●歌は、「をみなへし咲きたる野辺を行き廻り君を思ひ出た廻り来ぬ」である。
●歌をみていこう。
題詞は、「八月七日夜集于守大伴宿祢家持舘宴歌」<八月の七日の夜に、守(かみ)大伴宿禰家持が館(たち)に集(つど)ひて宴(うたげ)する歌>である。
(注)家持出発後一月め。(伊藤脚注)
(注)館:二上山東麓勝興寺あたりという。(伊藤脚注)
(注)宴:家持を歓迎する宴であろう。越中歌壇の出発を告げる大切な宴であった。(伊藤脚注)
◆乎美奈敝之 左伎多流野邊乎 由伎米具利 吉美乎念出 多母登保里伎奴
(大伴池主 巻十七 三九四四)
≪書き下し≫をみなへし咲きたる野辺(のへ)を行き廻(めぐ)り君を思ひ出(で)た廻(もとほ)り来(き)ぬ
(訳)女郎花の咲き乱れている野辺、その野辺を行きめぐっているうちに、あなたを思い出して廻り道をして来てしまいました。(伊藤 博 著 「万葉集 四」 角川ソフィア文庫より)
(注)廻(もとほ)り来(き)ぬ:廻り道をしてわざわざ立ち寄ってしまいました。このように歌うのが挨拶歌の型。(伊藤脚注)
この歌については、拙稿ブログ「万葉歌碑を訪ねて(その2498)」において、これまでの歌碑巡りの経験を踏まえて追記や修正を加えながら改めて全歌(三九四三から三九五五歌まで)見直し紹介している。
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「をみなへし」を詠った集中歌十四首については、拙稿ブログ「万葉歌碑を訪ねて(その1178)」で紹介している。
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大伴池主の歌ならびに漢詩は、拙稿ブログ「万葉歌碑を訪ねて(その1798)」で紹介している。
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■かたかご(カタクリ)の花■
インスタにカタクリの花がアップされていた。
いつかは見てみたいと思っていた花である。
調べてみると、今が見ごろである。
見たい、咲いている所を探す。何と家から車で30分くらいのところにある「大阪公立大学付属植物園」(大阪府交野市私市)で見ごろとの記事を見つける。
家内もかねてから見たい、と言っていたので、「見に行くか?」「すぐ準備します。」
車に乗り込む。
「大阪公立大学付属植物園HP」によると、「当園は1950年に大阪市立大学理工学部附属の研究施設として発足し、以来、植物学の基礎研究の対象として多くの植物の収集と保存に努めてきました。なかでも、日本産樹木の収集には力を注ぎ、野外で生育可能な300種以上を植栽し、わが国の代表的な11種類の樹林型を復元しています。また、メタセコイアに代表される新第三紀の森林復元も行っています。これらの樹林型の中には、過去に大阪にも分布していたものが多数含まれます。植物園では、それらの復元樹林の推移を長期的に観察することで、環境変動と植生との関わりを実証的に解明しようとしています。」と書かれている。
入園料350円(大阪府民で65歳以上は150円)*2と駐車場料金500円を支払い、園内を散策する。
今まで写真でしか見たことがなかった「かたくりの花」が目の前にある。思っていたより大きめである。
カタクリの花の前に座り込んでカメラをのぞき込んでいる女の方がいらっしゃった。カメラアングルが半端じゃない。
ほぼ毎日通っているそうである。
今日が一番ですよ、と教えていただく。しかも、「よろしかったら写真をとりますよ。」とおっしゃっていただく。お言葉に甘えて我ら二人の写真を撮っていただいた。カタクリを背景に。
二人の写真は何年ぶりだろう・・・
大伴家持の四二四三歌「もののふの八十娘子らが汲み乱ふ寺井の上の堅香子の花」については、高岡市伏木古国府 勝興寺寺井の跡の歌碑とともに拙稿ブログ「万葉歌碑を訪ねて(その823)」紹介している。
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(参考文献)
★「萬葉集」 鶴 久・森山 隆 編 (桜楓社)
★「weblio古語辞典 学研全訳古語辞典」
★「大阪公立大学付属植物園HP」