万葉集の歌碑めぐり

万葉歌碑をめぐり、歌の背景等を可能な限り時間的空間的に探索し、万葉集の万葉集たる所以に迫っていきたい!

万葉集の世界に飛び込もう―万葉歌碑を訪ねて(その2344)―

●歌は、「藤波の影なす海の底清み沈く石をも玉とぞ我が見る」である。

富山市松川べり 越中万葉歌石板⑭(大伴家持) 20230705撮影

●歌石板は、富山市松川べり 越中万葉歌石板⑭である。

 

●歌をみていこう。

 

四一九九~四二〇二歌の題詞は、「十二日遊覧布勢水海船泊於多祜灣望見藤花各述懐作歌四首」<十二日に、布勢水海(ふせのみづうみ)に遊覧するに、多祜(たこ)の湾(うら)に舟泊(ふなどま)りす。藤の花を望み見て、おのもおのも懐(おもひ)を述べて作る歌四首>である。

 

 

◆藤奈美乃 影成海之 底清美 之都久石乎毛 珠等曽吾見流

       (大伴家持 巻十九 四一九九)

 

≪書き下し≫藤波(ふぢなみ)の影なす海の底清(きよ)み沈(しづ)く石をも玉とぞ我が見る  

 

(訳)藤の花房が影を映している海、その水底までが清く澄んでいるので、沈んでいる石も、真珠だと私はみてしまう。(伊藤 博 著 「万葉集 四」 角川ソフィア文庫より)

(注)ふぢなみ【藤波・藤浪】名詞:藤の花房の風に揺れるさまを波に見立てていう語。転じて、藤および藤の花。(weblio古語辞典 学研全訳古語辞典)

 

 

◆多祜乃浦能 底左倍尓保布 藤奈美乎 加射之氐将去 不見人之為

      (内蔵忌寸縄麻呂 巻十九 四二〇〇)

 

≪書き下し≫多祜の浦の底さえへにほふ藤波をかざして行かむ見ぬ人のため

 

(訳)多祜の浦の水底さえ照り輝くばかりの藤の花房、この花房を髪に挿して行こう。まだ見たことのない人のために。(同上)

(注)前歌の上三句を承ける歌。(伊藤脚注)

 

 

◆伊佐左可尓 念而来之乎 多祜乃浦尓 開流藤見而 一夜可經

     (久米広綱 巻十九 四二〇一)

 

≪書き下し≫いささかに思ひて来(こ)しを多祜の浦に咲ける藤見て一夜(ひとよ)経(へ)ぬべし

 

(訳)ほんのかりそめのつもりでやって来たのに、多祜の浦に咲き映えている藤、この藤を見るままに、一晩過ごしてしまいそうだ。(同上)

(注)一夜経ぬべし:一晩過ごしてしまいそうだ。前歌の下二句を承けての去り難さ。(伊藤脚注)

 

 

◆藤奈美乎 借廬尓造 灣廻為流 人等波不知尓 海部等可見良牟

       (久米継麻呂 巻十九 四二〇二)

 

≪書き下し≫藤波(ふぢなみ)を仮廬(かりいほ)に作り浦廻(うらみ)する人とは知らに海人(あま)とか見らむ 

 

(訳)藤の花房、この花房を仮廬(かりいお)に(ふ)いて、浦めぐりしている人とは知らずに、土地の海人(あま)だと見られているのではなかろうか。(同上)

(注)上二句に前歌の結句を承け、「藤波」を初句に持つ四一九九とも対応させながら全体を結ぶ。(伊藤脚注)

(注)仮廬に作り:仮廬にふいて。花かげに舟をとどめることを、仮廬とみなした。(伊藤脚注)

 

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 四一九九歌については、拙稿ブログ「万葉歌碑を訪ねて(その812)」で、氷見市本町 湊川中の橋南詰万葉歌碑とともに紹介している。

 ➡ 

tom101010.hatenablog.com

 

 

 



 明治36年8月に立てられた氷見市下田子 田子浦藤波神社の歌碑も拙稿ブログ「万葉歌碑を訪ねて(その818)」で紹介している。

 ➡ 

tom101010.hatenablog.com

 

 



 四一九九~四二〇二歌については、拙稿ブログ「万葉歌碑を訪ねて(その1371)」で紹介している。

 ➡ 

tom101010.hatenablog.com

 

 

 

 

 松川べりを時折の風雨と闘いながらも全部巡ることができた。

 歌碑ならびに歌石板と松川に懸る橋を整理してみると次の通りである。

  「松川べり散策 越中万葉歌碑&歌石板めぐり」(富山県文化振興財団発行)を参照させていただきました。

 

 


 松川べりの万葉歌碑ならびに歌石板を巡り、翌7月6日帰途についた。

 北陸からの帰りには大抵、南条SAで鯖寿司と焼鯖寿司を買って帰る。「一乃松」の寿司である。どちらかというと焼鯖寿司が美味しい。

 ちょっと食べてみたくなり、検索してみると通販もやっている。

 今回はふるさと納税を活用して入手した。万葉歌碑巡りの手土産の食感がよみがえってきた。

 

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(参考文献)

★「萬葉集」 鶴 久・森山 隆 編 (桜楓社)

★「万葉集 四」 伊藤 博 著 (角川ソフィア文庫

★「weblio古語辞典 学研全訳古語辞典」

★「松川べり散策 越中万葉歌碑&歌石板めぐり」 (富山県文化振興財団発行)