万葉集の歌碑めぐり

万葉歌碑をめぐり、歌の背景等を可能な限り時間的空間的に探索し、万葉集の万葉集たる所以に迫っていきたい!

万葉歌碑を訪ねて(その4改)―近鉄京都線高の原駅近くのUR平城第2団地内の公園―万葉集 巻十 一八八七

●歌は、「春日なる 三笠の山に 月も出(いで)ぬかも 佐紀山に 咲ける桜の 

    花の見ゆべく」である。

 

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UR平城第2団地内公園 万葉歌碑(作者未詳)

 

●歌碑は、近鉄京都線高の原駅近くのUR平城第2団地内の公園にある。

 

●歌をみてみよう。

 

 題詞には、「旋頭歌」とある。

 

◆春日在 三笠乃山尓 月母出奴可母 佐紀山尓 開有櫻之 花乃可見

                   {作者未詳 巻十 一八八七)

 

≪書き下し≫春日(かすが)にある御笠(みかさ)の山に月も出(い)でぬかも 佐紀山(さきやま)に咲ける桜の花の見ゆべく

 

(訳)東の方春日に聳(そび)えるある御笠の山に早く月が出てくれないものか。西の方佐紀山に咲いている桜の花がよく見えるように・(「万葉集 二」 伊藤 博 著 角川ソフィア文庫より)

 (注)佐紀山:奈良市佐紀町の北部一帯の山

 

 題詞にあるように、この歌は旋頭歌である。五七七五七七音を基本とする。記紀歌謡に四首、万葉集に六二首収録されているとある。旋頭歌の形式についてはいろいろ議論があるようである。歌謡との関連が議論の的であるが、旋頭歌という形式が歌謡的に見たときに存在していたかとなると疑問であるといわれている。口誦から記載への過渡期に、柿本人麻呂によって一つの形式として確立せしめられたのではないかとの見方がある。

 

 現在、書いている、万葉歌碑を訪ねてシリーズのきっかけは、テーマとして万葉歌碑を探してみようと、「近くの万葉歌碑」検索したことに始まる。

「万葉歌碑(笠女郎)法蓮町609」、「万葉歌碑(中臣女郎)佐紀町1209」、「万葉歌碑 右京2丁目3」の三つがヒットした。そして、奈良市のHPに「万葉ゆかりの地をたずねて~万葉歌碑めぐり~」があることを知った。

 3つとも、奈良市のHPのリストに含まれていた。地図を拡大してみる。何と、ウォーキングコースの1つにしているルートにあるのだ。

 URの団地ではあるが、公園があり、通り抜けするメイン通路に沿って人工の小川や池があり、今も水が流れている。通りすがりに何と贅沢な環境なのだと思ったことがある。その一角に万葉歌碑があるという。

 確かめるべく現地に向かう。石碑に刻まれた文字を確認する。説明案内板といったものがないので、よほどでないと気が付かない。しかし驚いた。あったのだ。

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公園内の歌碑

 この写真のように、普通にこの道を歩いていたら気が付かない。公園に並べられた庭石にしか見えない。

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人工の川側から碑を見る

 

 

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高の原側からみた平城第2団地

 

(参考文献)

★「萬葉集」鶴 久・森山 隆 編 (桜楓社)

★「万葉集 二」 伊藤 博 著 (角川ソフィア文庫

★「別冊國文學 万葉集必携」 稲岡耕二 編 (學燈社

 

※20210514朝食関連記事削除、一部改訂。