万葉集の歌碑めぐり

万葉歌碑をめぐり、歌の背景等を可能な限り時間的空間的に探索し、万葉集の万葉集たる所以に迫っていきたい!

万葉歌碑を訪ねて(その161)―奈良県高市郡明日香村南都銀行明日香支店付近明日香川沿い万葉歌碑―

●歌は、「明日香川瀬々の玉藻のうちなびき情は妹に寄りにけるかも」である。

 

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明日香村南都銀行明日香支店付近明日香川沿い万葉歌碑(作者未詳)

●歌碑は、南都銀行明日香支店付近の飛鳥川沿いにある。

この日(7月5日)は、石舞台古墳売店の万葉歌碑(ブログ160)の探索に時間を費やしてしまったので、帰ることにする。走っていると、明日香支店の特徴のある建物が目に入った。近くの空き地に車を止める。グーグルマップで明日香支店の前の道路をストリートビューしていたが道路沿いに歌碑を見つけることはできなかった。しかし、何度もストリートビューを繰り返していたので、銀行の建物の特徴が頭にインプットされていたのである。

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南都銀行明日香支店

 支店前あたりから飛鳥川沿いにいく小径がある。この小径沿いにあると確信して探索する。しばらく行くと左手に歌碑があった。その横には、「飛鳥川」の碑も立っていた。

 

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飛鳥川」の碑と歌碑

●歌をみてみよう

◆明日香河 瀬湍之珠藻之 打靡 情者妹尓 因来鴨

              (作者未詳 巻十三 三二六七)

 

≪書き下し≫明日香川瀬々(せぜ)の玉藻のうち靡き心は妹(いも)に寄りにけるかも)

 

(訳)明日香川の瀬という瀬に生い茂って靡いている玉藻のように、ただひたすらに、私の心はあなたに靡き寄ってしまったよ。(伊藤 博 著 「万葉集 三」 角川ソフィア文庫より)

 

巻十三は長歌集である。この歌も長歌(三二六六歌)の反歌である。

長歌の方もみていこう。

 

◆春去者 花咲乎呼里 秋付者 丹之穂尓黄色 味酒乎 神名火山之 帶丹為留 明日香之河乃 速瀬尓 生玉藻之 打靡 情者因而 朝露之 消者可消 戀久毛 知久毛相 隠都麻鴨

                   (作者未詳 巻十三 三二六六)

 

≪書き下し≫春されば 花咲きををり 秋づけば 丹(に)のほにもみつ 味酒(うまさけ)を 神(かむ)なび山の 帯(おび)にせる 明日香の川の 早き瀬に 生(お)ふる玉藻の うち靡(なび)き 心は寄りて 朝露(あさつゆ)の 消(け)なば消(け)ぬむべく 

恋ひしくも しるくも逢(あ)へる 隠(こも)り妻(づま)かも

 

(訳)春がやって来ると花が枝もたわわに咲き乱れ、秋になると木の葉が真っ赤に色づく。その神なび山が帯にしている明日香川、この川の早瀬の中に生い茂る玉藻が、流れのままに靡くように、心はひたすら靡き寄り、朝霧がはかなく消えるように、身も消え果てるなら消え果ててしまえばとばかりに、恋焦がれた甲斐(かい)があって、今こうしてやっと逢うこと叶った我が忍び妻よ、ああ。(伊藤 博 著 「万葉集 三」 角川ソフィア文庫より)

(注)ををる【撓る】:(たくさんの花や葉で)枝がしなう。たわみ曲がる。 

(注)に【丹】:赤土。また、赤色の顔料。赤い色。 

(注)こもりづま【隠り妻】:人の目をはばかって家にこもっている妻。人目につくと困る関係にある妻や恋人。

 

万葉集目録によると巻十三は、

 雑歌 二十七首

 相聞歌五十七首

 問答歌 十八首

 比喩歌  一首

 挽歌 二十四首

となっている。この歌は、部立て「相聞歌」に入っている。

堀内民一氏は、その著「大和万葉―その歌の風土」(創元社)のなかで、「万葉びとが川の瀬の靡くさまに執着したのは、『霊呼ばい』の信仰」が働いているからだと述べられている。「川の藻のなびくのを見ると、むかしの人がそれに心をそそられたことがわかるような気がする。川の流れにもてあそばれて、なびく」様相に、超自然的な力を感じたのかもしれない。

 

(参考文献)

★「萬葉集」 鶴 久・森山 隆 編 (桜楓社)

★「万葉集 三」 伊藤 博 著 (角川ソフィア文庫

★「大和万葉―その歌の風土」 堀内民一 著 (創元社

★「万葉の大和路」 犬養 孝/文 入江泰吉/写真 (旺文社文庫

★「犬養孝揮毫万葉歌碑マップ(明日香村)」

★「weblio古語辞典 学研全訳古語辞典」

 

●本日のザ・モーニングセット&フルーツフルデザート

 サンドイッチは、10枚切りを3枚使い、中味は、ロメインレタスと焼き豚である。デザートは、キウイの縦スライスを十字に立て、周囲をバナナ、トンプソンとクリムゾンシードレスの切合わせで加飾した。

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8月10日のザ・モーニングセット

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8月10日のフルーツフルデザート