川といわれたが、いまの相楽郡木津町・加茂町<いずれも現木津川市…

万葉集の世界に飛び込もう(その2745)―書籍掲載歌を中軸に(Ⅱ)―

●歌は、「我が大君天知らさむと思はねばおほにぞ見ける和束杣山(大伴家持 3-476)」ならびに「あしひきの山さえ光ろ咲く花の散りぬるごとき我が大君かも(大伴家持 3-477)」である。 【安積皇子墓】 「大伴家持(巻三‐四七六・四七七)(歌は省略)天平一…

万葉集の世界に飛び込もう(その2744)―書籍掲載歌を中軸に(Ⅱ)―

●歌は、「狛山に鳴くほととぎす泉川渡りを遠みここに通はず(田辺福麻呂 6-1058)」である。 【狛山】 「田辺福麻呂(巻六‐一〇五八)(歌は省略)・・・鹿背山の頂上から北方、木津川(泉川)をはさんで対岸に見えている山が狛山(こまやま)である。木津か…

万葉集の世界に飛び込もう(その2743)―書籍掲載歌を中軸に(Ⅱ)―

●歌は、「鹿背の山木立を茂み朝さらず来鳴き響もすうぐひすの声(田辺福麻呂 6-1057)」である。 【鹿背山】 「田辺福麻呂(巻六‐一〇五七)(歌は省略)鹿背山は木津川市と相楽郡加茂町との間にある山(二〇三メートル)で、奈良の山の丘陵つづきが北に突出…

万葉集の世界に飛び込もう(その2742)―書籍掲載歌を中軸に(Ⅱ)―

●歌は、「三香の原久邇の都は荒れにけり大宮人のうつろひぬれば(田辺福麻呂 6-1060)」ならびに「咲く花の色は変らずももしきの大宮人ぞたち変りける(田辺福麻呂 6-1061)」である。 【恭仁京(二)】 「田辺福麻呂歌集(巻六‐一〇六〇)(同‐一〇六一)(…

万葉集の世界に飛び込もう(その2741)―書籍掲載歌を中軸に(Ⅱ)―

●歌は、「今造る久邇の都は山川のさやけさ見ればうべ知らすらし(大伴家持 6-1037)」である。 【恭仁京(一)】 「大伴家持(巻六‐一〇三七)(歌は省略)・・・奈良の時代といえば、『咲く花のにほふがごとく』が想起され、天平の文化の絢爛(けんらん)さ…

万葉集の世界に飛び込もう(その2740)―書籍掲載歌を中軸に(Ⅱ)―

●歌は、「釧着く答志の崎に今日もかも大宮人の玉藻刈るらむ(柿本人麻呂 1-41)」である。 【手節の崎】 「柿本人麻呂(巻一‐四一)(歌は省略)『手節(たふし)の崎』は、鳥羽港から北東の海上にある答志(とうし)島(鳥羽市)のどこかの岬である。・・・…

万葉集の世界に飛び込もう(その2739)―書籍掲載歌を中軸に(Ⅱ)―

●歌は、「嗚呼見の浦に舟乗りすらむをとめらが玉裳の裾に潮満つらむか(柿本人麻呂 1-40)」である。 【あみの浦】 「柿本人麻呂(巻一‐四〇)(歌は省略)持統六年(六九二)三月、伊勢行幸のおり、飛鳥京に留まっていた人麻呂は、志摩の海を思って三首の歌…

万葉集の世界に飛び込もう(その2738)―書籍掲載歌を中軸に(Ⅱ)―

●歌は、「伊勢の海の沖つ白波花にもが包みて妹が家づとにせむ(安貴王 3-306)」である。 【伊勢の海】 「安貴王(あきのおほきみ)(巻三‐三〇六)(歌は省略)伊勢にはたびたびの行幸があった。・・・持統六年(六九二)大宝二年(七〇二)養老二年(七一…

万葉集の世界に飛び込もう(その2737)―書籍掲載歌を中軸に(Ⅱ)―

●歌は、「我が背子を大和へ遣るとさ夜更けて暁露に我が立ち濡れし(大伯皇女 2-105)ならびに「ふたり行けど行き過ぎかたき秋山をいかにか君がひとり越ゆらむ(大伯皇女 2-106)」である。 【伊勢神宮】 「大伯皇女(おほくのひめみこ)(巻二‐一〇五ならび…