万葉集の歌碑めぐり

万葉歌碑をめぐり、歌の背景等を可能な限り時間的空間的に探索し、万葉集の万葉集たる所以に迫っていきたい!

2024-08-01から1ヶ月間の記事一覧

万葉集の世界に飛び込もう(その2644)―書籍掲載歌を中軸に(Ⅱ)―

●歌は、「百伝ふ磐余の池に鳴く鴨を今日のみ見てや雲隠りなむ(大津皇子 3-416)」である。 【磐余の池】 「大津皇子(巻三‐四一六)(歌は省略)・・・磐余の名はこんにちのこらないから地域ははっきりしがたいが、香具山の北東、旧安倍村(現、桜井市内)…

万葉集の世界に飛び込もう(その2643)―書籍掲載歌を中軸に(Ⅱ)―

●歌は、「ひさかたの天の香具山この夕霞たなびく春立つらしも(柿本人麻呂歌集 10-1812)」である。 【天の香具山】 「柿本人麻呂歌集(巻十‐一八一二)(歌は省略) 香具山は、畝傍山や耳成山が平野の中にぽっかりと孤立しているのとはちがって、多武峰の山…

万葉集の世界に飛び込もう(その2642)―書籍掲載歌を中軸に(Ⅱ)―

●歌は、「玉だすき畝傍の山の橿原のひじりの御代ゆ生れましし神のことごとつがの木のいやつぎつぎに天の下知らしめししを・・・(柿本人麻呂 1-29)」である。 【甘樫丘より(二)】 「柿本人麻呂(巻一‐二九)(歌は省略) 甘樫(あまがし)丘の上は、なん…

万葉集の世界に飛び込もう(その2641)―書籍掲載歌を中軸に(Ⅱ)―

●歌は、「みもろの神なび山に五百枝さし繁に生ひたる梅の木の・・・(山部赤人 3-324)」ならびに「明日香川川淀さらず立つ霧の思ひ過ぐべき恋にあらなくに(山部赤人 3-325)」である。 【甘樫丘より(一)】 「飛鳥京・藤原京をいちばん近くから一目に展望…

万葉集の世界に飛び込もう(その2640)―書籍掲載歌を中軸に(Ⅱ)―

●歌は、「明日香川行き廻る岡の秋萩は今日降る雨に散りか過ぎなむ(丹比真人国人 8-1557)」である。 【行き回る丘】 「丹比国人(巻八‐一五五七)(歌は省略) この歌の題詞には『故郷の豊浦(とゆら)の寺(てら)の尼の私房にして宴(うたげ)する歌』と…

万葉集の世界に飛び込もう(その2639)―書籍掲載歌を中軸に(Ⅱ)―

●歌は、「大君は 神にしませば 天雲の雷の上に 廬りせるかも(柿本人麻呂 3-235)」である。 【雷丘】 「柿本人麻呂(巻三‐二三五)(歌は省略)・・・『大君は神にしませば』の語が、・・・壬申の乱後の、天皇権の伸長と、時代気運の中に生まれたものであり…

万葉集の世界に飛び込もう(その2638)―書籍掲載歌を中軸に(Ⅱ)―

●歌は、「大君は 神にしませば 赤駒の腹這ふ田居を 都と成しつ(大伴御行 19-4260)」である。 【飛鳥浄御原宮】 「大伴御行(巻十九‐四二六〇)(歌は省略)・・・天武天皇と持統八年まで、計二三年間の宮都である。・・・六七二年の六月二四日、大海人皇子…

万葉集の世界に飛び込もう(その2637)―書籍掲載歌を中軸に(Ⅱ)―

●歌は、「ぬばたまの夜霧は立ちぬ衣手を高屋の上にたなびくまでに(舎人皇子 9-1706)」である。 【高家】 「舎人皇子(巻九‐一七〇六)(歌は省略)・・・飛鳥坐神社の北側に出てきている八釣(やつり)川のそばの道を東にとって、二キロ余のぼると、多武峰…

万葉集の世界に飛び込もう(その2636)―書籍掲載歌を中軸に(Ⅱ)―

●歌は、「我が里に 大雪降れり 大原の古りにし里に 降らまくは後(天武天皇 2-103)」ならびに「我が岡の 龗に言ひて 降らしめし雪の摧けし そこに散りけむ(藤原夫人 2-104)」である。 【大原】 「天武天皇(巻二‐一〇三)(歌は省略)、藤原夫人(巻二‐一…

万葉集の世界に飛び込もう(その2635)―書籍掲載歌を中軸に(Ⅱ)―

●歌は、「采女の袖吹き返す明日香風都を遠みいたづらに吹く(志貴皇子 1-51)」である。 【飛鳥古都】 「志貴皇子(巻一‐五一)(歌は省略)・・・左の写真は、飛鳥川のほとりの甘樫丘(あまがしのおか)の山頂(一四七メートル)に立って、東方を展望したと…

