万葉集の歌碑めぐり

万葉歌碑をめぐり、歌の背景等を可能な限り時間的空間的に探索し、万葉集の万葉集たる所以に迫っていきたい!

ザ・モーニングセット190127(万葉の小径シリーズーその21さくら)

●サンドイッチは半分に切り、それぞれ対角線上をカット、三角形を4つ作り小鹿田焼の丸皿に十字に盛り付けた。サニーレタスが結構暴れている。

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1月27日のモーニングセット

デザートはリンゴの縦切りを扇子のように開き、蝶の羽をイメージして飾った。胴体部分はブドウを使った。翅の模様はブドウで演出した。

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1月27日のデザート

 今朝は、雪が舞い、デッキの上などは少し白くなったが、日の出とともに消えてしまった。春になると蝶が舞う。待ち遠しいものだ。そして桜も!

 今日の万葉の歌碑の紹介は「さくら」である。

 

●万葉の小径シリーズ-その21 さくら ヤマザクラ

 

梅の花 咲きて散りなば 桜花(さくらばな)継ぎて咲くべく なりにてあらずや

               (張氏福子<ちょうじのふくし> 巻五 八二九)

 

烏梅能波奈 佐企弖知理奈波 佐久良婆那 都伎弖佐久倍久 奈利尓弖阿良受也

                          薬師 張氏福子

 

待ちに待った梅の花が満開になった。この梅が散る頃、桜の花は咲こうとして準備しているではないか。

 

 「歌の意のように、ウメもサクラもモモも相次いで咲く春を彩る名花である。「植物図鑑」の類には、ウメの項もモモの項もあるけれど、サクラの項は見当たらない。サクラはヤマザクラサトザクラシダレザクラ、ヒガンザクラ、ソメイヨシノなどの総称で、後世の改良品種を対象外とすると、万葉のサクラはヤマザクラの類を指すとするのが一般的である。万葉集に詠まれる回数は約四〇回で、ウメの約三分の一に過ぎないが、ただ、ウメがほとんど庭木として詠まれているのに対し、サクラは各地の山野で歌われていて、当時広く一般に親しまれていた木といえよう。

 この歌は、咲き揃った梅を見つつの宴、それも都遠く離れた大宰府の師(そち)宅の宴で歌われたもので、一座の人たちが、ひとしきり梅を愛でたのを受けて、いやいや梅だけでなく、梅の後には桜が咲くから、その時には再び楽しい宴を持ちましょうと歌ったものだ。さらに、桜が終わると藤、続いて卯の花と次から次への想像を許す楽しい歌である。

 張氏福子は、薬師(くすりし:大宰府の医師)であるから、あるいは、梅や桜に薬師としての興味も抱いていたかとも思われる。」

                       (万葉の小径 さくらの歌碑)

 

 題詞は、「梅花歌卅二首幷序」とあり、八一五~八四六の三二首が収録されている。

序は次の通りである。

天平二年正月一三日 萃于帥老之宅 申宴會也 于時初春令月 氣淑風和 梅披鏡前之粉 蘭薫珮後之香 加以 曙嶺移雲松掛羅而傾盖 夕岫結霧 鳥封縠而迷林 庭舞新蝶 空歸故雁 於是盖天坐地 促膝飛觴 忘言一室之裏 開衿煙霞之外 淡然自放 快然自足 若非翰苑何以攄情 詩紀落梅之篇古今夫何異牟 宜賦園梅聊成短詠」

 

 ※帥老=大伴卿=大伴宿祢旅人

 大伴旅人宅に集まって宴を催し、梅を愛でて歌を詠ったのである。多種多様の人が集まったようである。名前は次の通りである。(注:役職の読みは省略している)

 

 ① 大貮紀卿(きのまへつきみ)(八一五)

 ② 小貳小野大夫(八一六)=小野老朝臣(おののおゆあそみの)

 ③ 小貳粟田大夫(あはたのまへつきみ)(八一七)

 ④ 筑前守山上大夫(やまのうえのまへつきみ)(八一八)=山上憶良

 ⑤ 築後守大伴大夫(八一九)

 ⑥ 築後守葛井大夫(八二〇)

 ⑦ 笠沙弥(かさのさみ)(八二一)

 ⑧ 主人(八二二)=大伴旅人

 ⑨ 大監伴氏百代(八二三)=大伴宿祢百代(おほとものすくねももよ)

 ⑩ 小監阿氏奥嶋(あじのおきしま)(八二四)

 ⑪ 小監土氏百村(とじのももむら)(八二五)

 ⑫ 大典史氏大原(しじのおほはら)(八二六)

 ⑬ 小典山氏若麻呂((さんじのわかまろ)八二七)

 ⑭ 大判事丹氏麻呂(たんじのまろ)(八二八)

 ⑮ 薬師張氏福子(八二九)

 ⑯ 筑前介佐氏子首(さじのこびと)(八三〇)

 ⑰ 壹岐守板氏安麻呂(八三一)

 ⑱ 神司荒氏稲布(こうじのいなしき)(八三二)

 ⑲ 大令史野氏宿奈麻呂(八三三)

 ⑳ 小令史田氏肥人(でんじのうまひと)(八三四)

 ㉑ 薬師高氏義通((かうじのよしみち)八三五)

 ㉒ 陰陽師磯氏法麻呂(八三六)

 ㉓ 笇師志氏大道(しじのおほみち)(八三七)

 ㉔ 大隅目榎氏鉢麻呂(八三八)

 ㉕ 筑前目田氏真上((でんじのまかみ)八三九)

 ㉖ 壹岐目村氏彼方(そんじのをちかた)(八四〇)

 ㉗ 對馬目高氏老(かうじのおゆ)(八四一)

 ㉘ 薩摩目高氏海人(かうじのあま)(八四二)

 ㉙ 土師氏御道(はにしうじのみみち)(八四三)

 ㉚ 小野氏國堅(をのにしくにかた)(八四四)

 ㉛ 筑前拯門氏石足(もんじのいそたり)(八四五)

 ㉜ 小野氏淡理((をののうじたもり)八四六)

 

   

(参考文献)

★万葉の小径 さくらの歌碑

★「萬葉集」 鶴 久・森山 隆 編 (桜楓社)

★「別冊國文學 万葉集必携」 稲丘 耕二 著 (學燈社