万葉集の歌碑めぐり

万葉歌碑をめぐり、歌の背景等を可能な限り時間的空間的に探索し、万葉集の万葉集たる所以に迫っていきたい!

万葉集の世界に飛び込もう―万葉歌碑を訪ねて(その2345)―

 本稿から、「千葉県袖ケ浦市下新田 袖ヶ浦公園万葉植物園の万葉歌碑ならびにプレートの紹介である。


 9月26日(火)は、新幹線、JR内房線を使って「袖ヶ浦公園・万葉植物園」、27日(水)は、土浦駅からレンタカーを借りて、「つくばテクノパーク」、「筑波山神社」、「ライオンズ広場・万葉の森」、「朝日峠展望公園・万葉の森」の歌碑を堪能してきたのである。

 本格的な箱根越えの万葉歌碑巡り、レンタカーを借りて周るのも初めてであった。

 腰が悪い家内には申し訳ないが留守番をお願いし、今回は単独行であった。

 

袖ヶ浦公園・万葉植物園■

 新幹線に乗るのも超超久しぶり。京都発6:16。

 昔、勤めていた会社の関係でよく姉ヶ崎や袖ヶ浦には来ていたので、車窓から懐かしい思いでコンビナート群を眺めながらミニトリップを楽しむ。

 袖ヶ浦駅からバスがあるが昼間は2時間に1本しかない。時間がもったいないので、往きはタクシー、帰りはバス。

 

 10時過ぎに到着。5時間の長旅である。



 公園案内図を参考にしながら郷土博物館・万葉の里方面を目指す。

 

 万葉植物園では、歌碑やプレートが暖かく迎えてくれている。

 歌碑やプレートをひとつひとつ撮影しているからか、植物園を整備されている方が声をかけてこられた。

歌碑への思い、これまでほぼ西日本は周りつくし、今回が関東遠征の第一歩などの話をしていたら、その方が一旦事務所に戻り、「万葉植物園 植物ガイド105」(袖ヶ浦市郷土博物館発行)を持ってこられたのである。植わっている105種類の万葉植物の写真と因んだ歌と歌意が載っている小冊子である。

ありがたいことである。

お礼を申し上げたところ、逆に熱心に歌碑をみていただきありがとうございます、とおっしゃっていただいたのである。

歌碑が取り持つ人との出会い、これまでも幾度となく経験しているが、不思議な万葉歌碑のお導きである。

 帰りは、12時46分のバスである。これをのがすと次は14時13分である。

 船橋駅東武線に乗り換え、柏駅常磐線に。そして土浦泊である。

 

 

 折角なので、いただいた「万葉植物園 植物ガイド105」に沿って歌碑ならびにプレートを紹介していきます。

 万葉植物草本編(五十音順)、万葉植物木本編(同)、万葉植物竹笹編(同)、万葉集袖ヶ浦の順である。

 

 

■万葉植物草本編(五十音順)■

「万葉植物園 植物ガイド105」(袖ヶ浦市郷土博物館発行)より
引用させていただきました。

 

 

●歌は、「あかねさす紫野行き標野行き野守は見ずや君が袖振る」である。

千葉県袖ケ浦市下新田 袖ヶ浦公園万葉植物園万葉歌碑(プレート)(あかね・額田王) 20230926撮影



●歌碑(プレート)は、千葉県袖ケ浦市下新田 袖ヶ浦公園万葉植物園にある。

 

●歌をみていこう。

 

◆茜草指 武良前野逝 標野行 野守者不見哉 君之袖布流

      (額田王 巻一 二〇)

 

≪書き下し≫あかねさす紫野行き標野(しめの)行き野守(のもり)は見ずや君が袖振る

 

(訳)茜(あかね)色のさし出る紫、その紫草の生い茂る野、かかわりなき人の立ち入りを禁じて標(しめ)を張った野を行き来して、あれそんなことをなさって、野の番人が見るではございませんか。あなたはそんなに袖(そで)をお振りになったりして。(伊藤 博 著 「万葉集 一」 角川ソフィア文庫より)

(注)あかねさす【茜さす】分類枕詞:赤い色がさして、美しく照り輝くことから「日」「昼」「紫」「君」などにかかる。(weblio古語辞典 学研全訳古語辞典)

(注)むらさき 【紫】①草の名。むらさき草。根から赤紫色の染料をとる。②染め色の一つ。①の根で染めた色。赤紫色。古代紫。古くから尊ばれた色で、律令制では三位以上の衣服の色とされた。(学研)

(注)むらさきの 【紫野】:「むらさき」を栽培している園。(伊藤脚注)

(注)しめ【標】:神や人の領有区域であることを示して、立ち入りを禁ずる標識。また、道しるべの標識。縄を張ったり、木を立てたり、草を結んだりする。(学研)

(注)野守:天智天皇を寓したもの。額田王が天智妻であることを匂わせる。(伊藤脚注)

(注の注)のもり【野守】名詞:立ち入りが禁止されている野の番人。(学研)

 

 

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感想(1件)

この歌については、拙稿ブログ「万葉歌碑を訪ねて(その1139)」で額田王の歌十二首とともに紹介している。

 ➡ 

tom101010.hatenablog.com

 

 

 

 「蒲生野」に位置する万葉の森船岡山山頂には、額田王(巻一 二十歌)と大海人皇子(巻一 二十一歌)の歌碑が立てられている。この歌碑については、拙稿ブログ「万葉歌碑を訪ねて(その258,259)」で紹介している。

 ➡ 

tom101010.hatenablog.com

 

 



 

 

 

(参考文献)

★「萬葉集」 鶴 久・森山 隆 編 (桜楓社)

★「万葉集 一」 伊藤 博 著 (角川ソフィア文庫

★「万葉植物園 植物ガイド105」(袖ヶ浦市郷土博物館発行)

★「weblio古語辞典 学研全訳古語辞典」