■やぶこうじ■
●歌は、「この雪の消残る時にいざ行かな山橘の実の照るも見む」である。
●歌碑(プレート)は、千葉県袖ケ浦市下新田 袖ヶ浦公園万葉植物園にある。
●歌をみていこう。
題詞は、「雪日作歌一首」<雪の日に作る歌一首>である。
◆此雪之 消遺時尓 去来歸奈 山橘之 實光毛将見
(大伴家持 巻十九 四二二六)
≪書き下し≫この雪の消殘(けのこ)る時にいざ行かな山橘(やまたちばな)の実(み)の照るも見む
(訳)この雪がまだ消えてしまわないうちに、さあ行こう。山橘の実が雪に照り輝いているさまを見よう。(伊藤 博 著 「万葉集 四」 角川ソフィア文庫より)
(注)やまたちばな【山橘】名詞:やぶこうじ(=木の名)の別名。冬、赤い実をつける。[季語] 冬。(weblio古語辞典 学研全訳古語辞典)
左注は、「右一首十二月大伴宿祢家持作之」<右の一首は、十二月に大伴宿禰家持作る>である。
この歌については、拙稿ブログ「万葉歌碑を訪ねて(その1017)」で、愛知県春日井市東野町 万葉の小道の歌碑と共に紹介している。
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愛知県春日井市東野町 万葉の小道には、下記の万葉歌碑が15基立てられている。
15基の歌碑については、拙稿ブログ「万葉歌碑を訪ねて(その2201)・(その2202)」ですべて紹介している。
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「万葉の小道」については、春日井市HPに次のように書かれている。
「・・・春日井市の中心を流れる八田川。それに沿うようにして通る『ふれあい緑道』の途中、前棹橋と東野池橋の間に『万葉の小道』があります。平成4から5年にかけて、“文化とふれあうことができるみち”として整備されたここは、『万葉集』に収められている和歌が刻まれた15の歌碑が設置され、それぞれの歌碑の傍らには、歌の中で詠まれている花や木々が植えられています。季節の移り変わりを感じながら歌人の心にそっとふれる……そんな瞬間を体験してみるというのはいかがでしょうか。」
「山橘」は、集中五首に詠まれている。五首については、拙稿ブログ「万葉歌碑を訪ねて(その664)」で紹介している。
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(参考文献)
★「萬葉集」 鶴 久・森山 隆 編 (桜楓社)
★「植物で見る万葉の世界」(國學院大學「万葉の花の会」発行)」
★「万葉植物園 植物ガイド105」(袖ケ浦市郷土博物館発行)
★「weblio古語辞典 学研全訳古語辞典」
★「春日井市HP」