●歌は、「皆人の待ちし卯の花散りぬとも鳴くほととぎす我れ忘れめや」である。
●歌をみていこう。
題詞は、「大伴清縄歌一首」<大伴清縄が歌一首>である。
◆皆人之 待師宇能花 雖落 奈久霍公鳥 吾将忘哉
(大伴清縄 巻八 一四八二)
≪書き下し≫皆人の待ちし卯(う)の花散りぬとも鳴く霍公鳥我れ忘れめや
(訳)皆の方誰も彼もが心待ちにしておられた卯の花、この花が散ってしまっても、ここに来て鳴いている時鳥の声を、私はどうして忘れることができようか。(「万葉集 二」 伊藤 博 著 角川ソフィア文庫より)
(注)皆人:宴席の人々をさす。(伊藤脚注)
(注)めや 分類連語:…だろうか、いや…ではない。 ⇒なりたち:推量の助動詞「む」の已然形+反語の係助詞「や」(weblio古語辞典 学研全訳古語辞典)
この歌については、拙稿ブログ「万葉歌碑を訪ねて(その2387)」で、集中24歌に詠まれている「卯の花」全歌とともに紹介している。
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ブログ作成のための資料を検索していると、大阪府柏原市の「史跡 高井田横穴公園」の「ふるさと広場」周辺に万葉歌碑(プレート)が立てられているのを知ったのである。
早速、3月7日に現地を訪れたのである。
柏原市立歴史資料館の駐車場に留め、同資料館内を見学、受付で万葉歌碑(プレート)のあるところを尋ねた。
万葉歌碑は大体において扱いはマイナーになる。HPに「園内西エリアには花をテーマとした万葉歌のプレートが、テーマ となった花の植栽の近くに立てられている。」と書かれている旨を説明し、西エリア=ふるさと広場を教えていただく。
さらにパンフレットをいただき、資料館から「ふるさと広場」に行くルートを教えてもらったのである。
下記地図の楕円の範囲内を重点的に散策したのである。
柏原市HPに「史跡高井田横穴公園内の万葉歌(プレート)」として18首が挙げられていたが、残念ながら11首しか見つけることができなかった。
植え込みの奥深くに立てられており見つけにくいプレートや、剪定等の作業で切られたのか横たえられているプレートもあった。
「高井田横穴」について、柏原市HPに、「高井田横穴は6世紀中頃から7世紀前半にかけて造られたお墓で、調査によって約160基が確認されており、実際は200基以上あるものと推定されています。
横穴は、凝灰岩をくりぬいて造られており、奥にある玄室には、3体ほどの遺体が納められたと考えられています。市内には他にも、安福寺横穴群(玉手町)、玉手山東横穴群(旭ヶ丘)などがあり、このような横穴が見つかっているのは、大阪府下では柏原市だけです。」と書かれている。
また、「線刻壁画」について、同HPに、「確認された横穴のうち、27基の横穴の壁や天井に線刻壁画が見つかっています。『人物』や『船』、『鳥』、『木の葉』など題材は様々で、当時の人々はどのような思いで壁画を描いたのでしょうか?
普段は保存のため非公開になっていますが、毎年、春と秋には実際に横穴の中に入って壁画を間近に見ていただけます。くわしくは歴史資料館までお問い合わせください。」と書かれている。
万葉歌碑巡りをしていなければ、「史跡 高井田横穴公園」の存在に気が付かなかったであろう。
万葉集が導いてくれたといっても過言ではない。
いろいろ勉強しなさいと言われているようである。
(参考文献)
★「萬葉集」 鶴 久・森山 隆 編 (桜楓社)
★「weblio古語辞典 学研全訳古語辞典」
★「柏原市HP」