万葉集の歌碑めぐり

万葉歌碑をめぐり、歌の背景等を可能な限り時間的空間的に探索し、万葉集の万葉集たる所以に迫っていきたい!

万葉集の世界に飛び込もう―万葉歌碑を訪ねて(その2536)―

●歌は、「埼玉の小埼の沼に鴨ぞ翼霧る おのが尾に降り置ける霜を掃ふとにあらし」である。

埼玉県行田市埼玉 前玉神社万葉歌碑(万葉灯籠)(高橋虫麻呂) 20231119撮影

●歌碑は、埼玉県行田市埼玉 前玉神社にある。

 

●歌をみていこう。 

           

一七四四歌の刻されている箇所をアップ 20231119撮影

 

題詞は、「見武蔵小埼沼鴨作歌一首」<武蔵(むざし)の小埼(をさき)の沼(ぬま)の鴨(かも)を見て作る歌一首>である。

 

◆前玉之 小埼乃沼尓 鴨曽翼霧 己尾尓 零置流霜乎 掃等尓有斯

        (高橋虫麻呂 巻九 一七四四)

 

≪書き下し≫埼玉(さきたま)の小埼の沼に鴨ぞ翼霧(はねき)る おのが尾に降り置ける霜を掃(はら)ふとにあらし

 

(訳)埼玉の小埼の沼で鴨が羽ばたきをしてしぶきを飛ばしている。自分の尾に降り置いた霜を掃いのけようとするのであるらしい。(「万葉集 二」 伊藤 博 著 角川ソフィア文庫より)

(注)小埼の沼:今の埼玉県行田市南東部の沼。(伊藤脚注)

(注)翼霧る:羽ばたいてしぶきを散らす。(伊藤脚注)

(注)あらし 分類連語:あるらしい。あるにちがいない。 ⇒なりたち:ラ変動詞「あり」の連体形+推量の助動詞「らし」からなる「あるらし」が変化した形。ラ変動詞「あり」が形容詞化した形とする説もある。(weblio古語辞典 学研全訳古語辞典)

 

 

 この歌については、拙稿ブログ「万葉歌碑を訪ねて(その1150)」でも紹介している。

 ➡ 

tom101010.hatenablog.com

 

 

 

 前稿と同様、前玉神社HPの歌と訳は省略し、一一七四歌の解釈を引用させていただきます。

「◇ 解釈 ・・・・・虫麻呂は常陸の国守藤原宇合(うまかい)の臣下であり、ここ埼玉以外でも、美里町広木で歌を詠んでいる。公用の旅で訪れたときに、目に触れた情景に対して感じたままに歌を詠んだのであろう。」

 

 

「十月十五日 奉納石灯籠祈願成就 元禄十丁丑暦」の箇所 (注)元禄十丁丑暦=元禄十年

 

 前玉神社にふれておこう。

 前玉神社HPに「前玉神社は埼玉県行田市、さきたま古墳群に隣接する神社です。

高さ8.7m、周囲92mほどの浅間塚と呼ばれる古墳上に建てられております。

ご祭神は前玉彦命・前玉姫命の二柱であり、人の身を守り、幸福をもたらす神様が祀られています。」と書かれている。

 境内には、浅間塚古墳の説明案内板があった。

「浅間塚古墳」説明案内板 20231119撮影

 

 

 前玉神社のスポット撮影


 万葉歌碑(万葉灯籠)を見て、タクシーの止まっている所まで急ぐ。その途中の社務所のおみくじ箱の上でくつろいでいる猫を見つけて撮影。



 来たかった前玉神社の万葉歌碑(万葉灯籠)にご対面。興奮が冷めない。



 タクシーに戻る。次は行田市藤原町の「八幡山公園」の万葉歌碑である。

 

 

 

 

 

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(参考文献)

★「萬葉集」 鶴 久・森山 隆 編 (桜楓社)

★「万葉集 二」 伊藤 博 著 (角川ソフィア文庫

★「weblio古語辞典 学研全訳古語辞典」

★「前玉神社HP」