万葉集の歌碑めぐり

万葉歌碑をめぐり、歌の背景等を可能な限り時間的空間的に探索し、万葉集の万葉集たる所以に迫っていきたい!

万葉集の世界に飛び込もう(その2625)―書籍掲載歌を中軸に(Ⅱ)―

●歌は、「さ檜隈檜隈川の瀬を早み君が手取らば言寄せむかも(作者未詳 7-1109)」である。

 

 「(作者未詳 巻七‐一一〇九)(歌は省略) 近鉄岡寺駅から東に橘寺にゆく道の南方一帯の丘陵の起伏するところが、ひろく檜隈(ひのくま)といわれた。いま明日香村大字檜前(ひのくま)がある。応神朝阿知使主(あちのおみ)以来の帰化漢人の住みついたところで・・・大きな勢力をにぎっていたようである。大字檜前の東の森に阿知使主をまつる於美阿志(おみあし)神社や檜隈寺の址がある。そこはまた宣化天皇檜隈廬入野(いおりの)宮址とも伝える。古代には一帯に檜林が多かったものであろう。」(「万葉の旅 上 大和」 犬養 孝 著 平凡社ライブラリーより)

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一一〇九歌をみてみよう。

■巻七 一一〇九歌■

◆佐檜乃熊 桧隅川之 瀬乎早 君之手取者 将縁言毳

       (作者未詳 巻七 一一〇九)

 

≪書き下し≫さ檜隈(ひのくま)檜隈川(ひのくまがは)の瀬を早み君が手取らば言寄(ことよ)せむかも

 

(訳)檜隈、そこを流れ行く檜隈川の川瀬が早いので、あなたの手を取り縋(すが)ったら、あれこれ世間に噂されることでしょうか。(伊藤 博 著 「万葉集 二」 角川ソフィア文庫より)

(注)さ檜隈:奈良県高市郡の地。サは接頭語。(伊藤脚注)

(注)ことよす【言寄す・事寄す】自動詞:①言葉や行為によって働きかける。言葉を添えて助力する。②あるものに託す。かこつける。③うわさをたてる。(weblio古語辞典 学研全訳古語辞典)ここでは③の意

 

 この歌については、拙稿ブログ「万葉歌碑を訪ねて(その163改)」で紹介している。

 ➡ 

tom101010.hatenablog.com

 

 

 

 

奈良県高市郡明日香村明日香周遊歩道下平田休憩園地万葉歌碑(作者未詳 7-1109) 20190708撮影

 

 

 一一〇九の万葉歌碑の周辺を理解するために「犬養孝揮毫万葉歌碑マップ(明日香村)」(犬養万葉記念館)の地図から一部引用させていただきました。



 明日香村へは2019年に訪れているが、同著を読みながら、拙稿ブログを読み返し、地図や資料を確認していると、記憶が一気によみがえり、万葉歌碑巡りをしたい思いに駆られる。

 年齢的なことを考えると長距離は少し躊躇する。近距離といえどこの暑さである。

 

 しかし、このように同著を軸にもう一度みていくと、新たな課題が見えてくる。当然ながら見落としていた歌碑が確認できる。これは新たな挑戦のトリガーとなろう。秋の活動への知的備蓄期間と割り切って充電、充電、充電。

 

 実は、次稿は「檜隈大内陵」であり、今日、陵に行けば写真を掲載することができると準備に入ったのである。また、犬養万葉記念館でパンフレット「明日香村の万葉歌碑を歩く」が発行されたと知り資料を戴き行けていない3か所の歌碑巡りもしようと意気込んでいた。

しかし、気温の上昇と写真の参道の長さを見ているうちに、情けないことに秋にしようという弱気な気持ちに制圧されてしまった。



 

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 「檜隈川は、南方高取山に発して檜前の村の西をすぎ、近鉄線に沿うてやがて畝傍山の西をまわり、雲梯(うなて)で曾我川に注ぐ小川である。・・・むかしもあまり瀬が早かったとも思われないが、恋する女のとっては、瀬が早くて流されそうだから、あなたのお手をにぎったら、うわさをたてられるかしらと、甘美にもいってみたいのだ。」(同著)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(参考文献)

★「萬葉集」 鶴 久・森山 隆 編 (桜楓社)

★「万葉集 二」 伊藤 博 著 (角川ソフィア文庫

★「万葉の旅 上 大和」 犬養 孝 著 (平凡社ライブラリー

★「weblio古語辞典 学研全訳古語辞典」

★「犬養孝揮毫万葉歌碑マップ(明日香村)」 (犬養万葉記念館)

★「明日香観光協会HP」