万葉集の世界に飛び込もう(その2634)―書籍掲載歌を中軸に(Ⅱ)―

●歌は、「大口の 真神の原に 降る雪はいたくな降りそ 家もあらなくに(舎人娘子 8-1636)」である。 【真神の原】 「舎人娘子(巻八‐一六三六)(歌は省略)・・・『真神の原』は、この寺(飛鳥寺)を中心とした一帯で、寺の北西から南方一帯におよぶ平野で…

万葉集の世界に飛び込もう(その2633)―書籍掲載歌を中軸に(Ⅱ)―

●歌は、「ふさ手折り多武の山霧繁みかも細川の瀬に波の騒ける(柿本人麻呂歌集 9-1704)」である。 【細川】 「柿本人麻呂歌集(巻九‐一七〇四)(歌は省略)・・・多武峰から発して・・・祝戸(いわいど)で飛鳥川にそそぐ小さな川が細川(いま冬野川)であ…

万葉集の世界に飛び込もう(その2632)―書籍掲載歌を中軸に(Ⅱ)―

●歌は、「御食向かふ 南淵山の 巌には降りしはだれか 消え残りたる(柿本人麻呂歌集 9-1709)」である。 【南淵山】 「石舞台から南を見ると、細川をへだてそのて山の中途に鞍作(くらつくり)の坂田金剛寺址のある阪田の村、・・・その後方に冬野の方へと、…

万葉集の世界に飛び込もう(その2631)―書籍掲載歌を中軸に(Ⅱ)―

●歌は、「東のたぎの御門に侍へど昨日も今日も召す言もなし(日並皇子尊舎人 2-184)」である。 【島の宮】 「(日並皇子宮の舎人 巻二‐一八四)(歌は省略)・・・石舞台から見おろす島庄(しまのしょう)一帯の村落のところが、草壁皇子(天武と持統のあい…

万葉集の世界に飛び込もう(その2630)―書籍掲載歌を中軸に(Ⅱ)―

●歌は、「明日香川瀬々に玉藻生ひたれどしがらみあれば靡きあらなくに(作者未詳 7-1380)」 【明日香川】 「(作者未詳 巻七 一三八〇)(歌は省略) ・・・この川筋を中心に定住した万葉人たちが、朝夕見なれた親しい里川に、抒情の場をもとめたにすぎない…

万葉集の世界に飛び込もう(その2629)―書籍掲載歌を中軸に(Ⅱ)―

●歌は、「橘の寺の長屋に我が率寝し童女放髪は髪上げつらむか(作者未詳 16-3822)」である。 【橘寺】 「(作者未詳 巻十六‐三八二二)(歌は省略)・・・橘寺の所在は明日香村橘で、もと用明天皇の別宮、聖徳太子誕生の地と伝え、太子がここで勝曼経を講じ…

万葉集の世界に飛び込もう(その2628)―書籍掲載歌を中軸に(Ⅱ)―

●歌は、「生き死にの二つの海を厭はしみ潮干の山を偲ひつるかも(作者未詳 16-3849)」ならびに「世間の繁き仮廬に住み住みて至らむ国のたづき知らずも(作者未詳 16-3850)」である。 「(作者未詳 巻十六‐三八四九ならびに三八五〇)(歌は省略) ・・・白…

万葉集の世界に飛び込もう(その2627)―書籍掲載歌を中軸に(Ⅱ)―

●歌は、「み吉野の山のあらしの寒けくにはたや今夜も我がひとり寝む(文武天皇? 1-74)」である。 「この歌は、題詞によって文武天皇が吉野宮に行幸の時の歌であることはわかるが、作者は誰かわからない。ただ左註に『右一首、或云、天皇御製歌』とあるので…

万葉集の世界に飛び込もう(その2626)―書籍掲載歌を中軸に(Ⅱ)―

●歌は、「やすみしし 我が大君の 夕されば 見したまふらし 明け来れば 問ひたまふらし 神岳の 山の黄葉を 今日もかも 問ひたまはまし 明日もかも 見したまはまし その山を 振り放け見つつ 夕されば あやに悲しみ 明け来れば うらさび暮らし 荒栲の 衣の袖は …

万葉集の世界に飛び込もう(その2625)―書籍掲載歌を中軸に(Ⅱ)―

●歌は、「さ檜隈檜隈川の瀬を早み君が手取らば言寄せむかも(作者未詳 7-1109)」である。 「(作者未詳 巻七‐一一〇九)(歌は省略) 近鉄岡寺駅から東に橘寺にゆく道の南方一帯の丘陵の起伏するところが、ひろく檜隈(ひのくま)といわれた。いま明日香村…

