万葉集の歌碑めぐり

万葉歌碑をめぐり、歌の背景等を可能な限り時間的空間的に探索し、万葉集の万葉集たる所以に迫っていきたい!

万葉歌碑を訪ねて(その1944)―兵庫県淡路市岩屋 大和島―万葉集 巻三 二五五

●歌は、「天離る鄙の長道ゆ恋ひ来れば明石の門より大和島見ゆ」である。

兵庫県淡路市岩屋 大和島万葉歌碑(柿本人麻呂

●歌碑は、兵庫県淡路市岩屋 大和島にある。

 

●歌をみていこう。

 

◆天離 夷之長道従 戀来者 自明門 倭嶋所見  一本云家門當見由

       (柿本人麻呂 巻三 二五五)

 

≪書き下し≫天離(あまざか)る鄙(ひな)の長道(ながち)ゆ恋ひ来れば明石(あかし)の門(と)より大和島(やまとしま)見ゆ  一本には「家のあたり見ゆ」といふ。

 

(訳)天離る鄙の長い道のりを、ひたすら都恋しさに上って来ると、明石の海峡から大和の山々が見える。(伊藤 博 著 「万葉集 一」 角川ソフィア文庫より)

(注)あまざかる【天離る】分類枕詞:天遠く離れている地の意から、「鄙(ひな)」にかかる。「あまさかる」とも。(weblio古語辞典 学研全訳古語辞典)

(注)明石の門(読み)あかしのと:明石海峡のこと。(コトバンク 精選版 日本国語大辞典

(注)大和島:大和島は、淡路島の北東、絵島の南に位置する陸続きの小島である。砂岩、礫(れき)岩から成る。各所に小型の海食風景が見られ、山上には風圧の影響で特異な風衝形をつくるイブキ群落(県指定文化財)がある。

 昔は、大和島とのわずかな間に岩屋街道が通っていたが、現在の国道は島の西側を大きく開削して造られている。また、大和島と道路の間には宿泊施設が挟まれるように建っている。(ひょうご歴史ステーションHP「ひょうご歴史の道」)

歌の解説碑

 二四九から二五六歌の題詞は、「柿本朝臣人麿羈旅歌八首」<柿本朝臣人麻呂が羈旅(きりょ)の歌八首>である。

 六首については、ブログ拙稿「万葉歌碑を訪ねて(その560,561)」で紹介している。

 ➡ 

tom101010.hatenablog.com

 

 犬養孝氏は、その著「万葉の人びと」(新潮文庫)の中で、この歌ならびに大和島について「・・・ひと月もかかる瀬戸内海の長い道中を経て、大和恋しい、恋しいと思ってやって来ると、明石海峡から『大和島見ゆ』。別に大和島という島があるわけではありませんよ。大和の方が見えるということです。・・・今、ここで大和島というのは、生駒山とか、葛城山だの、ああいう所を眺めて大和島と言ったのですね。そうしますと、今日、淡路島の岩屋というところに、大和島という島があるんです。それは、この歌から、後世につけたものなんです。・・・さてこの歌『天離る鄙の長道ゆ恋ひ来れば』ここに軽い休止があります。そして『明石の門より大和島見ゆ』とつながるわけですが、『天離る鄙の長道ゆ恋ひ来れば』というのは、なんと倦怠感と焦燥感に満ち満ちているでしょう。長い船旅、もう疲れ切ったような感じがあるでしょう。・・・明石海峡の所へ来たら、『明石の門(と)』『大和島』という二つの地名を移動風景的にいうことによって、自分の感動を表わすんですね。これもまた、なんと激しい、動的な、ダイナミックな、心情の打ち出し方でしょう。」と書いておられる。

 

 

 

■■■淡路島・徳島万葉歌碑巡り(8月18日)■■■

 8月18日に日帰りで、淡路島と徳島の万葉歌碑巡りに行って来た。

夏休みであることを考え、地道による淡路島の歌碑巡りは午前中に終えてから、徳島に渡り3箇所巡ってから自動車道を使って帰る計画にしたのである。

 前回の香川県の歌碑巡りからの帰り道、休憩のために立ち寄った神戸淡路鳴門自動車道の緑PAの近くで玉ねぎを購入したのである。さすが淡路島産の玉ねぎである。使い勝手がよくまた美味であったので今回もこれは外さないことにした。

 

4時出発予定である。前日の19時に寝床にもぐり込んだが、23時過ぎに目が覚め、そこからは寝付けない。仕方がないので、先達のブログなど読み返したりしているとだんだんと目がさえてくる。

携帯をいじくりいろいろと検索してみると計画に入っていない新しい歌碑の情報が目に飛び込んできた。「海若(わたつみ)の宿」と「兵庫県立淡路高校前」2カ所である。もう寝ている場合じゃない。

しかし残念なことに、「兵庫県立淡路高校前」とあったのは、「JA淡路日の出北淡支店隣」の歌碑と同じであった。「海若(わたつみ)の宿」の方は、次の通り計画に組み込む。

 

■■行程■■

自宅→岩屋漁港近くの「大和島」→淡路市野島「大川公園」→淡路市野島「海若(わたつみ)の宿」→淡路市富島「JA淡路日の出北淡支店隣」→淡路市浅野南「浅野公園」→「国民宿舎慶野松原荘」→徳島県阿南市那賀川社会福祉会館」→眉山ロープウェイ山頂駅近く→徳島県鳴門市「人丸神社」→<緑PA「玉ねぎ購入>→自宅

 

■自宅→岩屋漁港近くの「大和島」■ 

予定通り4時に出発。第二阪奈あたりでは西の方に稲光が!大阪市内に入ると、ワイパーが効かないほどの土砂降りの雨である。阪神高速京橋PAで休憩を取る。流石に眠い。目覚ましをセットし15分ほど仮眠をとる。たいがい往復で2回ほど仮眠はとるのであるが、今回は、この1回だけであった。よく頑張れたものである。

淡路島SAで朝食をとる。ますます風と雨がきつくなる。

よろこばしいことに「大和島」近辺に近づく頃には小振りに。

駐車場に車を停め、傘をさしての撮影である。「大和島の歌碑」を写真に収める。

雨に煙る明石海峡大橋

 

 

 

(参考文献)

★「萬葉集」 鶴 久・森山 隆 編 (桜楓社)

★「万葉集 一」 伊藤 博 著 (角川ソフィア文庫

★「万葉の人びと」 犬養 孝 著 (新潮文庫

★「weblio古語辞典 学研全訳古語辞典」

★「コトバンク 精選版 日本国語大辞典

★「ひょうご歴史の道」 (ひょうご歴史ステーションHP)