■ききょう■
●歌は、「朝顔は朝露負ひて咲くといへど夕影にこそ咲きまさりけれ」である。
●歌碑(プレート)は、千葉県袖ケ浦市下新田 袖ヶ浦公園万葉植物園にある。
●歌をみていこう。
◆朝杲 朝露負 咲雖云 暮陰社 咲益家礼
(作者未詳 巻十 二一〇四)
≪書き下し≫朝顔(あさがほ)は朝露(あさつゆ)負(お)ひて咲くといへど夕影(ゆふかげ)にこそ咲きまさりけれ
(訳)朝顔は朝露を浴びて咲くというけれど、夕方のかすかな光の中でこそひときわ咲きにおうものであった。(伊藤 博 著 「万葉集 二」 角川ソフィア文庫より)
(注)ゆふかげ【夕影】名詞:①夕暮れどきの光。夕日の光。[反対語] 朝影(あさかげ)。②夕暮れどきの光を受けた姿・形。(学研)
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この歌については、拙稿ブログ「万葉歌碑を訪ねて(その458)」で、太子町 太子和みの広場横小公園の歌碑とともに「あさがほ五首」を紹介している。
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「あさがお」については、「植物で見る万葉の世界」(國學院大學「万葉の花の会」発行)に、「秋の七草の一つ。七草の中ではこの『朝顔(あさがほ)』のみ異説がある。桔梗(ききょう)説・木槿(むくげ)説・昼顔(ひるがお)説があり、今日でも確定できていない。朝顔の歌は集中に5首見られ、二一〇四歌は、朝顔は朝の露を負って美しく咲くと人はいうのだけれども、私が見るところでは、夕影の時に咲いている朝顔の方がより勝れていますよ、の意で、夕暮れに咲く朝顔を評価しているので、『あさがほ』の性格をよく表しているように思われる。現在の朝顔はこの当時渡来していないし、昼顔も木槿も夕方には萎(しぼ)むので、夕影の中でその美しさを褒められている『朝顔』は、キキョウと考えるのが適切である。」と書かれている。
これまでに撮影した二一〇四歌の主な歌碑(プレート)を紹介してみよう。
(参考文献)
★「萬葉集」 鶴 久・森山 隆 編 (桜楓社)
★「植物で見る万葉の世界」(國學院大學「万葉の花の会」発行)
★「万葉植物園 植物ガイド105」(袖ケ浦市郷土博物館発行)
★「weblio古語辞典 学研全訳古語辞典」