万葉集の世界に飛び込もう(その2624)―書籍掲載歌を中軸に(Ⅱ)―

●歌は、「天飛ぶや軽の路は我妹子が里にしあればねもころに見まく欲しけど止まず行かば人目を多みまねく行かば人知りぬべみ・・・我が戀ふる千重も一重も慰むる情もありやと我妹子が止まず出で見し軽の市にわが立ち聞けば玉たすき畝火の山に鳴く鳥の聲も聞こ…

万葉集の世界に飛び込もう(その2623)―書籍掲載歌を中軸に(Ⅱ)―

●歌は、「み佩かしを 剣の池の 蓮葉に 溜まれる水の ゆくへなみ 我がする時に 逢ふべしと 逢ひたる君を な寐寝そと 母聞こせども 我が心 清隅の池の 池の底 我は忘れじ 直に逢ふまでに」である。 本稿から、「万葉の旅 上 大和」 犬養 孝 著 (平凡社ライブ…

万葉集の世界に飛び込もう(その2622)―書籍掲載歌を中軸に(Ⅱ)―

●歌は、「草枕旅の宿りに誰が夫か国忘れたる家待たまくに(柿本人麻呂 3-426)」である。 【人麻呂塚】 「(柿本人麻呂 巻三‐四二六)(歌は省略) 香具山のほとりにあった行きだおれの死人を見て、・・・人麻呂が哀悼をそそいだ歌である。その人麻呂もまた…

万葉集の世界に飛び込もう(その2621)―書籍掲載歌を中軸に(Ⅱ)―

●歌は、「石上布留の高橋高々に妹が待つらむ夜ぞ更けにける(作者未詳 12-2997)」である。 【布留川】 「(作者未詳 巻十二‐二九九七)(歌は省略) 石上神宮の北側の布留川に沿うて東方の山中へ県道(もとの布留街道)が、都介(つげ)の高原から名張へと…

万葉集の世界に飛び込もう(その2620)―書籍掲載歌を中軸に(Ⅱ)―

●歌は、「石上布留の神杉神さびて恋をも我れはさらにするかも(柿本人麻呂歌集 11-2417)」である。 【石上布留】 「(柿本人麻呂歌集 巻十一‐二四一七)(歌は省略) 石上(いそのかみ)は、天理市の石上神宮付近から西方一帯にかけてひろく称した名で、布…

万葉集の世界に飛び込もう(その2619)―書籍掲載歌を中軸に(Ⅱ)―

●歌は、「衾ぢを引手の山に妹を置きて山道を行けば生けりともなし(柿本人麻呂 2-212)7」である。 「(柿本人麻呂 巻二‐二一二)(歌は省略) 景行・崇神陵をすぎて、山の辺の道は、長岳寺付近から中山町・萱生(かよう)町・・・と、竜王山の西麓を北にの…

万葉集の世界に飛び込もう(その2618)―書籍掲載歌を中軸に(Ⅱ)―

●歌は、「あしひきの山川の瀬の鳴るなへに弓月が岳にい雲立ちわたる(柿本人麻呂歌集 7-1088)」である。 「(柿本人麻呂歌集 巻七‐一〇八八)(歌は省略) 弓月が岳は、いまの巻向(まきむく)山の最高峰(五六七メートル)といわれる。・・・もっとも弓月…

万葉集の世界に飛び込もう(その2617)―書籍掲載歌を中軸に(Ⅱ)―

●歌は、「ぬばたまの夜さり来れば巻向の川音高しもあらしかも疾き(柿本人麻呂歌集 7-1101)」である。 【巻向の川音】 「柿本人麻呂歌集(巻七‐一一〇一)(歌は省略)・・・『万葉集』中、『人麻呂歌集』に出ている歌で、巻向・穴師・三輪の檜原・弓月が岳…

万葉集の世界に飛び込もう(その2616)―書籍掲載歌を中軸に(Ⅱ)―

●歌は、「巻向の穴師の山に雲居つつ雨は降れども濡れつつぞ来し(作者未詳 12-3126)である。 【穴師の山】 「(作者未詳 巻十二‐三一二六)(歌は省略) 檜原社址から三輪山のすそを東へまわると、目の前に穴師(あなし)山の支峯があらわれ、車谷(くるま…

万葉集の世界に飛び込もう(その2615)―書籍掲載歌を中軸に(Ⅱ)―

●歌は、「行く川の過ぎにし人の手折らねばうらぶれ立てり三輪の檜原は(柿本人麻呂歌集7-1119)」である。 【三輪の檜原】 「柿本人麻呂歌集(巻七‐一一一九)(歌は省略)・・・『行く川の過ぎにし』というとき、巻向の山川の流れが考えられていたであろう…