万葉集の歌碑めぐり

万葉歌碑をめぐり、歌の背景等を可能な限り時間的空間的に探索し、万葉集の万葉集たる所以に迫っていきたい!

万葉集の世界に飛び込もう―万葉歌碑を訪ねて(その2534)―

●歌は、「赤駒を山野にはかし捕りかにて多摩の横山徒歩ゆか遣らむ」である。

東京都府中市矢崎町 郷土の森公園万葉歌碑(宇遅部黒女) 20231118撮影

●歌碑は、東京都府中市矢崎町 郷土の森公園にある。

 

●歌をみていこう。

 

◆阿加胡麻乎 夜麻努尓波賀志 刀里加尓弖 多麻能余許夜麻 加志由加也良牟

       (宇遅部黒女 巻二十 四四一七)

 

≪書き下し≫赤駒(あかごま)を山野(やまの)にはかし捕(と)りかにて多摩(たま)の横山(よこやま)徒歩(かし)ゆか遣(や)らむ

 

(訳)赤駒、肝心なその赤駒を山野に放し飼いにして捕らえかね、多摩の横山、あの横山を歩いて行かせることになるのか。(伊藤 博 著 「万葉集 四」 角川ソフィア文庫より)

(注)山野にはかし捕りかにて:山裾に放し飼いにして捕らえかね。「山野」は共有の野か。(伊藤脚注)

(注)多摩の横山:国府から見て相模の方角に低く連なる山。(伊藤脚注)

 

左注は、「右一首豊嶋郡上丁椋椅部荒虫之妻宇遅部黒女」<右の一首は豊島(としま)の郡(こほり)の上丁(じやうちやう)椋椅部荒虫(くらはしべのあらむし)が妻(め)の宇遅部黒女(うぢべのくろめ)>である。

(注)こほり【郡】名詞:律令制で、国の下に属する地方行政区画。その下に郷(ごう)・里などがある。今日の郡(ぐん)に当たる。また、「県(あがた)」とも同義に用いた。(weblio古語辞典 学研全訳古語辞典)

 

 

 歌碑の解説案内碑には、「・・・武蔵の防人らはまず武蔵の国府だった府中の地に集合し、多摩川を渡り、」いま、目の前に横たわる多摩の横山を越えて生還の困難な旅に出発していった。・・・」と書かれている。



 

 次の地図で、分倍河原駅、武蔵の国国府阯、郷土の森公園の位置関係が読み取れる。

 

 グーグルマップより作成引用させていただきました。

 

 

■箱根越え万葉歌碑を訪ねて■

毎年、明治大学で特別講義の機会をいただいている。コロナ渦にあって、しばらくオンライン講義であったが、今回は久しぶりに対面授業となった。質疑応答において当事者の学生さんはもちろん、まわりの学生さんらの反応までつかめるのがなによりであった。

 特別講義は、万葉集に関してではなく、小生の退職時の仕事に絡んで、プラスチックの社会的貢献についてである。

 講義は11月18日(土)の午後である。

 

 折角の箱根越えのチャンスである。

 かねてから是非行ってみたいと考えていたのは、日本で一番古いとされる前玉神社の万葉歌碑、それと玉川碑であった。

 

 当初の計画では、18日の午前中に、府中市郷土の森公園・調布市多摩川児童公園・狛江市中和泉「玉川碑」を、19日(日)は、前玉神社・八幡山古墳・川越氷川神社を巡る予定であった。

 

 小生は、晴男であるが、何と今回は、出発時に激しい雷雨に見舞われたのである。始発電車に間に合わせるには歩いていかなければならない。やむなく最寄り駅まで、釣り用の防水ズボンをはき、荷物には45リッター用のポリ袋をかぶせ駅まで歩く。先が思いやられる。

 

 京都から新幹線である。車中、講義用のレジメをチェックしていたが、ウトウトしてしまい、車内放送で慌てて「新横浜」で下りる。よく眠ったものである。

なんと嘘みたいに晴れ渡っている。ラッキー!

 

 新横浜駅から東急新横浜線に乗り換えさらに武蔵小杉でJR南武線のコースである。

 新横浜駅で乗り換えに手間取る。完全に浦島太郎である。

 ようやく、分倍河原駅に。

 駅から歩いて20分。郷土の森公園に到着。しかしどこへ行けばいいのかわからない。案内標識をみて「郷土の森公園管理事務所」まで行く。

 そこで、万葉歌碑の場所を訪ねると郷土の森公園には「ない」との返事が。

あわてて携帯を取り出し見てもらうと「郷土の森博物館」の方であるとの返事。

 結局、元のところまで戻る羽目に。郷土の森正門受付で係の人に、園内の案内パンフレットをいただき歌碑の場所の説明を受けた。

 通常、入園料が必要であるが、農業祭が開催されており、無料であった。

無料はいいが、悔やまれるロスタイム。

 

 園内をあちこちさ迷ったおかげで、「郷土の森正門前」というバス停を見つける。帰りはこのバスを利用することにした。

 何やかやで、予定を大幅に変更せざるをえないはめに。

講義には絶対に遅刻はできない。

もう1か所見に行けないかと検討するも安全を見て、18日は、結局ここの歌碑一基で予定終了とした。

明日に期待である。




 

 

 

 

 

(参考文献)

★「萬葉集」 鶴 久・森山 隆 編 (桜楓社)

★「万葉集 四」 伊藤 博 著 (角川ソフィア文庫

★「weblio古語辞典 学研全訳古語辞典」